第34話
翌朝、キャンプ場で4人でのんびり朝食を食べていると、サファリの風の面々がやって来た。
僕は思わず立ち上がり、「おはようございます!」と挨拶をする。
ライオネンさんは、「そんなに畏まるな」と言い、
「オレたちは昨日見た手品のトリックが知りたくて、居ても立っても居られなくて早朝にも拘らず押しかけてしまった」
「手土産も持ってきた。よかったら食べてくれ」
パンの上半分を切って、ハムとか葉野菜とかチーズが挟んである。
「ありがとうございます。美味しそう」
ルマンダさんは空間倉庫から簡易椅子を取り出し仲間に分配する。
まずはオレたちから話せるところまで話す。
「まず、オレたちは休暇目的でこの街に来た、というのは嘘だ。依頼を遂行するために来た」「依頼主はここの領主よりはるかに上の人物だ。だからこれ以上は話せない」
「昨日、捕えたのは、通称『リークバード』と呼ばれるお尋ね者だ。本名は不明。やがてこの街に来るだろうというから待ち伏せしてた」「確信犯だと言われている」
「確信犯?」
「宗教などの信仰心から、自分の行いは正しいと思い込んで犯罪を犯す犯罪者のことよね?」
リディアにフォローして貰った。
「うん、その通りだ」「オレたちはこの街で待機して、来襲に備える依頼を受けてた」
「
「その辺はあまり詮索しない方がいいな」
「そうね。ごめんなさい」
リディアの博識には脱帽する。
「今まで被害を食い止めた例はあっても、当然ながら捕えられた前例はない」「捕えようとすれば、昨日のザマだ」
「オレたちも、魔法を使う奴は別にいるのだろうとまでは考えていたんだ。魔法陣は術者から離れた場所でも展開できるからな」
「オレがリークバードを抑え込み、ルマンダが魔法を受け流し、その間にケニーとガナが魔法使いを見つける手筈というわけだ」「ところが2人が行動を起こそうとしたら、魔法攻撃が増して身動きが取れない。事前に伝え聞いてた以上の威力だった」
「どこかに潜んで魔法を撃っていると思ってた奴が、まさかの『灯台下暗し』にいたとはね」ルマンダさんは自嘲気味に言う。
「で、ミロたちはどうして分かったんだ?」
「それはまず僕から話します」
「今まで隠してて申し訳ありませんが、実は僕、人のステータスを見る事ができます」
サファリの風の4人は驚いた。
「父に簡単に人には話すなと言われてたんです」
「そこで、剣術が凄いのに、さらにあんな無尽蔵に魔法が撃てるなんて、いったいどんなステータスしてるんだと思って見てみたら、あの犯人、INTが16しかない」
「しかも、誰もいない空間にINT80のステータスが浮かび上がった」「あそこにもう1人いるって分かったわけです」
「探知魔法も利かないマントを通して見えるのも不思議ね」
「そう言う事か…」「オレたちのステータスも見えるのか?」
「一応、仲間には事前に了解を得てからにしてます」
ミロ、アカネ、リディアは頷いてくれた。
「あと、ライオネンさんのは敵の近くにいたので、チラッと見えちゃいました。すみません」
「構わない。見てくれ」
「ライオネンさんは、STR 96/AGI 81/VIT 86/INT 38/DEX 66/LUK 29、って感じですね」
「ちょっと、待って」ルマンダさんが空間倉庫から筆記具を取り出す。「もう一度、少しゆっくりめにお願いできる?」
もう一回読み上げる。
「これ、合ってるよ。こっちのデータ2年前だけど、偶然で一致するわけがない、運が低いとことか(笑)」
「ごめん、次もお願いできるかな、今度はアタイ」
「ルマンダさん」
「STR 37/AGI 58/VIT 48/INT 91/DEX 73/LUK 66」
「オイラも!」
「ケニーさん」
「STR 67/AGI 92/VIT 42/INT 32/DEX 60/LUK 41」
「最後は拙者も」
「ガナさん」
「STR 76/AGI 89/VIT 44/INT 48/DEX 71/LUK 36」
「拙者だけ、90超えがないでござるか」
「そうは言っても、89があるからあと一歩。他の数字は軒並みケニーより上だしね、あ、運も下か…」
「速さだけは譲れないっス」
「シンヤ、ありがとう」「今更なんだけど、このスキル、デメリットはないの?」
「見てる間、ずっと魔力を消費しちゃうことですかね。あと普通の視界がぼやけて見えなくなる」
「ごめんなさい。最初に聞くべきだった」
「大丈夫です。これくらいならしばらくすれば回復します」
みんなに謝られてしまった。
ルマンダさんの話によると、この世界には戦う前から相手のスペックを一目で見抜いてしまう賢者の話は聞いたことはあるが、数字で言い当てるというのは聞いたことがないとのことだ。
僕も数字は明かさず、曖昧な表現でやり過ごしていた方が賢かったのかもしれない。
「話は戻るけど、最初に突っ込んできたミロには見えてたの?」
そこで、昨晩話した顛末を繰り返した。
「無茶よ、ミロ」
「しかしながら、ライオネン殿の余裕を見抜いた眼力はやはり只者ではござらん」
「もう1人、見抜いてた人がいます」
「ウチか?」「まぁ、おんなじ斧使いとして、まだまだ限界ではないと感じただけや」
「このチーム、凄くない?」
仲間を褒められるのはやっぱり嬉しい。
「アタイは、そこの魔法使いさんに興味津々」
「わ、私?」
「言いにくいとは思うけど、特殊な種族よね?」
カリナさんたちにも見抜かれたし、諦めたのか、リディアはすぐに認めた。
「やっぱり強い魔法使いには隠せないか」
「もしかして、サラさんの妹さん?」
「えっ、姉を知ってるの?」
「何年か前、王都に行った時にね。会ったの」「凄い魔法使いだったわ」
「姉は元気にしてましたか?」
「ええ、元気。友達のトムとチェリーも一緒よ」
なんか、リディアがとろけ始めた。
やっぱシスコンだった。
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