神様、進歩いかがですか?

月乃 レイ

第1話〜第2話 始まりの始まり


ー第1話ー

「え?まだ世界作れてないの?締切今日までじゃなかったっけ?」


目を丸くして驚く先生。


「うーん、寝てただけだし、一応パニクってるんで落ち着くために一旦寝てきまーす。」


そして急ぐ気もない、生徒。


「もうすでに寝坊してきてるんだから働こうよ」


すでに退学寸前なのである。


寝坊してきたのは、神見習いのナズナ。

通常はやる気0、寝癖はフル装備。

今日のやることは一つ世界を創ること。なのに、起きてきたのは昼過ぎ。良い未来が見えない。


「やる時はやる子なのにね。うっ、お腹痛い…」


胃痛を感じているのは、ナズナの教師の神代。

忙しいのにやる気のないナズナを見ていると、胃が痛くなると言う。


「でもこいつ、俺がいた世界みたいに戦争を起こさない世界は大好きですよ、あと高級干し梅。渋いっすよね」


ふらっと現れたのは、マサノリ。

生物時代にナズナに気に入られ、なぜか生徒になった神見習い。

マサノリだけ生物時代の名前で呼ばれている。

本当に謎人物だ。


この場所は‘天界’と言い、始まりの神が一番最初に作った世界。神しかいない、性別も年齢も、何もかもが無限な世界。そんな世界で、2人しか学校へ行けない、なぜか学問にだけ厳しい世界。


ここでは、時期神としての自覚を持ち、合格するまで世界を作り続けるだけ。簡単そうに聞こえるが、そうでもない。


「ってナズナさん、世界作らないの?このままじゃ単位なしだよ。」


「えまじすか?作ります。」


すぐに寝ていたソファから飛び起き、デスクに座るナズナ。

その後ろで他二人は、


「単位にもがめついっすね」


「困ったものだわ」


っと呆れながらもナズナの左右に座り、動き始める二人。カタカタと部屋の中に音が鳴り、誰一人が喋らない。3人しかいないこの部屋で沈黙状態なのは、ナズナにとってはとても苦痛だった。


そんな中、沈黙を破ったのはマサノリだった。


「ナズナ先輩、世界作りの進歩はどうでしょうか」


「んー?一旦、海つくって陸適当に置いて、山と砂漠適当にちらばめて、ビルとか建物置いといた。」


いつも通り‘適当’で進める世界作り。


「いい感じっすね」

それが当たり前になっているのである。


「あとね、まずは生物帯に空飛ぶうどん足しといたわ」


「バカっすか」


ー第2話ー


「バカじゃないよ?!だって、お腹空いたらその辺に飛んでるうどんパクって食べれるんだよ、夢みたいじゃん!」


「なんすか‘空飛ぶうどん’って。今まで一度もそんなの作らなかったじゃないすか。」


そう、ナズナがふざけて生物帯に意味不明なものを足すのは初めてなのである。


「強いて言えば…真面目すぎる世界に安心感を与えたんだよ。」


「意味わからんっすね」


「ちょっと二人とも、おしゃべりしてないで働いてちょうだい、忙しいのだから。」


言い合う生徒たちに、胃を痛めながらも神代が注意する。


「はーい」と二人は返し、また黙々と作業を始め…たかと思ったらナズナがすぐに立ち上がり、神代へ話しかけた。


「神代先生、この新しく追加された、‘人間’っていう生物帯ってどう使うんすか。」


‘人間’とは、生物帯に設置可能な新しい生物なのである。扱いは難しく、神の世界ではあまり好まれない生物帯だ。


「あ、人間?まずは200人ずつくらい適当に陸の上に散りばめて、年齢って部分は1〜80って設定したらいいわよ。でも、大丈夫?人間はかなりコントロールが難しいらしいわよ?」


「…こうか。ありがとうございます。大丈夫っです。神になるならこのくらいできるようにならないと。」


ナズナは少し満足げに席へ座り、またカタカタと作業を進める。


この謎は自信はどこからかわからない。


ナズナの夢は、戦争もない、喧嘩もない、何もかもが平和な世界を創ること。なのに、その夢はマサノリの世界で終わってしまった。


ーーーー

マサノリ(生物時代):わあ、平和な世界だー

ナズナ:あれ、世界の寿命きちゃった。この子いい子だったし、こっち連れてきちゃおー

ーーーー


というので終わった。


あと少しの努力、少しの努力と寝ずに何度も何度も挑戦しては失敗し、ほぼ挫折寸前だった。

そして、この今作ってる世界は、3467回目の挑戦である。ただもう、ほぼ諦めている。


「あー、なんか人間さんただただ話して歩いてるだけだなー、つまんなーい、なんか文明開発してよー」


「何度も別の世界で話して歩くのなんて見てきてるでしょう?」


「だってあれ猿とかじゃないですか。面白いじゃないですか。」


動物園気分で世界を見守る神様。


「ナズナ先輩、そんな気持ちで僕を見ていたんですね」


そして少し傷つく部下。



本当に神頼みできないような神様たちだ。

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