女装もの短編集

夏祭りの夜

夏の夜、町は提灯の灯りで賑やかに彩られていた。

高校生の拓也（たくや）は、友人たちと夏祭りを楽しむために神社の境内へ向かっていた。

友人たちとの会話が盛り上がる中、拓也の目は人混みの中で一人の美しい浴衣姿の少女に留まった。

彼女の姿はまるで幻のように美しく、拓也の心に強く響いた。

拓也は友人たちから少し離れ、その少女に近づいた。

「ねえ、そこの君、一緒にお祭りを回らない？」と、思わず声をかけた。

その少女は驚いたようにこちらを見たが、すぐににっこりと微笑んで答えた。「うん、いいよ。でも、名前は教えてもらえる？」

「俺は拓也。君は？」

「私はリカ。」と、彼女は恥ずかしそうに名乗った。

二人は屋台を巡りながら、金魚すくいや射的を楽しんだ。

リカは何度も笑顔を見せ、その度に拓也の心はときめいた。

金魚すくいの屋台で、リカが「見て、拓也。こんなにたくさん取れたよ！」と嬉しそうに言うと、

拓也も「すごいな、リカは本当に器用だね」と感心した。リカは顔を赤らめて笑った。

次に射的の屋台に立ち寄った。拓也は銃を構え、「見てて、リカ。俺も負けてないから」と言って的を狙った。

一発で狙った景品を落とすと、リカは拍手して喜んだ。「拓也、すごいね！本当にカッコいい！」

その後、二人は綿菓子やたこ焼きを買い、並んで座って食べた。

リカがたこ焼きを頬張りながら、「お祭りのたこ焼きって、なんでこんなに美味しいんだろうね」と言うと、拓也も「ほんとだよな。何でだろう」と笑った。

たこ焼きを食べ終えた後、リカが少し真剣な表情になり、「拓也、ちょっと話があるんだけど」と言った。

拓也は「どうしたの？」と心配そうに聞いた。

リカは一瞬躊躇したが、深呼吸をして話し始めた。「実は、私…男の子なんだ。」

拓也は一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。「そうだったんだ。でも、それがどうしたの？リカはリカだろ？」

リカの表情が柔らかくなり、ほっとしたように微笑んだ。

「ありがとう、拓也。実は、夏祭りの夜にだけこうして女の子の格好をするのが好きなんだ。普段はできないことだから、少しだけ特別な気持ちになれる。」

拓也は優しく頷いた。「それなら、今夜は思いっきり楽しもう。君がどんな姿でも、俺は君と一緒にいられるだけで嬉しいよ。」

その後も、二人は手をつないで祭りを回り、花火を見上げながら夏の夜を満喫した。

リカの笑顔は、一層輝きを増していた。

花火が打ち上がるたびに、リカは「綺麗だね」と感嘆の声を漏らし、拓也も「本当に。君と一緒に見る花火はもっと綺麗だよ」と答えた。

リカは顔を赤らめ、「拓也って、本当に素直だね」と微笑んだ。

祭りが終わりに近づくと、二人は再び境内の神社に戻った。

リカが「今日は本当に楽しかった」と言うと、拓也も「俺もだよ。こんなに楽しい夏祭りは初めてだ」と答えた。

リカは少し寂しそうに、「ありがとう、拓也。あなたのおかげで、特別な一夜を過ごせたわ」と感謝の気持ちを伝えた。

拓也は微笑んで、「こちらこそ、ありがとう。来年もまた、一緒に回ろうね」と約束した。

リカは最後にもう一度微笑んで、「うん、また来年も一緒に」と言い残し、夜の闇に溶け込むように去っていった。

その後も、拓也は毎年の夏祭りでリカとの再会を楽しみにしていた。

彼女との特別な夏の思い出は、いつまでも心の中で輝き続けていた。

翌年の夏祭り、拓也は再び境内に向かった。

リカの姿を探していると、人混みの中で彼女を見つけた。

リカも拓也を見つけ、微笑んで手を振った。

「お久しぶり、拓也。今年も一緒に楽しもうね」とリカが言うと、拓也も「もちろん。今年も最高の夏祭りにしよう」と答えた。

二人は再び手をつないで屋台を巡り、笑顔と共に夏の夜を過ごした。

リカの秘密を知ってからも、拓也の気持ちは変わらず、むしろ一層深まっていた。

それ以来、拓也とリカは毎年の夏祭りで再会し、特別な時間を共有し続けた。

リカは拓也に、「あなたがいてくれるから、私は自分らしくいられるの。ありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。

拓也も「リカと一緒にいると、俺ももっと素直になれるんだ。ありがとう」と答えた。

その後も、拓也とリカは夏祭りの思い出を胸に、毎年の再会を楽しみにしながら、日常の中でそれぞれの人生を歩んでいった。

二人の特別な夏の夜の物語は、終わりのない絆となって、いつまでも続いていった。