第9話

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星になった彼等

「星になった彼等」




第8話




「再会~未来へ」




どの位、昔の事を考えていただろう。




気付けば、あれだけ人で溢れていたビーチも夕方になり、人もまばらになり、随分と気温も涼しくなった。




私は史也と龍一が水遊びから帰ってくるのを待っていた。




(随分と遅いな。。)




私は心配になり、ビーチの方へ足を運んだ。




すると、龍一が血相を変えて走ってきた。




「里美、史也が少し目を放した隙にどっか行ったみたいだ!!」




「あ!」




私はサーファー達用の少し深い所に流され溺れかけてる史也を見つけた。




ライフセーバー達の制止を振り切り、私は海へと飛び込んでいった。




昔習っていた水泳の心得があったので、私は全力で史也の方へ泳ぎ、辿り着くと史也を抱き締めた。




「ママー、怖かったよー!!」




私の顔を見て安堵したのか、史也は口に水を含みながら泣き出した。




「もう大丈夫よ、怖かったね、史ちゃん。」




私は史也を抱えて岸に戻ろうとした。




だが、波は思ったより強く、息子を抱えながらの状態では、上手く泳げず、気付けば、どんどんと岸から遠ざかって行き、海水に飲み込まれる様に沈んだ。




(嫌だ、絶対に嫌だ!! 私だけなら、まだしも、史名に続いて、史也まで死なせてしまうなんて、どうか神様、罪深い私の命はもう良いです。ですが、どうか、この子の、史也の命だけは助けて下さい。。。)




私は朦朧とする意識の中で祈った。




レスキュー隊員達も私達の場所が分からないだろう、これだけ水の中に沈めば。




(史名、ごめん、私、貴方との約束また守れなかったよ、、)




私は後悔し、海水で息も苦しくなり死を覚悟したその瞬間、、




私と史也は気付けば、あの日の中庭にいた。辺り一面が銀色に光っている。




「ねぇ、ママ、ここはどこ??」




息子は辺りをキョロキョロと見回している。




すると、木々の方から誰か人影が見えた。




「え!?」




私は驚きを隠せなかった。




「史名、ハナ!?」




彼等はニコニコと温かく私達を見つめた。




「史名、私、まだちゃんと伝えれてなかったね、あの日々、ごめん、ごめんね、史名!」




私は彼を抱き締めながら必死に色んな事を伝えようとした。




「里美さん、僕は幸せだったよ、本当に。 ありがとう。どうか、これからは今を、未来へ続く幸せな道を生きて。」




「ねぇ、ママ、この人誰??」




「あなたの本当のお父さ、、」




私が言い終わらない内に史名は、そっと私の口に手を当て、史也に言った。




「史也、お母さんを頼んだぞ。」




そう言い、彼は史也の頭を優しくポンポンと軽く叩いた。




「じゃあ、里美さん、元気でね。」




「待って! 私、まだ、ここにいたい!」




「里美さん、未来へ進んで。龍一さんと史也君と幸せになってね。」




そう言い、彼は再度、優しくニッコリと微笑んだ。




その瞬間、辺りに眩しい位に銀色の光が更に強く光り、私と史也は急に強い眠気を感じ、そのまま眠りについた。




どれ位、経っただろうか。。




瞳を開けると私達は浜辺に引き上げられていた。




「あれ、生きてる、私達。。」




周囲を見渡すとレスキュー隊員達が私達に意識確認をしてきた。




私達の元に、すぐに龍一が駆けつけ、ボロボロと子供の様に安堵の涙をこぼしていた。




「馬鹿野郎!!良かった、本当に良かった、お前達失っちまったらって思ったじゃねぇか!! 助かって本当に良かった!」




彼の涙が私の顔に溢れ落ち、私は龍一をギュッと抱き締めた。




「ごめんなさい、あなた、心配させて。」




「良かった、本当に本当に、、ウゥ。。」




私達は家族三人で生のありがたみを噛み締める様に抱き締め合った。




レスキュー隊員の方に私は尋ねた。




「助けて頂き、本当に本当にありがとうございます。ですが、何故私達が沈んでいた位置が分かったんですか??」




すると、一人の初老の男性が私に話し掛けてきた。




「あんたら、良く無事だったな~、良かったな~、本当に。何かどこからきたのか、金色の犬連れた茶色い髪した男の子が、あんたらの位置をレスキュー隊員に知らせてたんだわ、でも、気付くと、いつの間にか消えていて、振り返ったら、砂に足跡も何も残ってなかったんだわ~、」




続けて男性は話した。




「盆と彼岸は不思議な事があるもんじゃな~」




気付くと私の右手には勿忘草の花びらが握られていた。




(史名、、)




レスキュー隊員達に気をつける様にと言われ、私達はビーチを後にしようとした。




夕陽が海へと沈んで行く、砂のお城が崩れていく。 あれだけ賑わいで溢れていたビーチも人がまばらになっていく。




夏ももう終わりだ。




帰る前に私はもう一度だけ海を眺めた。




「里美、帰ろうか。」




「うん。」




私達がビーチを後にしようとした時、、




(元気でね里美さん。)




私は思わず再度、振り返った。




海はただただ静かに波打っていた。




史名、ありがとう。死して尚、私達を守ってくれたんだね。


私は貴方を忘れません。そして、もう、これからは私、振り返らず、前へ未来へ、精一杯生きるよ。 そして、咲かせてみせる、貴方がくれた史也と言う名の大輪の花を。ありがとう、ありがとう、史名。



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