母の目

 今日も素敵な出会いがあった。秋の七草のひとつ、薄紫色の美しい花を咲かせ始めたくず。その葉の上に、茶色と黒のまだら模様の1匹の小さなクモがいた。大きさは約1cm。

とても小さいのに、歩いている途中でふと目に入った理由は

薄い黄色の丸いボールのようなものが見えたからだ。近づいてよく見ると、クモのお尻にくっついている。


 ボールの正体は卵だった。ふわふわなマシュマロのような卵。素材は、山繭蛾やままゆがの繭(シルク)に似ている。クモの巣を作る時の糸とは違って、とても柔らかそう。この中に沢山のクモの子供たちがいるのかな?ふわふわに包まれて敵から守られているんだね。ということは、このクモはお母さん(雌)?


 私が近づいて凝視している間、警戒してピクリとも動かないクモ。名前を調べるために、カメラのレンズを向けると、少し手足を動かした。この場から逃げようと態勢を整えたのかな?

怖い思いさせてしまうが、撮影をさせてもらった。私のカメラの腕前では、1枚だと不安なので2枚(汗)


 家に帰って写真を見てみると、撮影時には気づかなかった

クモの黒いつぶらな瞳が写っていた。

しっかりとまっすぐにこちらを見つめていたその目は

まさに子供を守る母の目に見えた。

虫の事をまったく知らない私でも、何とも言えぬ

クモの愛情のようなものが伝わってきて、胸を打たれた。



 調べてみると、名前はウヅキコモリグモ。

徘徊性のクモで、コモリグモの仲間の雌は卵のうを

お尻に付けて歩きまわる。やはりお母さんクモだったんだなと納得。さらに名前の由来には、ふ化した子グモたちを背中にのせて子育てをする姿から”コモリ”の名がついたと。

子守りをするなんて、なんて優しい習性なのでしょう。


 どれくらいの日数でう化するのかわからないけど

無事に生まれて育ってほしいと心から思った。



 





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虫の知らせ 星空 花菜女 @20250317

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