第2話 「星の光」を求めて旅に出る!!

アリアは、太陽の光が降り注ぐ、穏やかなサンマルノ王国の騎士団長の娘として生まれた。彼女の家は代々、王家に仕える由緒ある家柄で、幼い頃から騎士としての道を歩むことが定められていた。


アリアの幼少期は、訓練と勉強に明け暮れる日々だった。朝早くから剣の稽古に励み、午後は歴史や兵法、そして騎士道精神についての講義を受ける。他の子供たちが遊びに夢中になっている頃、アリアはただひたすらに、己の使命に向き合っていた。

父である騎士団長は、厳格で口数の少ない人物だった。彼はアリアに、騎士としてあるべき姿を説き、常に完璧を求めた。


「騎士は、弱き者を守り、不正を正す存在だ。そのためには、誰よりも強く、誰よりも清くなくてはならない」


父の言葉は、幼いアリアの心に深く刻み込まれた。

しかし、そんな厳格な父も、アリアが風邪を引いて寝込んだ時には、誰にも気づかれないようにそっと看病してくれた。冷たい水で濡らした手ぬぐいを額に乗せ、静かに見守る父の姿を見て、アリアは、父の不器用な愛情を感じていた。


アリアには、年の離れた妹ビアがいた。彼女は、生まれつき体が弱く、病気がちだった。


アリアは、ビアのことが大好きで、訓練の合間を縫って、ビアのそばに寄り添った。ビアは、アリアが読んでくれる騎士物語を、目を輝かせながら聞いていた。

「お姉ちゃん、大きくなったら、私を守ってくれる?」 


ビアの言葉に、アリアは力強く頷いた。


「もちろんだとも。私は、誰よりも強い騎士になって、お前を、そしてこの国の人々を、必ず守ってみせる」



この時の約束が、アリアの騎士としての道を、より一層強固なものにした。



ある日、アリアは、訓練中に誤って足を捻挫してしまった。激しい痛みに、アリアは顔を歪めた。その時、一人の少年が、アリアの元に駆け寄ってきた。彼は、見習い治癒師の少年で、アリアよりも年下だった。


「大丈夫? 痛そうだね…ヒール!」


少年は、アリアの足に、治癒魔法をかけてくれた。少年の手から伝わる温かい光に、アリアの足の痛みは、徐々に和らいでいった。


「…ありがとう」


アリアは、少年に感謝の言葉を述べた。

少年は、照れくさそうに微笑み、こう言った。



「ううん、僕、いつかアリアさんみたいな立派な騎士になって、みんなを守りたいんだ」



アリアは、少年の言葉に、胸が熱くなった。

自分は、一人ではない。多くの人々が、自分を、そしてこの国を、守りたいと願っている。

アリアは、その日、改めて、騎士としての使命を、心に誓った。



アリアの幼少期は、決して華やかなものではなかった。しかし、厳格な父の愛情、愛しい妹との約束、そして、出会った人々の優しさに触れ、アリアは、騎士として、そして一人の人間として、大きく成長していった。彼女の心には、常に、弱き者を守るという強い信念と、優しさ、そして正義感が宿っていた。それが、後のアリアの旅路を、そして彼女の人生を、形作っていくことになる。



アリアが14歳になった頃、妹ビアの病は、日増しに悪化していった。王国の医者たちは、みな首を横に振るばかりで、治す手立てはないという。アリアは、彼女の病気を治すために、あらゆる方法を探した。



そんな時、父の書庫で見つけた、世界中を旅した騎士の日記に、遥か遠い東の国に伝わる「星の光」という秘宝のことが書かれていた。その秘宝は、どんな病も治すと言われているという。


アリアは、父に旅に出たいと告げた。父は、アリアの決意を汲み取り、何も言わずに頷いた。しかし、母は心配で、アリアの旅に猛反対した。

「アリア、あなたはまだ子供よ! 危険すぎるわ! ビアの病気は、私たちがなんとかするから…」

母の言葉に、アリアは何も言えなかった。しかし、ビアの病状は、日を追うごとに悪化している。もう、待ってはいられない。

アリアは、旅立つ決意を固め、夜中にこっそりと家を抜け出した。しかし、門の前には、見張りの兵士が立っていた。


どうすればいいか悩んでいると、後ろから声をかけられた。


「アリア様、旅に出られるのですか?」


振り返ると、そこには、同い年くらいの少年が立っていた。彼の名は、ニア。アリアとは、幼い頃から顔見知りだった。ニアは、スラム街に住む孤児だが、貴族街にも多くの知り合いを持ち、街の情報をたくさん握っている、賢い少年だった。


「ニア…どうしてここに…?」

「アリア様が旅に出られると聞いて、心配で…」


ニアは、そう言って、アリアの手に、一冊の古びた本を握らせた。それは、街の地図だった。


「この地図には、僕が知っている、街の裏道がすべて書き込んである。これを使えば、誰にも気づかれずに、街の外に出られます」


「…ありがとう、ニア」


アリアは、ニアの優しさに、胸が熱くなった。


ニアは、アリアに、もう一つ、重要な情報を教えてくれた。



「アリア様、東の国に行くなら、気球に乗るのが一番早い。領主である伯爵様が、3日後に気球の実験をやるそうです。実験が終わった後、気球は、伯爵様の屋敷の裏庭に置かれる。その隙に、こっそり乗り込めば…」


アリアは、ニアの言葉に、希望を見出した。


「…ありがとう、ニア。必ず、妹を治して帰ってくるから!」


「はい! 僕も、アリア様の無事を祈っています!」

アリアは、ニアの言葉を胸に、街の裏道を進んだ。

裏道は、迷路のように入り組んでおり、誰にも気づかれることなく、街の外に出ることができた。


アリアは、3日間、森の中に身を潜めた。


その間、アリアは、自分の剣を磨き、旅に必要な知識を身につけた。


そして、3日目の夜、アリアは、伯爵様の屋敷へと向かった。



伯爵様の屋敷は、王都の中でも、一際大きく、豪華な造りをしていた。

屋敷の周りには、見張りの兵士が立っており、簡単には近づけそうもない。

アリアは、屋敷の裏側へと回り込んだ。


そこには、巨大な気球が、地面に固定されていた。

気球の周りには、誰もいない。今がチャンスだ。

アリアは、気球に近づき、こっそりと乗り込んだ。

気球の中は、とても広く、たくさんの荷物が積まれていた。

アリアは、荷物の影に隠れ、息をひそめた。


その時、気球の中に、二人の男が入ってきた。

一人は、伯爵様の執事。もう一人は、気球の操縦士だった。



「…執事様、本当に、こんな古い気球で大丈夫でしょうか?」


「心配ない。伯爵様は、実験の成功を、心から望んでいらっしゃる。さあ、早く、準備を始めなさい」


執事の言葉に、操縦士は、不安そうな顔をしながら、気球の準備を始めた。


アリアは、二人の会話を、息をひそめて聞いていた。

気球は、徐々に浮き上がり、空へと舞い上がった。

アリアは、窓から外の景色を眺めた。


街の明かりが、まるで星のように輝いている。


「…ビア…待っててくれ…」


アリアは、そうつぶやき、夜空を見上げた。

アリアの心には、妹ビアを救うという強い決意と、故郷を離れる寂しさ、そして、初めての旅に対する期待が入り混じっていた。



アリアの旅は、ここから、本当の始まりを迎えるのだ。

彼女の物語は、未来へと語り継がれていくだろう。



アリアは病気の妹ビアを救うため

遥か遠い東の国に伝わる「星の光」を求めて旅に出た!!


妹を救いたいという一途な思いを胸に、アリアは慣れ親しんだ故郷を離れました。


しかし、彼女の旅は決して一人ではありません。厳格な父がくれた愛、妹との約束、そして見習い治癒師の少年や、情報をくれたニアの優しさが、アリアの背中を力強く押しています。これから待ち受けるであろう困難な試練も、彼女の強い意志と心に宿る優しさがあれば、きっと乗り越えられることでしょう。



次回、アリアは海を渡り、新たな出会いと冒険へと足を踏み入れます。彼女の旅路がどのように展開していくのか、どうぞご期待ください。

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