<第1話「入学試験1」を読んでのレビューです>
淡々とした状況説明の後に、登場人物たちの会話が積み重なっていきます。舞台の氷河期とダンジョンという設定はシリアスでありながら、描写はむしろ軽妙で、読み進めるほどにテンポが心地よい。戦闘シーンも同様で、深刻さよりも「ゲーム的な面白さ」が前面に出ている印象です。
個人的に印象的だったのは、
「────マジ…誰だ、お前?」
という一文。場面は突然の豹変を描いているのですが、語り手が冷静に突き放すような一言で切り捨てることで、緊張感よりも不意のユーモアが際立ち、読者の側も肩の力が抜ける。戦闘と会話が同じ地平で扱われている、その感覚が魅力的。
設定の重さに比して登場人物のやり取りが軽快で、全体が過剰に深刻化していません。氷河期やダンジョンという題材はどうしても「暗い」方向に寄りがちですが、この物語はむしろ会話やツッコミのリズムを楽しませてくれる。そうしたバランスの取り方に惹かれました。