第4話
あれから3年が経った。
クーラーの利いた部屋で分厚い参考書を開いた私は、イヤホンをつけながら黙々とシャーペンを動かしていた。
『さあ決勝も9回裏2アウト、ランナーは2塁。ここを抑えればT商の優勝が決まりますが、ここで打席に立つは北陸の産んだ怪物・
イヤホンから流れてくる実況音声に、聞き覚えのある名前が混じる。
スマートフォンに映ったライブ配信画面に目を移すと、よく見知った顔がアップで切り抜かれていた。
点数は3対4のビハインド。1点返せば延長、ホームランが出ればそのまま逆転という状況だ。
気付けばシャーペンを持つ手に力が入っていた。
硬く握った拳に祈りを込めて、食い入るように小さな画面をじっと見つめる。
タケルはいつになく鋭く英気に満ちた目で、相手投手を射すくめている。
その気迫を振り払うように投手は小さく首を振り、長い腕をしならせてボールを送り出す。
金属バットの快音が響き、白球が青空に高く舞い上がった。
夏空にこいねがう 水底まどろみ @minasoko_madoromi
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