放課後の空

 授業が終わり、放課後。

 美術部での今日の活動は、学校の好きな場所の風景画を描くことだった。


 ルキのおかげで見つけた秘密の庭園を描きたいけれど、ルキは知られたくなさそうだったし、他の人には内緒にしたい。


「シキ君はどこを描くの?」

「まだ決めてないんだ。どこでもいいと言われると悩むよね。歩きながら描きたい風景探そうかな」


 ココナ達女子がそれを聞き、「私達もついて行く」と言い、シキは苦笑しながら部室を出て行った。


「やっぱりシキ君はモテるね」

 とロマはルキに話しかける。

「周りの奴らは外見ばっかり見てる」

「ルキ君はシキ君のことよく知ってるみたいだけど……」

「昔仲が良かったってだけだ」


 とても気になるけど、その先はなんだか聞き辛かった。


 ルキも風景画を描きに部室を出て行く。

「ついてくるなよ……?」

「俺はルキ君の方向に行きたいだけ! ついて行ってないし」

 ロマはにこやかに答えた。


 ロマとルキがやってきたのは、学園三階にある図書室のバルコニーだった。

 町の景色が一望できるが、高い柵が張り巡らされていて、まるで檻の中のようだった。

 遠くには海もうっすらと見える。


 ルキがベンチに座り、絵を描き始める。

「ついてくるなって言ったのに」

「俺もここで描きたいの!」


 ロマも隣に座って描き始めるが、ルキの絵が気になってしまう。

 手の動きが速く、いつまでも見ていたいくらいだ。

 ロマはこの手に見覚えがあった。


「ルキ君……キールの絵の描き方に似てる。それに絵もすごく上手いね。ルキ君、もしかしてキールのファン!?」

「えっ……!? あー……そうそう。ロマがこの前教えてくれたやつを観た」


 ルキが長い前髪をいじりながら言う。


「俺、初期の頃からのファンでさ。キールの絵、凄いよね! 夕焼け空の色のグラデーションの表現がすごく好きなんだ」

 ロマは少し興奮気味になる。


「俺もあの絵は気に入ってる。空ばかり描きたくなる」

 ルキが少し暮れ始めた空を見上げる。

 その時、風が吹き、長い前髪がふわりと浮き、ラベンダー色の瞳が眼鏡の奥から覗いた。

 とても澄んだ綺麗な色だった。


「キールの良さを分かってくれる人が居てめっちゃ嬉しいなー!」

「キールがそんなに好きなのか?」

「うん! 俺にとっては恩人だし! 尊敬してる! 大好き!」


 するとルキが背を向けて顔を隠した。


 ロマは、ルキとの共通点を見つけられて嬉しくなった。

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