姉ちゃんという生き物
幸/ゆき さん @WGS所属
姉ちゃんという生き物
僕は姉ちゃんが嫌いだ。
大学生になった今も、僕に対してすぐ怒るところは変わらない。
今日だって、お父さんが
「出張行って来るから、母さんの家事とか手伝ってやるんだぞ」
と言うなり、姉ちゃんは僕だけに振る。
「じゃあよろしく」
ムッとする僕に代わって
「お前もだろう」
とお父さんが咎めるものの、
「私は生理中だし、風邪治ったばっかりなの!」
と突き返す。
(喚く元気はあるくせに)
呆れ果てて、愚痴すらも声にならない。
体調不良は無敵で正当な理由だとでも思っているのだろうか。
僕だって毎日忙しくて疲れてるのに。
そもそも今年は僕が受験なのに。
姉ちゃんが受験のときは色々配慮してあげたのに。
……いつだってこんなのだ。
朝起こしても「しんどいの! 寝させてよ!!!」と怒鳴られ、
食事を用意しても「そのメニュー気分じゃないんだけどなぁ」とぼやかれ、
仕方が無いから次から一緒に作ってみるけど、今度は「手際が悪い」とグチグチ言われる。
食器を洗っていると「もっと静かにできないの!?」
お父さんやお母さんと話しているときでさえ「あんた、それバカじゃないの?」
僕の自由時間にも「もっと勉強したら?」
夜、駅まで迎えに行っても「来るの遅過ぎる」「歩くの速い」「荷物持ちなさいよ」
自分が一番苦労しているかのような、
自分が優しくされるのが当たり前だと思っいるかのような、
自分が常に正しいと思っているかのような物言いが気に障って仕方が無い。
最後に「ありがとう」と言われてから何年経ったろう。
だけど、どうも嫌いになり切れない僕がいる。
僕を邪険にしてまで勉強に励むあの人は、正直憧れだ。
昔から、姉ちゃんの背中は偉大だった。
他にも、たまに趣味の話をしたり、知らなかった事を教えてくれたり、ハグしてくれたり……
その程度の事で、僕はまた姉ちゃんを好きになってしまう。
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