女神ガチャに外れて捨てられた俺が、運だけで異世界を成り上がる
エルティ
第1話 女神ガチャに外れて捨てられる異世界転生って何だよ
ーーアンカールド大陸 某所
バン!
俺は勢いよくドアを開ける。
するとそこには、まぶしいほどに光を放ち続けている絶世の美女がいた。
神々しい白いドレスを身にまとい、腰まであるだろう金髪が揺れている。
ああ、夢にまで見た、あの憎っくき女神だ!
「ようやく会えたな、女神エレクトラ。お前は俺のことなんて覚えていないだろうが、俺はお前に捨てられたことを忘れた日はなかったぞ!」
女神エレクトラはくるりとこちらを振り向き、その大きな碧眼で冷たく微笑む。
「ああ、あの時の、最高に雑魚なレアスキルをあげてスタードに捨てた男ね。ごめんなさいね、私、美しい人間以外は雑魚スキルをあげてスタードに捨てることにしてるの。だって、醜いものって二度と見たくないじゃない?」
女神エレクトラの口調には全く悪意がない。神である自分の考えは肯定されて当然だとでも思っているのだろう。
「雑魚スキル? 今となっては感謝してるぜエレクトラ。お前がくれたレアスキルのお陰で、俺はお前に立てるまで強くなれたんだからな。そして、今の俺には最高のパーティーメンバーがついてる」
俺の後ろには、俺が心から信頼するパーティーメンバーが控えている。
俺は女神エレクトラをまっすぐ見た。
「今こそ、お前に復讐する時だ! それに」
一息置いてから宣告する。
「お前の知られたくない秘密を、俺は知ってるんだからな」
その言葉を聞いた瞬間、女神エレクトラの顔から作り笑いが消え、きれいな顔が醜く歪む。
「私の秘密……。ああ、そういうこと。どおりで『あそこら』をうろちょろしてると思ったわ。どうやらここで死にたいみたいね。神の前では下々など無力だということを、思い知らせてやるわ!」
女神エレクトラが本性を現した。きれいな顔が醜く歪む。エレクトラは呪文の詠唱を行いはじめた。
俺たちは身構えながら女神エレクトラに近づく。俺は両脇の短剣を引き抜きながら駆け出した。
ーーしばらく前 地球 東京
初夏の昼下がりに窓から蒸し暑い風が吹き抜ける。東京は5月なのにすでにむし暑い。
はぁー。なんか面白いことでもないかなー。
つまらなく眠い5限目の古典の授業中に、俺は心の中でそうつぶやく。
俺、幸村幸夫(ゆきむら らくお)は、都内3流高校の2年生だ。
昔はラノベのような女子に囲まれた高校生活を夢見ていたけど、当然そんなものがあるはずもなかった。
受験に失敗し、来るしかなかったこの学校。毎日の退屈な高校生活。女と金のことしか考えてない友達。
ま、俺も女と金は好きだけどね。女はまだ付き合ったことがないからわからんけど。
まあ、陰キャオタクの俺と付き合う女なんざいないわな。
推し活しようにも、小遣いはバイト代だけ。母ちゃん小遣いくれないし、推しのあの娘のフィギュアはいつまでたっても手に入らないし、このまま卒業しても大して面白くない人生が続くだけだろうし。
あー俺の人生ハードモードだわー。
これからも同じ毎日を過ごすのか俺? せめて、なんか刺激的なことないのかよ。
そう考えていると、授業をしていたハゲ頭の国語教師田村(通称ハゲ村)がいきなり大声をあげた。
「おい、幸村!ぼーっとしてんじゃねーぞ。ここ答えろ!」
やべっ。えーっとと考えながら立ち上がり、ふと周りを見渡す。
おいおい、みんな寝てんじゃねーか。何で俺だけハゲ村に怒られなきゃならないんだ。
あーなんて日だ。今日だけじゃない。俺の人生も、マジで終わってるわ。
そう、思った瞬間だった。
突然、俺に説教していたハゲ村が動かなくなった。
は?
ハゲ村だけじゃない、周りのクラスメイトも、時計も、すべてが止まったのだ。
まるで俺以外の時が止まったように。
おいおい、なんで止まってんの?まさか、みんなで俺にドッキリでもかけてんのか?
そう思っているうちに俺も動けなくなってきた。何だこれ、うそだろ? あれもしかしてこれ夢だったっけ?
おーい! 誰かー! と言おうとしたが、声が出ない。
その瞬間だった。教室内が、いや教室の外も、世界の、すべてが真っ白な光に包まれて見えなくなってしまたのだ。
ん、うーん。
冷たい床の感触で目を覚ました俺は、起き上がり周りを見回す。
な、なんだこれは、何なんだ。
その空間は、まるでこの世のものではないようだった。すべてが光り輝いている。
その真ん中に、ものすごくきれいな女の人が、神々しく不思議な衣装を着て立っている。
まるでファンタジーRPGで見た、女神のようだ。
そういえば、俺教室にいたんじゃなかったっけ。というかみんなは?
