【First Story of the Babies:《〝世界を浄化する地獄の花〟》】
Episode 1 :【運命の武器】
――2054年、3月13日。
俺は今日も、来るべき〝運命の日〟に向けて、トレーニングに励んでいる。
今取り組んでいるのは、宇宙飛行士が行う〝無重力訓練〟を再現した、ダイビングプールでのトレーニングだ。
100キロを超える拘束具を装着したまま、水中を動く。
説明こそシンプルだが、その過酷さは、凄まじいものだ。
俺はその訓練を、一日たりとも欠かさずに続けている。
『叶えたい夢がある』だとか、そんな甘い理由で、じゃない。
――『絶対に、成し遂げなければならないことがある』。
その信念が、俺の肉体と魂を、突き動かしているのだ。
『――
「……! 先生」
通信機越しに響く声は、
その声の主は、この施設のオーナーであり、俺の恩師でもある、
『ついに完成したぞ。すぐに来い』
斎賀先生は手短に、その言葉だけを残して、一方的に通話を切った。
今頃、その
そんな先生の言葉を聞いた俺は――心からの感動を、抑えきれなかった。
訓練を終え、拘束具を外し、先生のいる部屋へと、真っ直ぐ向かう。
地を蹴る度に、身体がいつもより軽く感じる。まるで羽根が生えているみたいだ。
(ついに、ついに……この時が、来たんだ)
それはきっと、そんな高揚感が、俺の身体を突き動かしていたからだろう。
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――斎賀先生の研究室に付くと、自動ドアが静かに開く。
そこで待っていたのは、立派な
来年で喜寿(77歳)になるというのに、どこにも衰えが見えない。
むしろ、立っているだけで、空気すら引き締めるような威圧感がある。
「どうだ、夏神。それこそが――お前が求めていたものだ」
そう言って、斎賀先生は俺に、特殊な形状の
両手に伝わる、ズッシリと重厚感。
白銀色のメタリックボディに駆け巡る、線模様の光。
直感的に分かった――『これは、ただの拳銃じゃない』と。
「それは《
マガジンのバッテリーが窒素を吸収し、粒子エネルギーに変換。
それを撃鉄で発射することで、凄まじい威力の――」
先生は、軍師のように姿勢を正しながら、
「……これが……これが、俺の……!」
けれど、俺の目と心は、その拳銃のフォルムに奪われていて、話はまるで頭に入って来なかった。
そんな、魅了されている俺に、先生は咳払いをして注意を促す。
「……あ、すみません」
「まったく……集中すると周りが見えなくなるのは、相変わらずだな。
まあ、お前の場合は、説明より、実践の方が早いか」
斎賀先生はそう言って、左腕の義手に装着されたキーボードを、高速でタイピング。
すると床が開き、無機質な機械人形が、床からせり上がってきた。
「手始めに、あの人形を撃ってみろ」
俺は先生の指示通り、革製のホルスターから拳銃を抜き、ガシャッとスライドを引いて、撃鉄を起こす。
そして、オンボロ人形に照準を向けて、迷わず、引き金を引いた――。
――バゴォオオオオンッ!!
(っ――!? 身体がっ……!!)
その瞬間、眩い閃光と共に、レーザービームが炸裂。
同時に、身体が吹き飛ばされるほどの凄まじい衝撃に襲われる。
反動で吹き飛ばされ、壁にぶつかる。
それと同時に、人形が爆散した音が、見事にシンクロ。
少し遅れて、斎賀先生の雑な拍手が、揺れる頭に響いた。
「ッ……! 先生、これ出力を間違えてませんか……!?」
「いや、それが標準の状態だが」
(……!? この威力で、標準の状態……!?)
唖然とする俺を横目に、先生は平然と答え、そのまま言葉を続ける。
「それは、対人用の武器ではない。
データと照らし合わせてみる限り、〝例の怪物〟相手には、それぐらいのブツでないと、話にもならん。
そのモードを使い熟せない限り、勝てる見込みはゼロ……を通り越して、もはやマイナスだな」
「……? そのモード?」
先生が何気なく発した、〝モード〟という単語に、興味を引かれる。
この拳銃には、〝レーザーを発射する〟以外の機能があるということなのか?
「……まあ、今教えても大丈夫か」
先生は、その心中を察してくれたのか。
再び左腕のキーボードを、高速でタイピング。
そうしてせり上がってきたケースには、同じ拳銃の
先生は、そのケースから
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(主人公・蓮元夏神のメインビジュアルは、以下のリンクから)
→ 🔗[https://www.pixiv.net/artworks/133799326]
または、プロフィールや作品紹介文のリンクから!
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《次回予告》
「――その《拳銃型電磁光砲照射装置》には、3つのモードが搭載されている」
「名前というのは、ただの飾りではない。魂を宿す〝
「――お前なら、それに、何と名を付ける?」
次回――Episode 2 :【名を与えし者】
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