第21話  異星の人達とわたし ①

わたしは今、ドキドキしてる!


難波していて、蟲達に襲われていた船舶を助けられた事に興奮しているから!


そして、ヒメカの予知だと、その船舶には生命体がているらしい。


これって…


未知との遭遇!!


人類なら良いな!


こんなシチュエーションにドキドキしない人間はいないわよ。



格納庫には、ドクターやリッカさんも呼んだ。

ドクターからは傷病者のいる可能性があるから有志を募って連れて行く、と連絡があった。

確かに、怪我人とかいたら大変!


リッカさんは…

うん。

一応、船舶の様子を見てもらおうと思ってるけど、多分、みんなの予想に近い行動を取りそう…


麗玲さんとナギサ先生とヒメカはわたしと一緒にブリッジから移動中。

ナギサ先生は少し楽しそう。

ヒメカは、食べ物たくさん持って、相変わらず。

麗玲さんは、少し面倒くさそうに。


エレベーターを降り、格納庫へ。


既に、ドクターが人を引き連れて待っていた。

ドクターは隣の、誰がどう見ても、どの世代のどの性別の人が見ても分かる、若い、とは言ってもわたしより年上の金髪のイケメンが。


「おや?来たかね?紹介しよう。私と同じ医師のエドワード・オックスフォード君だ。色々と私の仕事を手伝ってもらうことになった」


へぇ~、そうなんだ。

確かに、100人いればお医者様もいるわよね。


「君が艦長のエリィシアさんだね?Dr.ハーバードから話は聞いています。僕はエドワード。エドと呼んでください。よろしく」


爽やかに自己紹介され、握手を求められたので、Dr.エドに「どうも」とだけ挨拶。


これでもかというくらいのイケメン。

歯がキラリと光りそうな、まさしくイケメンフラッシュ。


でも、わたしはどちらかと言えば、年上のダンディが好き♡


一緒に来た女性陣。

ヒメカ、色気より食い気。全く意に関してない。

麗玲さん、興味なしって感じ。

ナギサ先生…

あの〜…ナギサちゃん?

目をハートにさせながらぶりっこポーズ。


な、なんなのこの。分かり易すぎる人…

ナギサ先生は超単純にイケメンが好きなのね。


「おや?」


Dr.エドがナギサ先生に近づくわ。


「あ、あなたは!も、もしや…いや、人違いなら申し訳ありません!あなたは…爆速女帝デンジャラス・エンプレスセイレーン・ナギサでは!?」


はっ?


凍結する時間。


ヒメカの食べる手が止まったわ。

麗玲さんの視線が変な方向に向いてるわ。

ハーバード先生が白衣を直してるわ。


2秒の思考停止…


ここで、聞くとは思わなかった単語に思考が止まる。


な、何でDr.エドがを知ってるの?


「え?いや?あの…ちょっと分かりませんけど、汐見ナギサです。たまたま同じ名前なんですよ。きっとその方とは。エド先生、よろしくお願いしますね」



。。。



ナギサちゃんはDr.エドの両手をがっちり自分の手で包み込み、上目遣いでアピール。


それにしても…

シラを切ったわね、ナギサちゃん。


「よろしくお願いします」


「で、でもぉ、なんで私をそのセイレーン…何某と、間違われたのですか?」


いや、だから、ね。間違ってないのよ?ナギサちゃん?



「いや~、勉強ばかりの学生時代に、彼女のエクストリームレースをたまたま見ましてね。何と言いますか、色々な意味でスカッとさせられましてね。以降、ファンなんです。最近姿を現さないのが残念です。めっきりエクストリームレースの中継がつまらなくなってしまって…っと、つい熱く語ってしまいましたね」



な、なんだろうこの…

少しズレた面白さ…


一応、応援しますね、ナギサ先生。


これ…

ナギサ先生が真実を打ち明けられる日はくるのかしら?


マスター…

マスター!


あれ?アリスの声がする。

でも、姿が見えないわ。

何処かしら?


「ここです」


わたしの耳元に超小型かつ半透明のアリスがいた。


どどど、どーゆーこと?


「まだ、ワタシの存在を一般乗員の方々にさらすのは良くないだろうと、Dr.ハーバードから意見いただきましたので。ワタシ自身はナノマシンで構成されたアバターなのでサイズ等は如何様にもできます」


な、成る程。

さすが、スーパーAI。

そして、ドクターの根回し。


「この船舶をスキャンしました。予測通り、航行不能なダメージを負っていますが、外壁等は無事の様で、中の空気が漏れているということはなさそうです。損傷状態から見て、その殆どは蟲に襲撃される以前のものの様です」


成る程。

損傷具合からそんな事も予測できるんだ。


「それから中に生命体の反応が確認できます。27名殆どの生体反応が確認できています。おそらく人類です」


そ、そんな事も、わかっちゃうんだ…

凄いな、アリス。

それにしても…

人類!

人類ですよ!


一層ドキドキするわたし!



プシュー!



その場の全員の視線が音の先に注がれる。


目の前の船舶の外壁が開き、そのまま床面まで降ろされる。内側は階段になっているのね。


そこに現れたのは、凄く背の高い優美な雰囲気の大人の女の人。

背は…180cm以上だと思う。

年の頃は30歳前くらいかな?


