わからないままで、進んでいく
純野 遥
第1話『幸せとは何か、ふと考える』
就職活動が終わり、大学最後の夏が始まった。
晴れて内定をもらったのは6月。焦りや不安からは解放されたが、代わりにぽっかりと空いた時間が残った。
何をすればいいのか、何がしたいのか、正直よくわからない。
「幸せって、何なんだろうな」
そんな言葉が、頭の中をよぎる。
哲学じみた問いだと思いながらも、時々ふと考えてしまう。
それは、誰かに言われたからでも、何か不満があるからでもなく、単に余白ができたからこそ浮かんできた問いだった。
幸せとは、将来の安定か。人とのつながりか。やりがいや達成感か。
どれもそれっぽくて、どれも決定打ではない。
そもそも、「幸せ」ってそんなに必要なのか。
生きていれば、嬉しいこともあるし、つらいこともある。
それだけじゃだめなのかと、少しひねくれた見方もしてしまう。
高校の友人たちはそれぞれ違う道を選んだ。大学に行かず働いているやつ、留学に向けて準備しているやつ、実家の家業を継いだやつ。
SNSでたまに見かけるその姿は、どこか自分より大人びて見える。
けれど、彼らもまた、何かを考えながら日々を過ごしているのかもしれない。
表には見えなくても、誰もが「これでいいのか」と思いながら生きている。
そう考えたら、少しだけ肩の力が抜けた。
幸せの定義は人それぞれ、という言葉は便利だけど、結局答えを放棄している気もする。
それでも今は、「わからないままでいる」ことを許してもいいのかもしれない。
少なくとも、自分にはまだ時間があるのだから。
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