第16話 シド・カネシゲのフルネーム


 赤いバラは

 どの花よりも猛々しく、また美しい。

 

 死を呼ぶと知りつつも虫は惑わされ、追い求める。


 しかし死を呼ぶバラを魅了するのは、

 唯一、天の花。


 下界を見下ろすことはない。


 どんなに美しい蝶が舞って見せても、


 それは踊らされているに過ぎず、


 どんなに賢いミツバチでも、

 その核にたどり着くことはできない。


 そして―・・・


 そしてどんなに勇敢な風でも


 その花びらを揺らすことは叶わず、


 どんな庭師のハサミにも、切り取られることはない




 伝説人シド・カネシゲを謳ういつから始まったのか不明なもの。


 魔法領でも知ってるひとは知ってるって教科書になってもそんな感じ。


 シド・カネシゲの本名があながち長いことのほうが有名かも?


 僕もまだ覚えている途中。


 なにかの役にたちそうだなぁ、って思って。



 うわさによると、その長い本名に対しての魔法がかかった本があるそうだ。


 シド・カネシゲのフルネームを唱えると、内容が変わる魔法らしい。


 

 まぁ、うわさを聞いたって言うお兄ちゃんからの情報だから信用はしてない。


 お兄ちゃん、ちょっとした空想癖あるから。



 ――

 ――――・・・どうしよう?古本屋で、書物あさってたら本当にあった。


 裏表紙の内側に、『シド・カネシゲのフルネームは?』って。


 どうしよう?まだ全部は覚えてない。



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