第9話 奏side


ピッピッピッ……



静かな病室の中に響くのは、機械の音。


ICU室から個室に移動した蓮華さん。


脳には、異常がないと言われた。


なのに、瞼を開けない。



「多分、心の問題かと」



この人、本当に医師?と思うくらい、頼りない医師が言った言葉を想い出す。


父さんに、連絡した時『治療費も入院費も全て出す』と言ってくれた。


病院に近い駅から僕が住んでいる街までを電車で通っている。



「蓮華さん、目を覚まして」



蓮華さんの右手を両手で握ってそう声をかける。

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