第25話 異星の人達とわたし ⑤
お部屋でのカルチャーショックっぷりを堪能、というか実感したわたし。
改めて科学の便利さというのを知りました。
そして、今度はランドリー。
わたし達からすれば見慣れた風景だけど、異星の方々にとっては未知のシロモノでしかないわね。
「この機械でお洗濯をします」
案の定、三姉妹の特に青のリリリが「何言ってるんだコイツ」みたいな顔してる…
「こうして蓋を開けて洗う衣服を入れて蓋を閉じます。入れ過ぎはダメですよ。そして、このボタンを押せば乾燥まで勝手にやってくれますよ」
。。。
絶句の三姉妹。
頭が追いついていない顔ね。
「こ、この箱が?」
「うん。この箱が」
「ボタンとやらを押せば」
「うん。ボタンを押せば」
「み、水は?何処から汲んでくるのですの?」
「勝手に出てきます」
「ど、どこに汚れた水を?」
「勝手に流れていきます」
「汚れを落とす石鹸は?」
「それも勝手に出てきます。衣服をふんわり仕上げる柔軟剤も一緒です」
「どうやって、ゴシゴシ洗って汚れを?」
「ゴシゴシ洗わなくても落ちる仕組みができています」
「流石に、絞って水を切るまでは…」
「それも勝手にやってくれます」
「オホホ…流石、に天日に干さなくては…」
「干さなくてもふんわり温かく乾燥させます。シワにもなりませんよ?」
あぐ、あぐっと鯉が餌を求めてるように口をパクパクさせる、青の侍女リリリ。
「わ、ワタクシのお役目、が…」
絶望の顔してる…
そうね、文明の利器がないとお洗濯も大変だものね。
「え、エリィシア様!お掃除は!お掃除はどうなっていますの?」
焦ったように赤の侍女ラララが聞いてくる。
「お掃除も基本的には勝手にやってくれます」
赤のラララも、「何をバカな」と言いたそうな顔。
「まず、有機物…えっと食べ物の残りとかですね。これは艦内のナノマシン…視えない妖精さんがキレイにしてくれます」
ラララ…
信じてないわね。
「紙などはお掃除ロボット…ゴーレム?が定期的にお掃除に来るので、その時勝手に片付けてしまいます。大事な物は落とさないようにしてください!」
ラララ…
これも信じてないわね…
「ちなみにお掃除ゴーレムは共用部にしか行かないので、お部屋には入ってきません。視えない妖精さんは部屋の中にもいます」
ラララ…
疑わしい目をしてるわ。
あっ!
「丁度、お掃除ゴーレムが来たわ!見てて」
話をしていたら丁度、直径50cmくらい、高さ80cmくらいの円柱状のお掃除ロボットがやってきた。
わたしは、さっきヒメカに、食べられたパンを包んでいた紙を床に落とす。
すると、お掃除ロボットがやってきて、その紙を吸い込み、ガリガリと音を立てて細かく粉砕する。
「こんな感じよ」
ラララ…
目をこれでもかというくらい見開いて口はあんぐり顎が外れたかというくらい開いてるわね…
「わ、ワタクシのお役目、も…」
卒倒しそうな顔になったわ。
「「お役目が…お役目が…お役目が…」」
ランドリーを後にするわたし達。
侍女の内2人、ラララとリリリは放心状態。
「なんと!面白いのじゃ!わらわもやるのじゃ!」
うん。予想通りの反応のお姫様。
「これ。無闇にゴミを捨ててはなりませんよ」
やんわり注意のミミアさん。
こうして、放心状態の2人を連れて、わたしは第2生活区の食堂にやってくる。
清潔に整えられて空間がそこに広がる。
テーブルに椅子。
フードコートの様な学食の様なそんな雰囲気。
テーブルには注文用の端末。
事前にナギサ先生に案内された人達が食事ている。
みんな一様に驚いた感じ。
「ここが食堂ね。注文はこの端末から行います」
わたしは、当然パン1つなどでは足りなく、空腹
で死にそうなヒメカを椅子に座らせる。
「ほら、ヒメカ!何食べるの?」
わたしはヒメカの口元に耳を近づける。
「か、カロリー…カロリー…三種の神器…アブラマシマシ、野菜マシマシ、麺大盛り、ニンニクマシマシ…マシマシ…マシマシ…」
いけない!
