第4話 バケモノ…本当の記憶
2015年8月10日 23時57分
ガヤガヤとした騒めき声が狭い居酒屋に響き渡る。
ビールが一つ二つとなくなるたびにその声は大きなっていく。
ワイはケタケタと笑いながら、唾を飛ばす。
口の中で咀嚼中の汚物が喋るたびに顔を出す。
【まゆみちゃん。
ぜんぜんお酒飲んでないやんか。
遠慮せんでええからドンドン飲んでや。】
ワイは嫌がる新入社員の口に無理やりビールの入ったグラスを引きつける。
まゆみちゃんは酷く引き攣った顔で顔を背ける。
まゆみちゃんの酷く嫌がった顔にワイの下半身は
ドクンドクンと脈打つ。
【楯中くん この子めちゃくちゃ俺好みやわ
よう採用してくれたで。】
「あ、当たり前ですよ。
社長のご方針に沿って最適解を提示するのが
私の役目ですから。」
部下の縦中がゴマを擦りながら媚をうる。
【楯中 お前それほんまに心の中で思てるか?】
ワイはにやけながら楯中の耳元で囁く。
楯中は酷くドキッとした様子で目線を泳がす。
ポンッ
ワイは楯中の肩に沿っと手を置くと
ぽろっと呟く。
【ワイが1番嫌いな言葉が裏切るって言葉やねん。】
ワイは楯中にそう呟くとまゆみちゃんの側に近づく。
「し、島田社長わかっております。
私は島田社長を支えるためにこの世に生まれてきたのですから。」
楯中は体から出た汗をタオルで拭う。
ワイはチラリと楯中の方に振り向くとすぐにまゆみちゃんの方に目線をやる。
まゆみちゃんは少し驚いた様子でこちらを眺める。
【楯中君 面白い奴やろ?
まぁワイは誰よりも面白いけどな。】
ワイはケタケタと笑いながら口の中の汚物を飛ばす。
ワイはまゆみちゃんの肩に手をかけると小声で呟く。
【ワイが気に入った社員はたくさん給料やることにしてるねん。
楯中君はな結婚してて子供も三人おるねん。
まぁ言い換えたらお金がたくさんかかるわけやん。
だからワイは楯中君のこと気に入ってるんや。】
まゆみちゃんが震えた喉から必死に言葉を紡ぐ。
「そ、それって家族を人質にとってるってことですか?」
楯中が酷く焦った様子でこちらを見つめる。
【まぁどう解釈してくれても構わんけど。
ワイが信頼できる人間になってくれたら給料ぎょうさん出すし、待遇も良くする。
何がいいたいかってことかと言うとなワイは信頼できる人間しか周りに置かない。
だからまゆみちゃんもそうなってくれないと困るってことや。】
ワイはでっぷりとしたお腹をたたきながらビールを飲み干す。
【ビールもう一杯!】
ワイは大声で叫ぶ。
楯中とまゆみちゃんが恥ずかしそうにしながら慌て始める。
【普通に店員呼んでるだけなのに何が悪いんや?
別に法律犯したわけでもないんのに。】
ワイは口周りのジョリジョリとした髭を触りながら呟く。
カッカッカッ
ハイヒールの音が次第に大きくなる。
「どうなさいましたか?」
青い瞳の輝く 宝石のような美しい女性が微笑みながら近づいてくる。
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