第21話  真夜中の来訪者 ⑤

 こんな深夜に女性の一人歩き、其の上着てる服がアレじゃ危ないと心配したのだが。

「直ぐ傍に住んでるから大丈夫ですよ、心配して呉れてありがとう…」

 目尻が少し下がり、口角が少しだけ上がった気がした、明日の約束をして其の言葉を残し彼女はドアを開け帰って行った。


 落ち着いて呉れて良かったがこの件を明日店長になんて言い訳しよう… 又酔っぱらって来たんでって事にしとくか…、不味い対応はして無いと思うし・・・。


 其の後全ての入荷した物を収めた!、降ろす物も全て下げた!、パートさんが出勤して来る前に朝来客されたお客様の対応も全て終えた!、仕事の内容は全てパーフェクトに完了させた!、やるべき事は全て終えたんだ!、だけど頭が痛い……。

((>_<))…


 08時を前にパートさん登場。

「おはようございます!」

「お疲れ様!」

「陳列も終わってます、引継ぎお願いします!」

「あれっ帰らないの、何時も直ぐ帰るのに?」

「店長に報告が…」

「へーっ、何かやっちゃったんだ・・・」

(ФωФ)フフフ・・・

「何か楽しそうですね…」

「だって人の何とかは蜜の味って言うでしょ!」

「別に俺はやってませんよ!、只、困ったお客様がいらして其の報告です!」

「ムキに成る処が怪しいんだよね・・・」

 (* ̄▽ ̄)フフフッ♪

「もう良いです…」

 事務室に入り電話でオーナーに昨夜の顛末を報告、勿論酔って来たって事にしましたが…。


「何だかな…、君随分酔っ払いに絡まれるよね?」

「そうなんですよ…、何ででしょうかね?」

「まあ良い、後でトラブルに成るような事でも無さそうな感じだし、もう帰って良いぞ」

「有り難う御座います、其れじゃお先に失礼します!」

 今回もお小言だけで済んだ、やれやれ…。

 ┐(´д`)┌ヤレヤレ


 ドアを出ると信号待ち、今夜22時30分に船橋駅南口の前で待ち合わせ、お姉さん今日は休めないけど明日は休みを取るって言ってたから簡単に済む話じゃ無いって事だよな…、そうなるとファミレスの後に場所を変える必要も有るのか。

 車は無いからあの時の様に移動ドライブしながら話すって訳には行か無いし、何処に向かうとしても燃料満タンにしといた方が良だろう、ならバイクの準備をしてから寝よう!。


 今22時30分、待合せした駅前に立ってるんだが、なんか此の場面を昔に見た気がする、唯、登場人物が違ってる、前に見た時は可愛い小柄な子だった(怖かったが)、両手を必死に振ってた俺が気づく様に、あの時は後を振り返っても誰も居なかった、だから俺に向けられてると断言出来た。


 でも今振り返ると俺の後ろには人、人、車、車、本当に俺に向けられてるのか?、俺で合っているのか?、今目の前で振られた手は本当に俺に向けられて居るのか?、余りに違う周りの景色に俺は場違いな場所に居るんじゃ無いかと思わせる、眼に入る女性ひとは何で嬉しそうに笑って手を振るんだ?、あの笑顔は本当に俺に向けられたもので合って居るんだろうか?。

 何で俺なんだ?、正直全く釣り合ってないだろ、誰が見ても垢抜けない田舎者ジャガイモ、片や新橋のオフィスで働き人目を惹く位綺麗な女性、其れが何で嬉しそうに手を振ってるんだ?、それが解らない。


「間違えたかと思ったよ、お店と雰囲気違うから!」

 その女性はそう言った。

「近づいたら間違えて無かった、良かった♥」

 と続けて言った本当に嬉しそうに…、俺で合ってるらしい、確かこの言葉を聴いた気がする、何時だっただろうか?。


「此処じゃ話も出来無いから取り敢えず話を出来る場所に移動しようか?」

 南へ下った歩いても行ける処にファミレスが在る。

「一寸歩くけど、大丈夫かな?」

「乗り換えでそれ位歩くから、大丈夫だよ♥」

「なら決まりかな、一寸此処で待ってて呉れる?」

「ハイ!」

 まるで犬が尻尾を振ってる様だ、店で見た嬉しそうに笑ってた時の笑顔、俺は其の相手じゃ無いのに何で嬉しそうに笑えるんだ?。


「それじゃ行こうか!」

 少し待たせて声を掛ける、そうバイクを押して来た。

「是も貴方のオートバイなの?」

「俺のだ、間違い無いよ」

「いつものは?」

 そうか店には(RZ)で通ってたから知らないんだっけ。

「アレは二人乗れないから置いて来た、店で話し辛く為ったらコレに乗って場所換えられるよ、嫌じゃ無ければの話だけど?」

「今直ぐ乗せて、此処から私を何処へでも連れてって!」

 にっこり笑って意味深な答えが返って来る。


「ハイ、ショルダーバック首に掛けて、飛んじゃうからね!」

 バックを首に掛けて上げたが問題が発生、如何したものか…、そうお姉さんタイトスカートを履いてる、此の侭乗るとスカートが捲れ上がるし。

「どうしたの?」

「お姉さんタイトスカートだよね…」

「気にしないで良いよ、構わない!」

 外野そとから見れば確かに足だけで済むとは思うけど…。

「俺から見ると見えてしまうが良いのか?」

「気にしないでって言ったでしょ、何なら全部見せて上げるよ♥」

 何処まで本気なんだこの女性…。


 駅に近いファミレスは混んでいた、人目を気にしていたから場所を変える為に背に乗せ走り出す。

「すごい、すごい!、此れがオートバイなんだ!」

 はしゃぐ声が連発されてる、充分広いのだが車の脇すり抜けると…。

「怖いけど楽しい!、仕事でタクシーに乗ってると脇を凄いスピード走って行くオートバイが居るのよ、ヘルメットにTV局のマークが書いて有って、良くぶつからないなって見てるコッチがヒヤヒヤしちゃう位凄く速いんだよ!、貴方知ってる?」

 大声上げながら話しかけてくる。

「初めて乗せて貰ったけどこんなに凄いんだね!」

 まるで遊園地てはしゃぐ子供の様、この女性は知ってるんだ…俺が成りたい物を…。


 此処はオートレース場に近いファミレス、何故ここかは奴の学校に近く、前回飯を奢って貰ったのもここ、長居しても大丈夫なのは確認済だ!。


「いらっしゃいませ」

 前回いらっしゃった女給さんの良い接客!、奥の窓際を希望し案内された。

「軽く食べてから話しようか?」

 軽食済ませ、飲み物を追加オーダーし運ばれて来た。

「ごゆっくりどうぞ」

 と女給さんは立ち去る、前回と同じ良い笑顔だ。

「さて本題に入ろうか!」

 小さく頷く、さて何が出て来るのか俺で役に立てるんだろうか……。


 また出た田舎者のお節介!

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