それにしても!


人!


人だわっ!


長く、綺麗な金髪にブルーの瞳。

ゆったりとしたローブに、濃いブルーのベルベットのマントを羽織ってるわ。

華美ではないけど非常に質の良い生地だというのはその質感や光沢感で分かる。


「この度は、お助け頂いた様で誠に感謝しております。先ずはミュリッタの民を代表してわたくしが謝辞の挨拶を務めさせていただきました」


!?


言葉、喋った!

しかも、何言ってるか、分かる!


それにしても、男の人の声みたいな声色の人だなぁ…

でも、背が高い人でたまにそういう人いるよね?

ちょっぴり、びっくり。


そして、奥から他の人達も現れる。


最初に現れたのは…


ピンクの髪の女の子。

白を基調とした古代ギリシャの人達の服装に似てる。でも、膝までのスカートや袖や襟元にはふわふわのレースが編まれてる。

わたしのマントと同じくらいの腰くらいまでの長さのマントを着ているわね。マントも真っ白。

頭には、ティアラ。

純白の装いが、何か尊い雰囲気ね。

所々を金や銀の糸で細かい刺繍がされている。

足元は、編み上げのサンダル。俗に言う、グラディエーターサンダルってやつに似てるわね。


「こちらにおわすのは我らが主、ミュリッタ王家第9王女、ナナナ・レギウス・ノーヌム・ミュリッタ妃殿下にあらせられます」


紹介されたお姫様?は一歩前に歩み出てくる。

にこりと微笑んで…

「わらわがナナナじゃ。其方達、大義であった。お陰で救われたぞ。褒めてつかわす」


ほ、ほえ~…

古風なお姫様言葉で、あらせられますること…


その側には3人の侍女かな?

そっくり。三つ子かな?

同じ様な古代ギリシャ風の服。マントがそれぞれ、赤、青、緑ね。


「んまっ!何と!こんなに男が!」

「ええい!下賤な男ども頭を垂れなさい!」

「穢らわしいその眼差しで、我らがナナナ姫とミミア様を直視する事まかりなりませんわ!」

「そうですわ!万死に値しますわ!」

「直ちに打ち首になりたくなければ頭を垂れるのです!」



。。

。。。


な、なんです、と?

男が下賤?穢らわしい?万死に値する?う、打ち首!?

あまりの過激すぎる発言に、全員絶句…


「これ。我々は助けられた身ですよ。控えなさい」


えーっと、ミミアって呼ばれた人が3人を制するわ。


「とんだご無礼を。この通りでございます」


ペコリと頭を下げるミミアさん。


しかし…


所作の一つ一つが優美…♡

憧れちゃう!


ミュリッタの人々を観察していると、お姫様。えーっと、ナナナ姫の目線がキョロキョロ動いているのに気が付く。


そして、ある1点で視線が止まる。


「お?おおおおおおおおっ?」


へ?


お姫様とは思えない奇声をあげながら


ピョンッ!

ピョンッッ!!

ピョンッッッ!!!


階段を軽快に駆け下りていくナナナ姫様。


わたしの横を颯爽と通り過ぎていく。


ふわりといい匂い。


華やかでいて豊か、それでいて気品を感じる香りね。


そんな姫様は、あろうことか、ヒメカに超接近。


ビタリと0距離でストップ。


「な、な、なんですか?あなたは?」


ヒメカが食べ物…フライドポテトね、あれは…の入った入れ物を高く上げて避けるようなポーズになる。


「お?お?お?おおお?其方!わらわにそっくりじゃな?其方は、わらわか?そっくりじゃ!そっくりじゃ!」


とんでもない、テンションでヒメカの回りを回り頭の先から足の先までをまじまじと観察するお姫様。


た、確かに言われてみればそっくり。

髪の毛の色も、瞳の色も、背格好も、胸の大きさも…

どれもこれも同じくらい。

双子みたい。


「いい匂いじゃな?なんだ、それは?」


フライドポテトに気付くナナナ姫。


「ふ、フライドポテトですよ?知らないんですか?」

「知らぬ」

「た、食べます?」


ヒメカが恐る恐る、フライドポテトを1本取り出す。


「うむ!いただくのじゃ!」


すると…


「いけません!姫様!ここは、わたくしがお毒見を!」


三つ子の…緑の侍女がいつの間にかナナナ姫の隣に。


そして、ヒメカのフライドポテトを取り、食べる。


「!?」


何か目を見開いたわ。


「も、もう一つ…」


緑の侍女は、更にフライドポテトを食べる。

更に、食べる。

次々、食べる。

ヒメカから強奪して物凄い勢いで食べる。


そして…

あの、凄まじい量のフライドポテトをあっという間に食べ尽くす。



「私の、ポテトが…」


絶望の表情のヒメカ。

一方緑の侍女は、うっとりとした表情で…


「ひ、姫様…これは…毒でございます…」


な、何を言ってるんだ?この緑は?

フライドポテトが毒なわけ、あるか〜っ!


その姿は、まるで初めてジャンクフードを口にした子供の様な感じでした…


この異星人の人達との遭遇が、このイルダーナ。

そして、わたしにとっても大きな、大きな経験をもたらしてくれるのだけど…


今は、一抹の不安しか湧いてこないわ…

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