お客様を呼び出せる立場になったので妖怪のお客様を呼び出して無双します
女神なウサギ
第1話 ろくろ首のお客様
「美穂先輩、交代の時間です」
「あら、もうそんな時間?」
ここは異世界ダンジョンの中にあるデパート。品揃えが豊富で様々な種族がやってくる。
私はこのデパートのお客様呼び出し係の1人。
有事の際のお客様の呼び出しと接客が私の仕事だ。
「それじゃあ、よろしくね」
「はい!」
まあ、逆に有事の際しか呼び出しの仕事はないので後は困っているお客様がいないかをモニターで見守っていれば良い。必然的に雑談が増える
「ねえねえ、カレンちゃん。はらぺこ屋の最新スイーツ食べに言った?」
私と同じエルフである同僚かつ親友のカレンちゃんは、困ったような呆れた様な顔をした。
「もう、カナったら、また仕事サボる気?」
カレンちゃんは真面目な子でモニターの監視業務も手を抜かない。
「いいじゃん、ちょっとくらい!」
「また怒られるよ?」
「平気平気。それで、もう食べた?」
「食べたよ〜プリンパフェ美味しかった」
「プリンパフェ!?大人気なやつだよね?私まだ食べていないんだ〜」
「今度、食べに行く?」
「行こう行こう!」
その時、カレンがモニターを指さした
「あっ、このろくろ首の女の子、悩んでいるっぽいよ」
「本当だ!店の店員は・・他の人を接客中か!
行かないと上司に怒られちゃう!」
私は慌てて売り場に向かった
「頑張ってね〜」
程なくして洋服売り場に到着した。
「すみません、お客様。お困りですか?」
「そうなのよ、首が長いから良いマフラーが無くて・・」
確かにそれは死活問題だろう。
「それは大変ですね、それではこちらのマフラーはいかがでしょう!」
選んだのは薄手のとても長いマフラー
「薄手なので夏は日よけになりますよ」
「あら、いいわね。それをもらおうかしら」
「ありがとうございます!」
こんな感じで訪れる様々な種族のお客様の対応をしている。
今日もお客様の対応がスムーズに行われ平和に終わると思っていた。だが、突然鳴り響いた警報によりそんな幻想は打ち砕かれた。
「なに、この警報!?」
パニックになるお客様と店員たち。だが、私はこの警報の意味を知っていた。モニタールームにダッシュで向かう
「カレン、来たの!?」
カレンは神妙な面持ちで頷いた。
「うん、ついにやつが来た」
モニタールームの先輩が声を張り上げる
「第一級警戒態勢!!皆、迎撃の準備を!!」
お客様を避難させるためにアナウンスを入れる
「ただいま刃物を持った不審者を確認。お客様は慌てずに建物の外に避難してください」
「カナ、緊張してる?」
「少し。本番は初めてだからね」
程なくしてお客様の避難が完了し、それは現れた
「来た!!」
天井を突き破り現れたそれは地球上の生物にはない異形の姿をしていた。人型で、天井に届くほどの白い巨体に人間の苦しみの顔がコブとして複数浮かんでいる。目は顔には無く、口の中に鋭い牙と一つ目がある。垂れ流されるよだれが凶暴さを表している。
「怪物・・」
"怪物"と呼ばれるそれは数年前に地球上に一匹の死体が降ってきた。それだけでも驚きだが、死体と共に降ってきた黒い球体の記録媒体には怪物が街を破壊する映像とこれから地球にも怪物が現れるという警告のメッセージが記録されていた。それらは全て政府により一部の人間以外には秘匿された。
そう。その一部の人間とはデパートの呼び出し係り。我々、デパートの呼び出し係りは呼び出しから派生した召喚術を使い、有事の際は怪物を撃破する使命を帯びている。
「防衛ラインレベル1、対怪物用ガス噴射!!」
スプリンクラーから煙が放出され怪物を包む。
効いてはいるが、怪物はすぐにスプリンクラーを破壊した。
「止まりません!」
「防衛ラインレベル2、対怪物用撃滅弾、発射!」
怪物用に作られた弾丸が撃ち込まれるが怪物は倒れず雄叫びをあげた
「倒れないか・・」
「カナちゃん、防衛ラインレベル3!」
「ーー分かりました」
私は召喚術を使い"お客様"を呼び出す
「今日は誰?」
「戦闘力があるので、先程のろくろ首のお客様で」
「分かったわ」
「お客様のお呼び出しを申し上げます。ろくろ首のお客様、おいでくださいませ」
先程のろくろ首の女の子が召喚された。
「あれ?私、なんで?」
「レッツ催眠タイム!!」
振り子を使ってろくろ首の女の子に催眠をかける
「さあ、でっかくなって怪物を倒してください!!」
送り込まれたろくろ首の女の子は巨大化して怪物と対峙する。
怪物が鋭い爪でろくろ首の女の子に襲いかかり、取っ組み合いになる。
ろくろ首の女の子も負けじと反撃する。怪物がろくろ首の女の子に噛みつき、ろくろ首の女の子が長い首で怪物の首を絞め上げる。やがて怪物は死亡し後ろに倒れ込んだ
「やったー!!」
「処理班、出動」
処理班により怪物の死骸は回収され、ろくろ首の女の子は記憶が消されると同時に傷の治療が行われる。ダンジョンの秘薬を使えば完治できるのだ。
「カレンちゃん、お疲れ様」
「緊張したけど上手くできて良かったです」
「ろくろ首の女の子にも感謝だね」
「そうですね」
「また、よろしくね」
「はい!」
こうして私は怪物との戦いの日々を決意した
お客様を呼び出せる立場になったので妖怪のお客様を呼び出して無双します 女神なウサギ @Fuwakuma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お客様を呼び出せる立場になったので妖怪のお客様を呼び出して無双しますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます