僕にとっての「現実」は、たった一つのみのはずだった。『あの日』までは
- ★★★ Excellent!!!
不条理な恐怖。常識が通用しない中で起こった恐怖という、逃げ場のなさが強烈でした。
主人公は「殺したはずの母」が家の中に普通にいるのを見る。幼い頃からなんでも母の決めた通りに生きて行かないといけないような状況を作られ、せっかく出来た恋人の関係まで壊された。
その後で、思い余って母を手にかけたのだが……。
それから起こった出来事が、常識の通用しない「超次元」な事態に発展していく。
霊現象などのように「自分の住んでいる世界の中での怪現象」というものならば、きっとまだ割り切れたに違いない。
でも、壊れてしまったのは日常ではなく、彼の住んでいる「世界そのもの」となっている。
当たり前とか、「大前提」となっていたような自分の世界。それが壊れてしまい、一切の常識が通用しない。
「人が生きるのは、たった一つの現実の中のみ」。その絶対的な事実が壊れてしまった中で、彼はこれからの人生をどう生きればいいのだろうか。
壊れ、歪んでしまった世界の中で、彼は今後も理性を保ちきることができるのか。存在とか理性とか善悪とか、全てを歪ませる、非常に怖い超次元ホラーです。