第2話


張遼ちょうりょう将軍!」


 臨洮りんとうの平地に出ていた張遼は、やって来た楽進がくしん李典りてんに気付いた。


「これはお二人とも」

 手勢は数人しか連れていない。

「いかがされたか。山から下りて来たばかりであろう」

「数時間休んできました。

 ここで龐徳ほうとくを待つと聞きました。私たちもお付き合いいたします」

司馬懿しばい殿はなんと?」

「いずれにせよ涼州騎馬隊と接触出来なければ、今は本陣にいても動きはないとのことでしたので。許可は頂いて来ました」

「貴方の首級なら十分一人でも龐徳をおびき出せるでしょうがね。

 しかしそこに更に魏軍の武将が揃っていれば、何の動きかと思って奴らは興味を持つかもしれませんし」


「そうですか。お二人が良いならばそれで良い。

 しかし龐徳が現れた場合は、槍を合わせるのは私に任せていただきたい。

 一度ぶつかったとき、尋常ではない怒りを感じた。

 少しばかりでは韓遂を殺したのが魏軍ではないなどと、信じる様子では無かったからな」


龐徳ほうとくは歴戦の武将と賈詡かく将軍からも聞きました。

 張遼将軍にお任せいたします」


 楽進がくしんが言うと張遼は頷いた。


「ですが涼州騎馬隊が集団で飛び出してきた時は、我々も加勢しますよ。見物に来たわけじゃない」


 釘を刺すように李典が言う。


「……そうなるでしょうか?」

「分からぬ」


 張遼は暗い涼州の大地の山岳地帯を、じっと見据えていた。



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