第11話

タイムマシーン」




第10話




前編




「金色の若獅子」






カリンパさんを見送ってから、半月程が経った。




時々、彼女の事を思い出すと、海や舞ちゃん、様々な女性の顔が頭に浮かんだ。




だが、使命を果たすまでは、俺はこの戦いから、降りるわけにはいかない。




「クォーン」




「あ、おはよう!」




アドニスより、早く起きた獅子丸が例の如く、お気に入りのタオルを咥え、その大きな顔を甘えて擦り付けてきた。




「よしよし、獅子丸!」




俺は無邪気に甘えては嬉しそうに尾を振る彼がとても愛しく感じ、優しく頭を撫でた。




「お~す、優、獅子丸おはよう~」




アドニスは昨日、何かの議会?の様なものに呼ばれ、まだ眠たそうだ。




一緒に訓練前、朝食場に向かうと、彼はいつもとは違い、メニューを真剣に見てはブツブツと言い、何かを計算している様な感じだった。




まぁ、食べる量は例の如く常人の10倍程だったが。。




「アドニス、どうかしたの? メニュー、凄く考えてた様だけど?」




俺は不思議に思い、彼に話し掛けた。




「う? あぁ、いや、何でもねぇよ、ハハハ!」




いつも通りに陽気に笑う彼を見て、何だ、考えすぎか、と自分も、朝食を2人分近く食べた。




この頃、アドニスの様になりたくて、食べる量を意識して増やしていた。




「あ、そう言えば、オイラ、今日から、任務の関係で、しばらく、部屋開けるから、獅子丸の世話頼んで良いか、優?」





「あ、うん!分かったよ、任せといて! でも、アドニス、絶対に無理だけはしないでね?」




「Don't worry 兄弟! ハハハ!」




彼はいつもの様に気さくに笑い、俺達は手と手を交わした。




「優。 ありがとう。。」




「ん?何、アドニス?」




その時、彼の声がとても小さく何を言ったか、聞こえなかったので、聞き直したが、アドニスは、ナポリタンスパゲッティを夢中に食べ始めたので、俺はあえて聞かなかった。





「アドニス、優、久しぶりだな、元気だったかい?」




誰かが後ろで声を掛けてきた。




燃える様な赤髪、アランさんだった。




「あ、お久し振りです。」




俺は丁重に頭を下げた。




「優、初めて列車で会った時から、大分見違えたな、良く鍛練してる証拠だ!」




俺は憧れのアランさんに誉められ、とても嬉しく、思わず頬を赤らめた。




「アドニス、それじゃあ、夕方4時に、いつもの場所でな。」




そう言われ、アドニスは一言頷くと、スパゲッティを食べ終え、俺にしばらく元気でな、と言い、アランさんと幹部会議に向かって行った。




「優、ボサッとしてないで、任務に行くよ!」




仲間の一人、台湾出身の20歳の女性トラベラー、蘭(ラン)に言われ、午後は夜八時まで、自分も含め、今日はアイヌコタン周辺を他の黄金の騎士達、5人で交代で見張り続け、また、その他に、蘭に、様々な未来からの武器を使いこなす訓練も教えてもらい、特訓した。




「良し! 今日はここまでよ。辛苦了(シンクゥラ=お疲れ様)」




と彼に言われ、俺は覚えたてのマンダリン(台湾の中国語)でお礼を言い、また、台湾文化等を教えてもらった。




「ねぇ、優は、~国の事知ってる?」




彼女がふと呟いた。




有名な大国なので、勿論知っていると答えた。




「私はあの国の髑髏の騎士達を根絶やしにする為に黄金の騎士団に入ったの。仇がいるんだ。。」




かつて、岩瀬がそうだった様に、皆、様々な想いで、ここ、北の地に集っているんだな、そう思い、俺は、あえて詳しい理由は聞かず、しかし、ただ一言、「蘭さん、でも死んでは駄目ですよ。」と、しっかり眼を見つめ言った。




すると、彼女は「ハハハ!ブーヤオ・ダンシン・ディディ!(心配するな、弟!)」




と優しく微笑み、俺の頭をポンポンと撫でた。




「デモ、アリガトウネ、優。ダケド、ワタシにも、コレダケハ、ユズレナイと言うモノアルネ。。」




そう呟く蘭さんの横顔はとても儚げに、そして、本当に美しかった。




さて、やがて、食堂に向かい、五人ほどで夕食を食べた。




蘭さんは、乾麺と言う台湾の油そばと、マンゴーやパイナップルと南国の果物、そして、プロテインを小まめに取っていた。




「すみません、カツ丼大盛と野菜サラダ、プロテイン下さい!」




と俺も食堂で頼んだ。




すると、少し陽気そうな50歳代のおばさんが、カツ丼をあっという間に作り、「優君、最近良く食べるわね! あ、そう言えば、今日は貴方ラッキーだわ~、騎士団一の美人の蘭ちゃんと御飯食べれるなんて、オホホホ!」




と口に手を当て笑った。




俺は、あまり意識してはいけないと思ったが、逆に挙動不審になった。




「ドシタ、優? タベナイノカ?」




「あ、いや、別にその、あ!」




俺はつい、カツを一切れズボンにこぼしてしまった。




こっ恥ずかしく、あたふたしていると、蘭は、落ち着けと言い、丁寧にティッシュで服を拭いてくれた。




そして、乾麺を少し俺の皿に盛ってニッコリと微笑んでくれた。




「ニーシー、ウォーダ ディディ! ハハハ!(あんたは私の弟だ!)」




と言い頭をポンポンと小さな白い手で撫でてくれた。




俺の顔は紅くなり、周りの先輩たちはクスクスと笑っていた。




「蘭、また一人ファンが増えちまったな、ハハハ!」




「You are very happy now right??」




など言われ、俺は答えず、急いでカツ丼を平らげた。




そんな俺を蘭さんは、クスッと笑い、また頭を優しく撫でてくれた。




俺は食堂を離れるまで、終始、赤面していた、、と思う。




さて、そんな、のどかな時間も、あっという間に過ぎ、皆でそれぞれの寝室に向かった。




「ディディ、晩安(ワンアン=おやすみなさい)」




「晩安、蘭さん。」




俺は何だか名残惜しくて、蘭さんが部屋に戻っていくのを見つめていた。




そうか、今夜は満月か、、




夜空に浮かぶ、その光がとても綺麗に感じる。




そして、俺はそろそろ部屋に帰ろうとした時!




(え!?)




「蘭、、待たせたな。」




何と、、




任務に向かってる筈のアドニスが、現れたのだ。





俺は2人の話す様子を見て、直ぐに分かった。。その関係を。。




そして、自分がどんなに黒い人間なのかも。。




「アドニス、生きて必ずモドテキテ。」




「あぁ。勿論だ。」




「愛してる、アドニス。我愛你(ウォーアイニー)」




「愛してるよ、蘭。Love You too..」




二人が口づけを交わす姿は、満月と重なり、余りに美し過ぎた。。




アドニスの金髪が夜空に光り、正に金色(こんじき)の獅子を彷彿させた。




強さ、美しさ、愛、カリスマ性、、




彼は俺達、凡人にはない、全てを持ち合わせていた。。




その光景を見て俺は自分でも気付かぬ内に泣いていた。




そして、それは十分だった。




俺を変えてしまうには。。











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4件


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R太郎

2023年10月30日

y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)



y.kato-channel

2023年10月30日

本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?


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星になった彼等。 @rocky4250

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