権力者の人生

 昔は国王、今は総理大臣や大統領、最高権力者の人生を体験してみよう。権力が有ったらやりたい放題できる。そう思っていた時期が私にもありました。


 結論から言えば、権力者に自由はない。最初は自由に振舞えるかもしれないが、最後は何も出来ない上に、暴君のごとき振る舞いをすれば悲惨な末路が待っている。


 まず、最高権力者に成ったからと言って肉体的に強くなるわけでもなく、老いや病気から逃れられる訳でもない。


 ただ一人の人間が周りに偉いと思われて権力を得るのだ。


 若いうちは良いだろう。武力、知略、人間力、これらの能力が高いうちは自由に権力を振るい、傍若無人に振舞う事も可能だろう。だが、人は必ず老いて能力を失っていく、どんな有能な権力者も晩年はおかしなことをしだす。

 そうなる前に、自分の子孫や後輩に地位を譲ることが出来ればいい。だが、権力は一度手にすると手放すのが容易ではない。金と一緒で、多くを得たら失う事が出来なくなる。


 権力を使って善行を重ねてきたとしよう。そのまま死ぬまでへまをしなければ幸福な人生を送れるが、最後にボケてとんでもない事をやらかした場合、それまでどれだけの名君だったとしても報復を受けるのだ。

 権力が大きいという事は、大勢を幸せにできるが大勢を不幸にも出来る。その因果は、恐ろしいほど無慈悲に返ってくる。


 この時点で私は権力は要らないとなるのだが、それでも権力が欲しいのなら覚悟をすれば良い。


 地獄の様な人生、因果応報が有っても耐えてみせると……。


 この地獄の様な人生は歴史を見ればたくさん有る。特に中国の歴史を見れば傍若無人な王族がどのような因果応報を受けて来たか知る事が出来る。あんな人生はまっぴらだと私は思う。名君だったとしても、とんでもない人生を送っている。


 幸せだとは到底思えない。


 そもそも権力者も金持ちと一緒で誰も信用できずに安心も安全も無い人生を送ることになる。油断すれば死、結婚相手も自分の子供も信用は出来ずに生きて行く事になる。こんな生き方が最高に楽しく幸せだと思えるのなら権力者を目指せば良い。


 ちなみに、金持ちは自分の家庭で最高権力者に成れるが、政治的な権力者には自由が無い。部下が居るからだ。しかも、その部下の方が優秀だった場合、もう自由は無い。部下の意見を採用しなければ謀反を起こされて終わるのだ。

 自分が優秀な時は自由だが、部下が優秀になってしまうと不自由になる。部下の顔色を伺って生きることになる。これが、最高権力者の末路なのだ。


 誰も信用できない世界で食べる毒が混入しているかもしれない最高級の酒と食事は美味しいですか?

 誰も信用できない世界でいつ敵になるのか信用できない家族を持つことは幸せですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る