第21話 ハニートラップ2

二〇二四年七月一六日 一六時〇〇分


 指定された新宿のカフェにカナコはいた。金田はスマホに遅れてくるとショートメッセージを送ってきてから連絡が取れなくなったので仕方なく一人でいくことになった。

 約束の時間に一〇分ほど遅れて三〇代後半から四〇代前半のやたら不自然に細くギラギラした服装の男が現れた。

 「カミソリさんですか?」

 カナコはあたりをつけて声をかけた。男は「そうですけど」と答えて困惑していた。それもそうだろう。動画で配信していたYoutuberは小学生から中学生ほどだ。それがビジネススーツをきた。固くて地味な女が現れたら誰でも動揺する。

 カナコは警察手帳をだしカミソリさんに提示した。

 席に着くとカミソリの視線はどこか落ち着きがない。

 「本日は突然のご連絡に驚かれたでしょう。そんな中お時間をいただきありがとうございます。実は今ニュースで騒がれている連続殺人の件でお話を伺わせていただきたいんです。」

 カミソリはそれを聞くと一息つき、どこかほっとした様子だった。何か他に後ろめたいことでもしているのだろうか。

 カナコはアイスコーヒーを注文しカミソリは期間限定のマンゴーを使用したフラペチーノを注文した。「刑事さんこれ経費で落とすんだよね」と図々しい事を言う。今の時代、性差別と言われるかもしれないがカナコは男性が甘いものを食べることにあまり好感が持てないでいた。もちろんそんなことは表情には出さない。

 「大丈夫ですよ。ここは私がお支払いします。」

 「やった、俺甘いものに目がないんだよね。それで事件のことだよね、刑事さん俺の動画見てくれたんだ。あの動画の情報元は話せないんだけど、それ以外のことだったら内容によってはいいよ。」

 本当に鼻に着く男だ。

 「とりあえず、話せる範囲でもちろん構いません。それにしてもあの怪人の情報とても詳しく調べられたんですね、根拠なども説得力がございますし、私なんか見入ってしまいました。」

 心にもないこと言う。まず相手との距離を縮めることからカナコは始めることにした。捜査の進展が見られないことと、金田が何かしら気になる点があるであろう。この配信者との繋がり貴重だ、どんなに胡散臭い人物だとしても。

 スマホからの着信がなった、金田からだった。「俺が話しかけるまで絶対にあの男を席から立たせるな」と表示された。金田はすでにこのカフェに到着しているのだろうか、なぜ合流がない。

 「でしょ。刑事さんもそう思う、こっちもプロだから、情報元が確かなところでないと配信者なんかできないからね。でも刑事さんちょっと地味だけど素材はいいから一回俺とご飯行って仲良くなれたら俺も安心して話しちゃうかもしれないなぁ」

 虫唾が走る。どうして自分の周りはにはこのような男ばかりなのだろうかと呪った。職業柄男社会なのは覚悟していたし、変質者やこのような男と接する機会が多いことも覚悟していたはずなのにいざ直面すると左眉の辺りがかすかに痙攣しているのが自分でもわかった。

 カナコはテーブルの下で握り拳を作る、我慢の限界だった。この男と対面で会話してまだ5分も経っていないと言うのに。

 「よかったじゃねぇか、柊行ってこいデートだぞ。場所はどこがいいかなぁ。ねぇカミソリさん、いや進藤雄一くん、久しぶりにキャンプとかどうだろう。」

 カミソリの座る席のちょうど反対側からアウトドアの洋装に身を包んだ金田が現れた。後半部分はカミソリもとい進藤に向けて話していた。

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