少し怖い想像話

niHONno

第一話 なぜ、わかったの?

雨上がりの濡れた道を、僕はかさを閉じ、家路いえじいそいでいた。夕暮(ゆうぐ)れの商店街しょうてんがいは、電灯でんとうひかりみずたまりに反射はんしゃして、どこかぼんやりとした雰囲気ふんいきだ。


前から、しろいワンピースを女性じょせいが歩いてくる。すらりとした肢体したいくろながかみ。そのうつくしさにうばわれた。だが、そのかおはあまりにも青白あおじろく、まるで血のちのけかよっていないようだった。

「ああ、あれはれいだ……なんて失礼しつれいなことを思っているんだ、ぼくは」

自分じぶんあたまなかかんがえに、ぼく自分じぶん叱責しっせきした。ただ血色けっしょくわるつかれているだけかもしれないのに。


そんなことを考えているうちに、彼女かのじょぼくのすぐそばを通り過ぎていく。その瞬間しゅんかん耳元みみもとに冷たい)空気くうきれた。

なぜナゼわかったのワカカッタノ?」

ささやくような、かぼそこえ。しかし、その言葉ことばははっきりとぼく鼓膜こまくふるわせた。


僕はそので立ちすくんだ。かえってはいけない。そう本能ほんのうさけんでいた。背後はいごには、ただ静寂せいじゃくがあるだけ。それでも、かえることはできなかった。あの女性じょせいが、今もぼく背後はいごに立っているようながして。ぼくは、ただ立ちくすことしかできなかった。

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