一流アスリートの人生

 さて、みんなの憧れ一流アスリートの人生を体験してみよう。


 まず、一流になる為には競技にもよるが始めるのが早い方が良い。16歳を超えてから何かを始めて一流になるにはチート級の才能が必要だ。それがあれば良いが、ほとんどの場合、才能が有っても経験が無ければ勝つことが出来ない。


 勝負の世界とは、そう言うものだ。


 なぜなら、人間の限界は決まっているのだ。多少の誤差は在るが、才能によって筋力が二倍とか、持久力が二倍等の差は存在しない。人間の限界値の平均を100とすれば、勝者となるアスリートの能力は良くて110ぐらいだ。105でもいい成績を残せるだろう。

 ここで言っているのは一般人で努力していない人間との比較ではなく、同じ競技をしていてちゃんと努力している人たちの差だ。

 100を110にするためには才能だけでは足りないのだ。努力は必須と言っていい。そういう世界で勝つために、幼少期から始めた方が勝率は上がる。


 また、どの競技でも勝つのは一人だけだ。


 唯一の椅子を目指して練習をする。遊んでいる暇などない。毎日競技の事だけ考えて練習し、食事にも気を遣う。とても好きでなければやっていられない。好きだったとしても苦しいトレーニングを楽しいと思えなければ続かないだろう。

 一流になれば金も名誉もついて来る。結婚相手にも困る事は無いだろう。だが、そういったモノが、競技で1位になるのに邪魔になる場合もある。


 金で競技以外に楽しい事を見つけたら、トレーニング時間が減り、勝てなくなる。異性にのめり込み、トレーニングよりもデートを選べば勝てなくなる。もちろん、金儲けや異性目当てで始めたのなら問題ないが、残念な事に競技を一番好きだと思えなければ、勝者には成れない。


 そして、肉体にはピークがあり、40代を前に引退することになる。


 もう一番には成れない。人生は長い。大好きだった競技で勝てなくなり弱くなり下手になり、そこから40年ほど、弱っていく自分と向き合うことになる。過去の栄光が眩しいほど、老いた自分が悲しくなるだろう。


 家族を持ち息子や娘が出来たとしても幸せな関係は作れない。特に息子や娘が自分と同じ競技を選んだ場合、自分の成績が偉大であればあるほど、息子や娘は苦しむ事になる。

 周りからのプレッシャーもあるし、親の名を汚さないようにと必死に練習もするだろう。そんな子供たちの姿を見て、嬉しいと思えるのだろうか?


 子供たちが期待に応えて上手く行ったとして、嫉妬せずに子供を祝福できるだろうか?


 よほどの人格者でなければ幸せに成れないと思う。

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