短編Bar『せめて今夜はファンタジー』

玉置寿ん

第1話 布


覚えておりますのは、日曜の朝に目を開けたその景色でございます。


物心ついた頃から寝室の窓に掛かっていたカーテン越しに、夏の早朝の白く光る日射しが、部屋の彩度を助け起こしておりました。家族はみんなまだ眠っておりました。


幼かった私があんなに早く目が覚めたのは父の立派なのおかげであります。


姉と半分こで使っていたタオルケットから這い出て、勘の良い母を起こさぬようカーテンをめくりました。狭い和室には一筋だけ朝が訪れます。私は素早くカーテンの後ろにまわり、寝室の朝を閉ざしました。


窓からは田んぼや小さな畑や古い家などが見えました。それからすずめの電線にとまっているのを眺めたものです。


やがて満足いくと、私はもう一度姉の隣へ戻り布団をかぶるのでした。



去年の暮れ、今の家に引っ越してからも使っていたあのカーテンは姉と二人でごみ袋に詰めました。最後に少し顔を近付けると、古い布からは畳とお日様の匂いがしました。

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