第17話  真夜中の来訪者 ➀

 興奮醒めぬ儘バイトに入る、さてお仕事開始!。


 今日峠を走り初めて誰かと競る、その時の快感はソロでGRに乗り峠を下って居た時を遥かに上回る、以前も峠の下りでコーナーを攻めてはいたが今日は競る相手が居た、是は今まで体験した事が無く自分より腕もマシンも上な相手、同じコースで鬩ぎ合う事で更に速く走れる気がした。そんなバイトの始まりだが今日はバイト早々珍客が現れる、毎回の様にバイトでお会いしてますので其の表現か適当なのかと思うが?。


 何時もは仕事帰りの平日にお見かけするが今日は日曜…、休日の筈、嫌、時間は既に月曜に替わってる、そりゃ日曜日に来る事だって有るだろう?、そりゃ無いとは言い切れ無いが、ただならぬ雰囲気で然も店に入って来た時から離れていても酒の匂いが漂うし…。


 然も服装は昨日拝見した仕事帰りに着ていたスーツだし、アルコールを二本手に持ちレジに立たれた時にハッキリ判るアルコールの香り、かなり呑まれていらっしゃる上深夜の時間でもきちんと着こなして居るスーツは上下共に皺に為ってるし…。

(-ω-;)ウーン


 支払いを済ませ出口に向かわれ其の侭大人しく帰るのかと思ったら、出口でカゴを手にされ店内にUターンしてる…。


 店内に戻りカゴを持ちアルコールの収まるショーケースの前に居る、既にかなり酔って居るのに更に酒を追加かするのか?、コレ以上飲ませるのは不味いよな…、そう思うが俺は禁止出来る立場でも無い…。


 なので当たり障りの無い言葉掛けとなる。

「明日も出社でしょ、仕事に響きますよ?」

「いいもん!」

 然し駄々っ子の様に聞く耳を持たずお手上げ状態、まあ何が有ったは聞かなくても想像は出来るが…、何かする訳でも無いので暫くは触らぬ何とかで放って置いたんたが一向に帰る様子が無い、如何したものやら…。


 幸いにして本日は日曜の深夜、何時もの日曜のシフトの時に輪を掛けて本日はお客様が来店されない、でも店内に居座られるとレジから離れられない、入荷した物が配送のケースの侭通路に置かれ品出しが出来ない、其の上足元も於保付かず今にも転びそう、ふらふらと店内を行ったり来たりしてる…。


 万策尽きてもう一度説得を試みる、気持ちを逆なでしない様言葉を選んで…。

「帰ってお休みに成った方が良いですよ、明日も仕事でしょう?」

 と一応説得を試みるのだが…。


「やだ!」

 購入した酒の入ったレジ袋を下げ入り口付近とショーケースの間を行ったり来たり、お姉さんは帰らないし俺は仕事が止まるし、あの足取りで転んで怪我されても困るし…。


「しょうがないか…」

 控えの事務室からパイプ椅子を持ち出し店内の邪魔に成らない場所に椅子を置く、店内をウロウロしてるお姉さんに声を掛ける。


 パイプ椅子って?、此のバイトの時に客足が途切れる時間帯でも基本レジを離られぬ為、長時間来店されるお客様も居ない場合カウンター内で座る時も有る、其の時用のパイプ椅子だ。

 <別のコンビニでは知らないが、此処では店長オーナーに許可されている>

「それじゃ此処に座って下さい…」

「ウン!」

 すると素直ににっこり微笑んだ。


 視界に入る所で弁当類を下げ、入荷した分を検品と品出しして行く。

 <まだ帰る気に成らないのかな?>

 引き続き書籍の類。

 <まだ気が変わらない?困ったな?>  

 何故か確認する度に目が合う。


 背を向けて作業中もちらと見るがまだ見てるし一体何なんだ?、どう考えても彼氏と拗れてやけ酒喰らってたんだろうに、其れとも当て付けか?、やっぱり関らない方が良いな、ウン!。


 差し当っての品出しが終わる頃には椅子に座って舟漕いでる。

「ほら、眠いんでしょ家に帰って寝て下さい!」

 ブンブン首を振る、まるで駄々っ子だ。

「帰って呉れないんじゃ仕事ができませんからもう此処に来ちゃ駄目ですよ?、それでも良いですか?」

「ヤダヤダッ!」

 また激しく首を振る、あれじゃモドスんじゃないかとヒヤヒヤしてしまう。


「今度お話聞きますから、今日は帰って明日ちゃんと仕事行って下さいね?」

 小さく頷き立ち上がる、ドアを開けて上げると漸く帰って行った、何処迄帰るのか判らないけど無事に帰れるのかな?心配になる…。

 <レコーダーに一部始終が影像が残っているし、俺はオーナーに如何言えば良いのんだ…?>


 頭を抱えてしまう…、品出しも弁当と本しか終わって無いし、日付が替ったら災難だった、普段いらっしゃる時はキリッとした感じなのに、此方が地なのかな・・・?。


「まぁ良い、何とか為るだろう、さてさっさと残りを片付けよう!」  

 次の納品物が入荷する迄一時間切っていた…。


 翌朝オーナー連絡し小言を言われたがお咎めは無かった、此方から先に報告してレコーダを見た上で…。

「酔っ払いは上手く捌いて関らない様に!」

 とだけで無事に済んだ、昨日走った興奮も感動も何処へやら…、昨夜は災難だったな…。


 バックヤードで上着をロッカーに戻し店を後にする、渡る側の歩行者信号は赤で替るのを待つ、昨夜は如何したんだろうな?、何時も拝見するキチッとした姿と昨夜の駄々っ子な姿、余りに違う姿…、本来の姿があっちなのか?、『仕事だからしょうがないよね…』って一昨日言ってたけどアレって本人が仕事でと思ったんだが其れじゃ昨夜の事が辻褄合わないよな?、仕事で会えないって言われたのかな…其れで寂しくて…、青に替わり一歩踏み出すと大きな欠伸が出てしまう、もうバイクを探す必要も無いしバイト明けでツーリングに行って2stのOILの匂い付いた服を着替えだけすましてバイトに行ったからな…。


 此の後は思いっ切り寝る!、そう決めたんだがでも頭を過る、何時もは創った姿って事なのかな?。似ても無いのに重なって見えて仕舞う、そうだよな一生懸命お姉ちゃんで居る為に頑張ってたんだもんな…、弟の前ではって…。


 まあ人の恋路はって言うし、馬に蹴られたくも無いしな、腹は減ってるけど戦利品も無いし、面倒臭い起きてから考えよう!、階段を下って行く万年床を目指して!。



 カッペは万年床を目指す!

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