記憶の綿菓子

魔不可

記憶の綿菓子



わたくしは、ニンゲンの思い出や記憶を食べる生き物であります!


思い出や記憶は、わたくしにだけ見える綿菓子のような形をしていて、それを食べないとわたくしは餓死してしまうのであります!


わたくしの見た目はニンゲンの姿で、自分でも思う可愛さ!


今日も通りすがりのニンゲンの思い出を食べるであります!!



神経質そうなサラリーマンさんです!


うーん。あまり美味しくないですな…!


しょっぱいような、酸っぱいような、あまり食べたことのない味がするであります!


あ、この味は、溶けきらなかった涙の味がするであります!



次は、学生さんですな!


「ねえ、私の記憶、食べるの?」


えっ?今、話しかけられた?記憶を食べることがバレたのでありますか!?


「お願い。記憶、食べないで」


でも、わたくしはニンゲンの記憶を食べないと、生きていけないのであります!!


「でも、きっとみんな、記憶も思い出も、大事。ずっと残していたいの」


では、わたくしはどうしたら良いのでありますか!?


「あのね、つらい記憶を持った人もいると思うの。だから、記憶を食べたかったら『食べても良い記憶ある?』って聞いて、『ある』って言われたら、食べてもいいと思うよ」


なるほど…。


「だから、勝手に人の記憶を食べないって、約束して」


わかったであります!!約束するであります!!


「ありがと。じゃあ、私の中の、一番小さいやつ、食べていいよ」


一番小さいやつ…?綿菓子の中で一番小さいやつのことですな!


う〜ん!甘くて美味しいであります!!


この味は、束の間の幸せの味ですな!!





学生さんと約束したように、わたくしは道行く人に記憶を食べていいか聞くのです!


でも、みんな変な顔をして首を振るだけ。


みんな記憶なんてくれないであります。


「あの日の約束を、破りたくないであります!」


美味しい記憶をくれた学生さんとの約束は、守らねば!!






お腹すいた。


お腹すいた。


お腹すいた。


お腹すいた。





「もう、限界であります……!」




ふと目の前に、たくさんの綿菓子が浮かんでいたのです!


あ、良いことを思いついたであります!





美味しい!!


美味しい!!


美味しい!!


美味しい!!


美味しい!!




この味は、いろんな味を組み合わせた感じで、甘くて、酸っぱくて、しょっぱくて、辛くて、苦くて、でも、美味しくて。


























だれかと、何かを、約束していた気がする。










ここは、どこ?

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記憶の綿菓子 魔不可 @216mafuka

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