涅槃に行きかけているわっ!
「こんな感じで写真をタップします」
わたしは三種の神器…
即ち。
ラーメン!
チャーハン!!
餃子!!!
をチョイス。
ヒメカのリクエスト通り、オールマシマシ。
というか、なんでマシマシとか出来るのよ。
これ作ってプログラミングして人はどういう頭していたのかしら?
「しばらく待てば美味しいご飯が運ばれてきます」
わたしはその間、メニューの写真を見せて地球の食べ物を説明する。
どうやら、ミュリッタにも似た様な食べ物もある様で、「ああ、これはアレに似てる」とか「地球にもあるのですね」みたいな会話をしている。
しばらくして…
ガツンと漂う暴力的なニンニクのスメルを漂わせながら、ソレは現れた。
自動配膳ロボットである。
[オマタセシマシタニャー]
配膳ロボットはアームを伸ばしヒメカの前に食べ物を置く。
うず高く積もれた野菜。その野菜を覆うように叉焼がこれでもかと…
隣の、チャーハンもやはり、こんもりと綺麗なドーム型。
餃子は…どっさり…
うん。
女子高生が食べる量でもないし、食べるべき匂いでもないわね。
「んまっ!こ、これは…いけません!きっと毒ですわ!ワタクシがお毒見をっ!」
緑のルルルが待ってましたと言わんばかりに食べ物に手を伸ばそうとする。
シャァァァァァァァァァッッッ!!!
お箸とレンゲを構えたヒメカが激しくルルルを威嚇。
回り込もうなら、先回りして威嚇…
こ、こんな事もできるのね。
「ルルル。貴女は先程ヒメカ殿の食べ物を奪って食べましたね?ここは控えなさい」
ミミアさん。御尤も。
「そ、そんな…ワタクシの…お役目が…」
今日一番のショックをみせるルルル。
食べ物が奪われない事を認識したヒメカは、物凄い勢いで食べ始める。
それは普段、ペースを崩さず延々と食べ続ける彼女の姿ではなく、命の危機に瀕した獣の如くの食べっぷり…
みるみる、デカ盛りメニューが消滅していく。
見てるだけで胸焼けがしそうだわ…
そして…
ゴキュッ!
ゴキュッ!!
ゴキュッ!!!
どんぶりに残った汁すらも一滴も残さない勢いで完食。
「ぷは~。あれ?エリィちゃん?私、いつの間に食堂に?あれ?三姉妹の皆さん、何か解脱してない?」
。。。
マジで意識なかったのね…
そ、そうよね…
空腹で死にそうだったんだものね。
というか…
ニンニクのスメルプンプンさせながら意気揚々と言わないで…
それにしても、三姉妹が解脱って…
確かに、全員口開けたまま呆けて、真っ白になって、口からエクトプラズマが出てるけど…
兎も角…
「こんな風に食堂は使います。ま、まぁ三姉妹の皆さんも気を落とさずに、後で食べに来てみてくださいね?」
そう言うと、緑のルルルがハッとなり。
「そ、そうですわ!ここのメニューとやらが安全かお毒見しなければっ!ラララ、リリリ!手伝ってくださいまし!」
途端に、色を取り戻して元気になっていく。
わたしの危惧が本当になりそう。
絶対、食堂に入り浸るわよ、コイツら…
やれやれ…
結構、単純なのね。
「エリィシア殿」
ミミアさんが声をかけてくる。
「ママヤの様子を見に行きたいのですが、案内を頼めますか?」
ミミアさん…
三姉妹とは違い、ちゃんと怪我をしたママヤという娘の心配をしているのね。
さすがです…
「勿論です。こちらへ!」
わたしは、皆さんを医務室へ案内する事になる。
ちなみに、こっそりとヒメカにお口の匂いを消すタブレットをゴッソリ食べさせ、何とか強烈なニンニク臭を消させてから医務室へ…
わたしは医務室までの道中でミミアさんに体調不良などが起こった場合は医務室、医者に行くことが地球では普通である事を説明した。
その点については理解、納得をしてもらえているみたい。
それにしても…
さっきまではわたしが皆さんに色々説明するの補足しながら温かく見守ってくれていたけど…
医務室に行くとなった途端、ウキウキになり、わたしより先にスキップして先行してる、ナギサ先生。
なお、ヒメカはおやつを補充して抱えながら歩いている。的折、三姉妹が手を伸ばそうとすると「シャァァァァァァァァァ」と威嚇。
「さぁ!ここが医務室でぇ〜っす♪」
物凄く嬉しそうにナギサ先生が医務室に入って行く。
「ああ、これは。汐見先生にエリィシア艦長。それに、ミュリッタの皆さん」
エド先生だ。
ナギサ先生はエド先生に近づき両手を握って…
「んもうっ!ナギサで構いませんよ?エド先生♪」
あざとい、を通り越して露骨!実に露骨ッ!
