第28話  次の小さな夢

 全力で訪問を踏み止まる様に考え直させ様と踏ん張る、でも其れは蟷螂之斧でしかない。

「今日は止めとこう、日を新ためてからね?」

「大丈夫だよ男の子のお部屋だもんね、あたしが綺麗にしてあげる!」


 止めて置きましょうと言う選択肢は此の女性ひとの中には何処にも存在しないらしい…。

「多少なりと片付けて置くからそれからにしよう!」

「それにね知りたい事も~♥、確認して置きたい事も在るしね♥」

 やはり全く引く気は無いらしい、然も解っててやろうとして居る、絶対確信犯…。


「そうだ!、今日は此の侭此処に居て良いかな?」

「何で?、如何して?」

「付き合い出した初日でしょ!、此の儘此処に居てゆっくり過ごすってのは如何かな?」

「うんそれも良いわね!」

「でしょ!、だから此処で…」

「でもね?」

「でも?」

「あなたの部屋でも出来るよね?、二人でゆっくり!」

 論破されて仕舞う、嗚呼記憶が蘇る『他の娘の事考えてるの解るんだからね♥』と釘を刺された事を…。

 (´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)



「これは、だね…」

 俺の部屋を視た確認した彼女の第一声、それ程の惨状と言う訳だ…。


「御免なさい…」

 素直に謝った、其れしか言えない。

「しょうがないよね、男の子だもん」

 何か気合いの様なものを感じるが其れよりも不敵な笑みを湛えて居る、絶対粗遺物足跡捜しする気だ、後が怖いんだが…。


「其れじゃ俺も手伝うよ、散らかしたの俺だし!」

「片付けるのに、あたしが呼ぶ迄表にいてくれるよね!」

 (ФωФ)フフフ・・・

 間髪入れずに断りが入る、手伝いを申し出たが其の場で却下された…。

 ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


 後は運を天に任せた。

 なら今の内にRZの整備して置くか・・・。

 プラグ、エアクリ、ミッションオイル交換まで終わった所で声がかかる。


「休憩しよう!」

 小一時間も経っだろうか?、良い頃間ころあいだねコッチの作業は切り上げるか。


「こんなに綺麗になったの?」

「どうです?」

 元々存在感が高めなのに更に胸を張っている、確かにかなりの女子力で胸を張るだけの事は有る!。


「ねぇ~、其れでね押し入れからこんなの出て来たんだけど見てもいい?」

「何時の間に押し入れ迄?、ソレ気になるの?」

「だって万年床でしょ?、お布団干したら見付けたんだ、絶対見たい、見たいっ!」

「必ず幻滅するぞ、其れでも良いのか?、若しかして祟られるかも知れないぞ?」

「見たい‼、見た~い!」

 燥はしゃいで俺の言う事等聞きやしない、まあ良いか減るもんじゃないし…、俺が田舎から持って来た数少ない荷物の一つ、唯一持って来たミニアルバム、見たら後悔するぞと言ったんだが耳を貸さん。


「この子だぁれ?」

「ドレの事?」

 早速やられたよアルバムを開いて行き成りだぞ?、其れは親父が譲って呉れた写真で上京報告の日に親父が見せて呉れた写真。


「この女の子可愛いね!、でも何でオートバイに座ってるの?」

<そう来やがったか!、然も何で一番最初に引き当てるのかよ?、この女性に隠し事は出来ないと感じる、しょうがないな…>

「大分古い写真だよね、妹さんが居るの?」

 未だ家族の事は伝えてないが、諦めて自分を指さす…。


「俺!」

 σ(゜∀゜ )オレ

 眼玉が飛び出すのではと思える位に目が丸く為る。


「如何したの!、何が遭ったの!、トラックに跳ねられたの?、若しかして高い所から落ちたの?」

 (;゜Д゜)!

 余りに酷くないですかこの反応…、彼女の視線は暫く俺の顔と写真を往復し続けていた。


 暫く眺めて零れた言葉・・・。

「女の子ってパパに似るんだよね、可愛い赤ちゃんになるよねきっと…」

 写真を撫でながら自分自身に聴かせるように呟く。


 ページを捲り楽しそうに見ている。

「今と変わらないね!」

 中坊の頃の写真と見比べて又視線が行き来する、次を捲り挟んで置いた数枚のポストカードが落ちる。

「御免なさい!」


 慌てていたが気にしなくていいと伝えると、落ちたポストカードを拾い上げる。

「若しかして沖縄に行った事在るの?、綺麗な海だよね!、私も行って見たいな~」

「いや、俺も沖縄には行った事は無いよ」

 違うとゆっくり首を振った。


「嘘だね!、是なんて熱帯魚が映ってるし!、こっちは海の底まで見えてるし綺麗な海だよね~、行って見たいな…」

 (´∀`*)ポッ

「その内、嫌でも行かなきゃ為らないぞ?」

「如何言う事?」

 首を傾げて居たので此処でネタ晴らし。


「生まれた場所は違うけど、其処が俺の郷里田舎だよ!」

「うそ・・?、関東コッチの人じゃ無かったの?、信じられない・・?」

 口元に手を当て目を丸くしてる。

 Σ(・ω・ノ)ノ!

「そうかな?、此処が俺の一番お気に入りの場所だよ」

 ポストカードの一枚を抜き出し手渡しす、其処に映るのは何も遮る物の無い水平線に沈む太陽の写真、小さなGRに乗って台風に対峙し越えた峠の頂上付近、俺が何時も峠を越えGRを停め立って居た場所から写されたもの、其れを喰い入る様に見て、一枚、又一枚とじっくりと見直していた。


「ホントに綺麗な場所なんだね…」

「でもホントに遠いぞ、陸路なら片道で1500キロ位有るかな・・、此処からだと多分北海道より遠い場所に成るよ、此処から其処故郷に往復すれば端から端まで日本を縦断出来る位に成ると思うよ…」

 其の侭自分に跳ね返る伝えた言葉、早く仕事に就きたいな其の為に此処迄来たんだし、あの場所を見せて上げたかったが其れは出来なかった、眼の前の此の女性ひとは必ずあの場所へ連れて帰るんだ!。


「じゃあ私を此処に連れってって呉れるのね?」

「約束するよ、でも其の前に仕事決まらないと始まらないかな、一寸待たせるかもしれないけど…」

 決まったとしても直ぐに養って行ける訳じゃない、連れて行けるのは大分先に成るだろうな…。


「ねぇ、聞いても良い?、如何してこんな綺麗な所から上京してきたの?」

 そう言えば何も話して居なかったな俺の事、笑って貰える様に必死でそんな時間も無かった。


「私だったら離れたくないな、悪い人居なそうだから・・」

 小さく呟いた言葉で気持ちが伝わってくる、あそこなら彼女の細やかな夢は直ぐに叶っただろう、笑った儘で、悲しむ事も無く…。




笑って貰える様に必死でそんな時間も無かったな…

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