第15話 疲れた?、違うな寂しそうなのか?
唐突に話しかけられる、コイツ今何やってるか解ってるのか?
「ツーリング行きません?」
今はバイト中、しかもまだ始まったばかりで眼の前には俺の前にも奴の前にもお客様が並ぶ、一番忙しいこんな時間ときに言うんじゃない!
「後でな!」
とだけ伝え黙々と熟して行く。
「何時もご苦労さん」
「ありがとうございます!」
「又来るよ!」
レジで声を掛けて頂けるお客様も増えてきた、バイトだが嬉しい物だこれ。
「お願いしますね…」
お客様のお声が掛かる、代金お預かりしおつりを渡す、何時ものスーツ姿の綺麗なお姉さんだが…。
「何時も、遅い時間までお仕事大変ですね…」
そうお声を掛けると少しお疲れなのか?、疲れた、違うな寂しそうなのか?此の笑顔…。
「仕事だからしょうがないよね…」
「有り難う御座いました、お気をつけて!」
手を振って一寸だけさっきより良い笑顔で出て行かれた…、今のお顔は…。
「良いな~話出来て~」
一瞬其の事が頭を掠めたが其れを窘る様に左でレジを打つ奴の声がする。
「仕事中だぞ、お客様待たせるんじゃないぞ!」
其々のレジの前に数人ずつ並んで居られるお客様、奴に言った言葉は自分自身にとっても同じ事、黙々とレジ打ち続けた。
忙しい時間も過ぎ一息付ける、土曜の夜にあのお顔、御自身のお仕事のお疲れなのか、御相手の仕事でと…、俺が考えてもしょうがないか…、頭を切り替え話を切り出す勿論さっきの件だ。
「さっきの話だけど聞いても良いか?」
「ホントに何時見ても綺麗な女性ひとですよね~」
「馬鹿そっちじゃ無いツーリングの話だ、詳しく聞かせてくれ!」
「今度ショップでツーリングが在りまして…」
話を聞きだすとショップ主催で南房総を廻るらしく、定番のスポット巡りと一寸楽しめる峠込みの行程らしい、俺の田舎にそんな企画物が有る筈も無かったし参加した事も無い、唯一の誰かと遠出と言えばアイツがMBXに逃げ出された強行軍位だな。
「此の間の彼に是非参加を伝えてと社長さんが言ってました!」
そうだなチョコチョコ乗ってはいるが、市街地ばっかりだしどれ位の峠かは分からんが、ガンマを峠で走らせて見たい、予定が在る訳でも無いし時間も有る是非参加したい!。
「参加すると伝えてくれ!」
そう奴に言って置く。
「其れでねさっきのお姉さん何ですが・・・・」
脇で何か言ってた様だが勿論聞いて無かった、峠か長い事走って無いし‥毎日の様にGRで峠を越えてたんだ懐かしいな…、そんなに時間がたった訳じゃ無いのに凄く懐かしい…、皆如何して居るんだろう、変わり無く過して居るんだろうか‥?。
本日は参加当日、空は快晴!、暦の上では秋に入ってるが少し動くと薄っすら汗ばむ程の陽気、絶好のバイク日和!、集まった参加者の殆どがHONDA車、ホンダのショップ主催なので其れは当然、異色なのは俺の<Γ>と<ドゥカッティ900マイク・ヘイウッド・レプリカ>が二台、<以降ドカと略します>、ルートの説明と休憩ポイント説明、自己紹介を済ませ走り出す、先頭は<ドカ>続いて走る気満々のバイクたち、其の後方に<クラブマン>等の旅行其の物を楽しむ者と続く。
ケツ持ちは<ドカ>社長さんで在る、先頭とケツに<ドカ>とは…、走る気満々の連中の抑えに置くとは良く解ってる、流石バイク屋の社長さん。
先頭の<ドカ>は只物では無い、先読み、ライン取り、ブレーキングに無駄が無い。
スポットを幾つか巡って休憩タイム、此処で社長さんより説明が入る。
「次の休憩ポイントは此処です!、此処から其々のフリー走行タイムに為りますので先に休息ポイントに到着した方は後続到着までゆっくり休憩してください」
「ついに来た!」
全く此の地の土地勘が無く、目立った山等が無い千葉で何処がそのポイントか今一掴めて無かった、此処から愉しみにしていた時間が始まる!。
<さあ此処からがお楽しみの時間が始まる!>
最初こそ並んで攻めていたが段々先頭のドカとの差が開き始める、俺は二番手の中に居る<VF750F><CB750F><CBX400F>そして奴の<VF400F>の二番手が<ドカ>を追う、皆既に走った事が在るのだろうブレーキングポイントが粗皆同じ、此処で出遅れては先頭の<ドカ>に離されてしまう…。
峠の下りで二番手グループは重量級マシン達、その中で俺の<Γ>此方は何れより軽い、そう俺の心情は<軽きは正義!>、今迄抜けたコーナーで此処の下りの癖は解った、皆よりブレーキングを遅らせ一気に突っ込み前に出る、出来るだけ奥で短くフルブレーキングで旋回、出口が見えた所で3速フル、フロントの設置感が無くなるがが構わず抑え込む!。
回すと本当に素直に為り予想ラインと数センチもズレが無い!。
「良しいい子だ!」
<ドカ>のテールが見える、ブレーキングランプの点灯ポイントと長さが伝える次はヘアピン!、此処で届く筈!。
<ドカ>のブレーキリリースポイント手前でロック寸前のフルブレーキング、フルバンクさせ旋回、立ち上がりで<ドカ>のケツに付く。
<スッテプ削ると言いますがΓでは無理!、先にチャンバー擦ってしまいます…>
追い付いた!、だがストレートでは排気量がモノを言う、離されるが喰らい付く、でも前には出ない。
何故なら俺は此処の峠は初見この先が判らない、ブレーキランプの点灯する場所と長さでコーナーを読むしかない、並んで仕舞っては此の先のコーナが解らん、俺が前に出る事に意味は無い!。
最後迄喰らい付いて来た奴のVF400F、其の姿はミラーにもう映って無かった。
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