能力インストール
犬時保志
第1話 変な物インストールした
「米食いてぇ!」
米の高騰に減給続きの貧乏暮らし、僕は長い間米を食べて無い、備蓄米の噂を聞いて身軽な営業の僕は、即買いに行ったが既に売り切れだった。
「備蓄米じゃ無くて微蓄米じゃねぇか!!」
愚痴を言っても買えない物はしょうがない、パンとうどんで食い繋いでる。
食パンは一袋98円で買えるが、2割り4割り引きを狙い購入する、5枚切り毎朝1枚食べれば5日もつ、うどん一玉、ラ○ーなら17円だそれを半玉一食にする……情けなくて泣けて来る。
いつか近い将来、過労と栄養失調で僕は倒れるだろう。
珍しく早起きが出来た、奮発して今朝はベーコンエッグにカフェオレ(26本入り298円だったのが498円に高騰)、トーストで朝食中スマホから着信音が流れた。
「なんだ? 『能力をインストールしよう』ゲームのCMか……無料ゲームならインストールするか、どうせ7月から無職……電話番号? ΧΧΧ‐ΧΧΧΧ‐ΧΧΧΧよしインストール開始……長い!!」
いつまで経ってもインストールが終わらない。
「あっ! もう8時半遅刻する!」
折角の早起きが台無し! スマホを引っ掴み大急ぎ車を跳ばし出社した。
8時50分到着、遅刻は免れた。
出社して直ぐに今日の営業方面を課長に報告、パンフレットを補充「無理だろうが頑張れ」いつもの事だが嫌み半分課長の言葉を受けて社を出て車を走らせている。
営業の僕は『鉄ミネラル液』を農家に販売促進が仕事だ。
味の向上だけでなく『大きく育つ不思議液』ってキャッチフレーズで販売してる。
販売は、効果に時間がかかるため、飛ぶように売れる商品ではない地味で苦労の多い営業だ。
日本中どこを掘っても水はわき出る、残念な事に折角の井戸の殆どは金気水と言って、鉄分を含んだ植物栽培に適さない水だが『鉄ミネラル液』は金気水で作る、画期的栽培溶液だそうだ。
製方は知らない、現社長の考案らしい、息子の課長は知ってると思うが凄い効果の植物栽培促進溶液なんだ、詐欺でも騙しでも無い、素晴らしい物なのだが、僕は営業に取って最悪の口下手なので、一度も普通に契約出来た事が無い、営業ノルマ入社以来達成出来ず固定給減額され、生活出来るギリギリになり自分で買ってお試し使用に配る事も出来ない。
「あれ? 止まってる? あぁ選択か……何か分からんが、最初の『サトリ』をインストール!」
(サトリって心を読む妖怪だったかな? どんなゲームだよ?)
入社5年、今まで契約出来たのが3件、最後通告から半年経って今月末に解雇が決定してる。
「今更どうしようも無い、今まで頑張っても契約出来なかった、後5日で3件契約なんて無理」
高速代倹約で国道走行中、ドライブインで車中泊翌早朝岩手に到着。
今日の最初、イチゴ栽培農家が見えた。
「おはよう御座います! 農家の味方『鉄ミネラル』販売促進社から参りました」
パンフレットを手渡しながら、老農夫に話掛けた。
❮なんじゃ、また営業か、忙しいのに邪魔をするな! 話に乗ると言いくるめられる! 無視じゃ❯
(老人の口が動いて無いのに声が出てる? どうした事?)
無言で無視する老人、でも拒否の気持ちが聞こえて来た。
【失敗作『サトリ』インストールを確認、逆サトリになった後の追跡調査必要なり!!】
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