帰郷

 翌朝、簡易区画の会議卓に、アリス、セリン、エラン、マーレン、ローワン、そしてソリヴァールの戦士と見られる2名が集まった。

 天蓋越しの淡い光が差し込む中、卓上の空気は張り詰めている。


「交渉は成立しましたが、まずはノクティスに帰るべきです」セリンが口火を切った。「成果の報告と、次の段階の準備が必要になります」


「問題は帰路だ」エランが言う。「行きのルートは危険すぎる。カーが命を落とし、ジョリンも重傷を負った。再びあそこを通るのは無謀だ」


 マーレンが短く鼻を鳴らす。「無謀どころか自殺だ。次は全員が帰れない」


 そこでローワンが口を開いた。「別ルートを使う。ソリヴァールの車両で、グレイランナーの出没が少ない地域を通る道だ。護衛は私、そして防衛隊からキアナとトーヴァンを同行させる。必要な物資も積み込める」


 キアナは静かに一礼し、短弓の弦を確かめた。トーヴァンは黙って頷き、分厚い盾の縁に手を置いている。


「帰るだけじゃなく、今後のことも考えたい」アリスが言う。「資源や物資を安全に運ぶための輸送ルートが必要です。少量ならドローン、大量輸送なら移動式の防護ドームを備えた線路を作れるはず。鉱物や物資はノクティスが提供し、設計や施工はソリヴァールの技術で」


 セリンも続けた。「輸送だけでなく通信もだ。まずは帰国して現状を共有し、資源と技術の交換条件を詰める。その上で、長期的な輸送・通信網を築く」


 ローワンは短く頷いた。「悪くない。だが、それはこの帰還を成功させてからの話だ」


 エランとマーレンは視線を交わし、やがて同時に頷いた。

「ノクティス側からは私とマーレンが護衛に加わる」エランが言う。

 マーレンは渋い表情のまま、短く「了解」とだけ返した。


「決まりだな」ローワンが立ち上がる。「車両と装備を整える。出発は二日後だ」

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