漫才3「進歩」

幌井 洲野

漫才「進歩」

<これは漫才台本です>

セリフの掛け合いをお楽しみください。


【進歩】


二人 「どうも~ アヤミとアズサでアヤアズです~。よろしくお願いします~」

アズサ「アヤミ、あんた、アヤ…」

アヤミ「おっと、もう言わさへんで。今日はウチが逆に聞いたる。アズサ、あんた、アズサやんな?」

アズサ「ちゃうで」

アヤミ「う、そう来たか。ちゃうかったら、あんた誰やねん?」

アズサ「ウチ、まえ幌井さんのスピンアウトの小説で、アヤミ、あんた、ウチの本名、カワズルアズサいうの、それちゃうで言うて、『あんたの名前は、川のいちずに流れるところに生えとる・あずさの木ぃ』言うてたやんか。ややこしことばかり言うて」

アヤミ「あ、言うてたけど、あれは幌井さんの小説の中のセリフやで。あんたはアズサやろ?」

アズサ「ちゃう」

アヤミ「じゃ、誰やねん」

アズサ「ウチな、さっき、裏の神社の階段の上から」

アヤミ「まさか、階段から落ちて誰かとぶつかって、人格入れ替わったとかのベタな話ちゃうやろな?」

アズサ「なに言うてんねん。階段の上から周り眺めたら、ええ景色やなー、て」

アヤミ「それと、あんたがアズサちゃうのと、どういう関係があるねん」

アズサ「ないよ、関係なんか」

アヤミ「ほなら、何がちゃうんや。あんた、アズサやろ? ツッコんだウチが心配になってきた」

アズサ「アヤミ、まだ修業が足らんな」

アヤミ「心配したったのに、それ言うか」

アズサ「アヤミ、よう聞きや。ウチはな、アズサやのうて、アズサ2.0や」

アヤミ「アズサ、ついに頭おかしなったか? どこがアズサ2.0やねん。どっから見てもただのカワズルアズサやんか」

アズサ「アヤミちゃん、よう見て。ウチ、昨日までとどっか違うとこあるやろ?」

アヤミ「変わっとらんやろ。待って、よく見るな。えーと、いっつも変わらんセミロング、毎年おんなし色のリップ、同じ形の三つ持っとるから、いっつもおんなしにしか見えんブラウス、柄の種類が二つで着回しとるミディアムスカート、しゃれっ気のない黒のぺたんこパンプス、何も変わっとらん」

アズサ「そこや。アズサ2.0は、そう言われても、怒らん、ワ・タ・シ。変わったやんか!」

アヤミ「おおこわ。うっかりつられてあんたにケンカ売るとこだったわ」

アズサ「十分ケンカ売っとったで」

アヤミ「ウチら仲ええから、アズサ、ウチにケンカ売られても買わへんやろ?」

アズサ「うん、もちろん、仲ええアヤミやから、ケンカ売られても買わへんよ。いかつい人に転売するわ」

アヤミ「それもアズサ2.0か」

アズサ「いや、それは、対話型生成アズサやな。また別のもんや」

アヤミ「ホンマ、アズサ、すっかり変わってしもた。確かにあんた、アズサやないわ。ウチどうしょう?」

アズサ「ほなら、こうしいひん? アヤミも変わって、今までのアヤミやなくなったらええやん。おあいこや」

アヤミ「ウチ、変わるて、どう変わったらええのん?」

アズサ「うーん、例えば、ボケとツッコミ変えるとか。名前ごと」

アヤミ「え、ウチがアズサ2.0になるん?」

アズサ「そやそや。でウチがアヤミ0.9になる」

アヤミ「なんや、ウチ、ちょっと古うなっとるやんか」

アズサ「だいじょぶや。アヤミ0.1の分は、転売して小遣いにする」

アヤミ「え、それ、いくらで売れるん?」

アズサ「うーん、アヤミの一割やからな、500円ぐらいかな」

アヤミ「ウチ、全体で5,000円の女やったんか」

アズサ「ええやん、売れた500円で、回転焼き買うたるから、一緒に食べよ」

アヤミ「結局、2.0になっても対話型生成になっても、戻るんは回転焼きに戻るんか。アズサ、全然変わっとらんで」

アズサ「ええやんか、世の中、回転焼きで回っとるんやから」

アヤミ「ええ加減にせい」

二人 「どうも失礼しました~」

(了)

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漫才3「進歩」 幌井 洲野 @horoi_suno

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