第28話 僕の姫
小さい頃から、何かを観察するのが好きだった。
絵を描くのも好きで、植物とか風景画を趣味で始めたのは案外と早かった。
中学時代、好きな子の写真を見て、ふと手に持っていた鉛筆を意識する。
なぜか「描ける」気がして、彼女の人物画にいどんだ。
何時間もかけて完成した彼女の絵は、写真そっくりだった。
ある日、掃除中の母が僕が描いたその女子の絵をSNSで拡散した。
すると大反響。
いっぱいの「いいね」と「コメント」をもらった。
学校でも話題になったし、なんてたって同じ学校の同級生のその彼女に知れた。
どうして私を描いたの?と彼女の方から聞かれて・・・
素直に「惹かれたから」と答えると、
友達から始めようよ、の延長線上、付き合うことになった。
彼女は学校のマドンナ。
嫉妬は黒くも赤くもあった。
ある日の帰り道、通り魔にあった。
その頃の僕はひとの特徴を捉える訓練をしている最中の絶頂だった。
無事に帰宅できたはいいものの、犯人の顔に見覚えがあった。
名前は知らない。
僕は警察に相談しに行くために、スケッチブックを持って行った。
僕の描いた犯人の似顔絵は、最近ひた隠しにされていた事件を解決した。
それは僕に嫌味を言いに来た同級生の女子の顔にどこか似ていて。
その肉親にあたる互いを知らない関係。
いくら自己防衛だからって、ナイフを奪って刺すなんて、とその嫌味女子。
僕は将来、絵を描くことでひとの役に立とうとその時思ったんだ。
僕のお嫁さんは飾ってある中学時代の絵を見て「私老けたなぁ」と時々ぼやいてくれる。
覚醒すると背中から天使の翼が出てくる体質の妻。
「天使日徒:てんしびと」と言うらしいが、まだ覚醒した妻を描いたことはない。
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