「「「んまっ!」」」
ん?
後ろから素っ頓狂な声がハモってる…
後ろを見ると…
ナギサちゃん同様に目をハートにさせた三姉妹が…
ナニコレ…男は下賤じゃなかったの…?
「貴方…素晴らしく見目麗しい殿方ですこと…」
「これほど美しいお方はミュリッタでも1000年に1人現れるか…」
「確か、オイシャサマと呼ばれる、高い身分の方だとか…」
グイグイ、近寄っていく三姉妹…
それを通せんぼするかの如く立ち塞がるナギサ先生。
「なですか!貴女達は!?私とエド先生の間を邪魔しないでくださいい〜!」
。。。
なんか、予想していない面白すぎるバトルが…
「皆さん、医務室で騒ぐのはおやめくださいね?」
歯が光る。
イケメンスマイル&フラッシュ…
さては、エド先生。自分がパーフェクトイケメンである事を理解しているタイプね。
「「「「はぁ~い♡」」」」
あっさり引き下がる、4人。
駄目だこりゃ…
「確か、エドワード殿でしたか?ママヤの様子は?」
冷静にミミアさん。
「はい。処置が終わって、今は眠っています。お話に聞く治癒魔術の賜物なのか、処置の見た目よりも症状は重くありませんでした。先程は失礼を」
ママヤさんの事で頭を下げるエド先生。
さすが、Dr.ハーバードの弟子?人格が素晴らしいわ。
「一部、深い傷がありました。金属が突き刺さっており、骨まで達していましたから。これは除去しておきました。また、顔や腕など上半身に熱傷…火傷ですね。これは、治りますが後が残る可能性が高いでしょう…」
などと説明を。
聞くだけで、かなりの重傷だったのが分かるわね。
「幸い、我々が使うのと同じ鎮痛剤をはじめとする薬が有効な様です。ママヤさんは数日こちらで安静にしていただきます」
「分かりました。迅速な処置に感謝を。イリョウというのは、素晴らしい物ですね。治癒魔術では処置が追いつかず最悪、死なせてしまったかも知れません」
ミミアさんは深い感謝の意を伝え。
「これ、ナナナ。貴女も臣下の者を助けていただいたのです。謝辞を伝えなさい」
医務室に興味津々なナナナ姫様にマナーを…
「うむ!ママヤの事ありがとうなのじゃ!」
ペコリと頭を下げる。
こういう事素直に出来るお姫様なのね。
わたしが感心し、ほっこりしていると…
「マスター!マスター!」
耳元でチビアリスが
「ミュリッタの方々の船付近で、不審な反応が…」
あっ…
忘れてたぁぁぁっっっっ!!!
すっかり、あの人の存在を忘れていた、わたし。
格納庫にもどらなくちゃっ!
ミュリッタの人達の船が危ないっっっっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます