カクヨム短歌賞1首部門 応募作品その2

鵺野かげり

カクヨム短歌賞1首部門 応募作品その2




・遡る タイムラインの 思い出に もう戻れない ブラウザ閉じる

・友の投稿に 探してしまう 君の影 未練がましい 悪い癖だよ


・カート押す 君の隣を 歩きつつ カレーの前に 噛み締める幸

・特売を 詰め込む日々の レジ袋 破れ零れて 溜め息も出ず


・時刻表 消えた駅舎の ベンチには いつかの二人 影がゆらめく

・ベンチには 落ち葉の山が 腰をかけ 風だけ通う 朝の静けさ


・爪とぎの 傷跡残る 隅柱 君は窓辺で 丸まり眠る

・交差点 渡る者無き 信号機 野良犬独り 行きつ戻りつ


・天窓を 破りて芽吹く 新緑の 拍手響かせ コンサートホール

・花瓶ごと 眠りについて 向日葵は 明日も陽射しを 探すつもりで

・束ねられ 売れ残りたる 赤い薔薇 バケツの中で 溺れ目を閉じ


・口紅を 引くたび少し 曲がる口 誰の癖だと 問えば黙りぬ

・鏡見て 大丈夫だと 言い聞かせ 見返してくる 君の泣き顔

・大掃除 昔の服を 着てみれば 増えた皺数 過ぎた年月


・残業後 「チンして食べて」 晩ご飯 いつもお疲れ おやすみなさい

・祖母の部屋 編みかけセーター 埃舞う 使い込まれた道具には錆


・財宝と引き換えに失いし友の墓標に誓う永遠の航海


・溶けてゆく氷河のニュース眺めては アイス咥えてクーラーを付ける

・紺碧の 海に溶け込む 白い壁 窓辺に揺れる ゼラニウム紅

・オリーブの 実を摘む指に 潮風と 陽の香りに土の匂い


・入国のスタンプ押されサムズアップ 明日は知らない街を歩こう

・街角で君を見かけた気がしたよ風の向こうに消えていったね

・地図を広げなくても行ける場所がある 君が隣で笑っているなら


・投稿消しても 過去の自分は消せずに ゴミ箱溢れる 恥ばかり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カクヨム短歌賞1首部門 応募作品その2 鵺野かげり @kageri_nueno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画