いきなりこんなことが起きたことを、どうやっても説明できない。
じゃあやっぱこれは夢なのか? とりあえず状況を把握するために、俺は恐る恐る目の前の超絶美女に話しかけた。
「あ、あのーすみません。ここって一体どこですか? あなたは?」
超絶美女は静かに答える。
「私は神聖の女神エレクトラ。この世界、アンカールドを守る10人の女神の1人です」
俺は心底驚いた。まさか本当の女神様だって?
「え、え、女神? ってことは、か、神様! マジ? 俺生まれて初めて神様に会ったんだけど。夢かなこれ? いや、夢だとしても最高だわ。てかアンカールドってどこなんですか? まさか、まさか異世界とか?」
女神に会えた興奮と、アンカールドという未知の場所に来てしまったかもしれないことの戸惑いと喜びが隠せない。
いや、まだ夢の中だと思ってるんだけど。授業中の居眠りでこんな夢って最高かよ。
興奮してまくし立てる俺を見ても、女神は眉一つ動かさずこう言った。
「ええ。ここはあなたから見たら異世界と呼ばれるアンカールドという場所です。今回はアンカールド王家からの要請で、魔王を打ち破る勇者パーティーをこちらから見て異世界であるアース トーキョーから召喚することになりました。その候補の一人としてあなたは召喚されたのです」
本当に異世界に来たこと、そして勇者パーティーの候補と聞いて、俺は心底沸き立つ。
「え、俺って異世界に召喚されたんですか? じゃあ、ここってやっぱり異世界ってこと? というか、勇者パーティー? いやいや、そんなの俺には無理ですよ。誰か他の人にやらせてください。俺は異世界でのんびり暮らせればそれでいいですから」
女神は無言で、じっと俺の話を聞いている。俺は気になっていたことを聞いた。
「そういえば、学校にいたら急に時間が止まったんですけど、あれ何だったんですか?」
すると、女神エレクトラはにっこり笑った。
「あれは、あなたたちを安全にこちらの世界に移動させるためです。あなたたちがこの世界、アンカールドにいる間は、あなたたちの世界からしたらほんの一瞬です。任務が終われば元に戻れますよ、きっと」
そう言うと、女神は俺の方をじっと見た。
へえ~そうなんだ。向こうには向こうの俺がいる、ってことなのか。
「それでは、あなたに特別な能力、つまりスキルを与えます。どの能力が与えられるかはランダムで、能力は人によって変わります。中には、低確率ですがレアスキルが与えられる場合もありますよ」
「そうか、ここやっぱ異世界か……女神様がスキルくれるのか……」
おいおい、これって異世界転生恒例の「女神ガチャ」ってやつ?
てことは、うまくいけば、なろう系ライトノベルみたいに超レアスキルもらって、異世界で無双できるんじゃね?
そして、もしかしたらこっちでかわいい女の子たちと出会ってハーレム作って、ウハウハな生活が送れるとか?
いやー現実つまらなかったからマジで最高だわー。
なんてこと考えていると、光に包まれた気がした。
来い来い最強スキルとハーレム! 俺まじで情けない顔してるだろうな、グフフ。
さあ女神、早く、と思って女神を見てみると、あれ? やけに女神の目線が冷たい。どうしてだ?
「はぁ。時間とらせますねぇ。あなたに能力を与えましたが、なんとレアスキル二個も与えられました。とても珍しいことです」
女神が全く抑揚のない静かな口調で話す。
そんなことに気づいていない俺は、レアスキル二個、と聞いて思い切り舞い上がった。
「え、レアスキル二個! レアスキルって滅多に出ないやつですよね? それも二個。じゃあ俺最強じゃん! てことは、俺やっぱり勇者パーティーですか? 面倒くさそうだけど、それはそれでちやほやされて楽しそうだし、女にもてそうだし。よーし、勇者パーティーに入ってサクッと魔王倒して、異世界ハーレムへ一直線だ!!」
そんな俺の脳天気で大きな独り言を、女神は氷のようなさげすむ目つきで見ていた。俺はやっと異変に気がついてはっと女神のほうを見る。
女神は冷徹な目線であざ笑うように俺に残酷な現実を告げた。
「残念ですが、あなたのレアスキルはどれも魔王軍との戦闘に全く役に立ちません。ですから、あなたは当然勇者パーティには入れません。まあ、美しくない者には雑魚スキルがお似合いですからね。先ほど来られて勇者候補になられた方は、とても美形で、最強スキルの『聖剣』をあげたというのに」
は、なに言ってんだ? この女神様。美しいとか関係ないだろ。てか俺のレアスキルが役に立たないだって? 一体どういうことだよ。
「あなたなんて二度と見たくないし、この世界に必要ないから、最果ての町、スタードにでも行ってのたれ死になさい!」
女神エレクトラが一気にまくし立てると、その場から俺の姿が一瞬で消えさった。
「え? は? なんで?」
と言う間もなく、周りが真っ暗になる。
「おい! ちょっと、まってく…」
そう言い終わらないうちに、俺の意識は朦朧となった。
なんか、ものすごく落ちてるの感じる。
そして、俺の意識はすべて失われてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます