メスオークから、勇者の恋人へ~壮絶不幸の超不細工少女。異世界で愛されキャラに。異世界召喚されて勇者の抱き枕役を務める~

喰寝丸太

第1話 召喚

「メスオークはどこかな?」

「鍵閉まってるのはここだけっしょ」

「きゃはは、汚水を上からぶっかけちゃう?」

「いいね、それうける」


 私は善地ぜんち想子そうこ、高校1年生の女子。

 あだ名はメスオークと全恥オールシェイム

 女生徒の虐めっ子に追われて、トイレに隠れてる。

 絶体絶命。

 助けて神様。


 私が何をしたって言うの。

 確かに私は嫌悪感を催すブタ顔。

 太って醜い体。

 胴長短足。

 髪の毛は剛毛。

 それが何?


 私、悪くない。

 誰にも意地悪したこともないのに。

 ファンタジーやゲームのオークみたいに人間を襲ったりしない。


 鼻の曲がりそうな臭い水が降って来た。

 びしょぬれ。

 これでもかとトイレの雑巾が投げ込まれる。


「はははは」

「きゃはは」

「これは笑うしかないっしょ」

「だよね」

「メスオーク、金を持ってきな。じゃね」


 着替えないや。

 今日はもう帰るしかない。

 たぶん明日、先生に怒られるけど、今更ね。

 先生も虐めは把握してるはず、それなのに助けてくれないんだから。


 可愛くないって、そんなに罪?

 勉強だけはと頑張っているのがもムカつくのかな。

 私だって将来の夢がある。


 本当はアイドルになりたかったの。

 でも小学生の時に鏡を見て諦めた。

 私の虐められ歴は長い。

 幼稚園から始まって、高校1年生の現在まで絶え間なく続いてる。

 容姿をけなされ続ければ、さすがに私も小学生で悟った。

 アイドルは無理って。


 なので、今はアイドルのサポートする何かの仕事をしたいと思ってる。

 大手の芸能事務所に入るには学歴も大事。

 良い大学に入って、理想とする仕事をしたい。


「おい、メスオークがいるぞ」

「石を投げろ」

「へへっ」


 小学生が石を投げながら、追い掛けて来る。


「やめて、痛い! 私は人間なのよ!」


 逃げるしかできない。


 何とか逃げ切れた。

 ずぶぬれの服が気持ち悪い。

 帰ったら、制服をクリーニングに出さないと。

 染みが残ったら、買い換えないといけないかなぁ

 しばらく、もやし料理と、パンの耳料理ね。

 今月もギリギリ生活。

 顔に包帯巻いて、アルバイトしないと。


「はぁ、ゆううつ」


 自宅に入り、着替えて、シャワーを浴びる。

 臭いのが抜けない。


「はぁ、もう良いかな……両親の所に行きたい」


 中学生の時に交通事故で亡くなった机の上に置いてある両親の写真に話し掛ける。


「命を捨てたいのなら、わらわが使ってやろう」


 鈴をイメージさせるような綺麗な女性の声が聞こえた。

 幽霊かな?

 憑りつかれて、死ぬのも悪くないかな。


「苦しくない?」

「それはそち次第だ」


 もうどうにでもなれ。


「やる」

「しかし、魂の傷が酷い。心が痛くないのか。痛々しいのう。支度金代わりにわらわが癒してやろう」


 私は柔らかい光に包まれた。


「暖かい。春の陽だまりにいるよう」


 どぶみたいな臭いも抜けている。


「ふむ、なぜか嫌悪の呪いが掛かっておった。呪いは解けている。安心するが良い」


 えっ、呪い?

 鏡を見るけど、顔に変化はない。


「がっかり」

「落胆するでない。わらわの未来予知にはこう出ておる。波乱はありだが、幸せになれる。ハッピーエンドと言う奴じゃ。では、仕事を頼む」


 ちょっと、なにすればいいの?

 なにをすれば、パッピーエンドなの?

 教えてよ。


 フラッシュみたいな光で眩しいと思ったら、石のタイルが敷き詰められた床の上に立っていた。

 私を何人もで囲んでいて、観察している。


「あの、可愛くなくて、すみません」


 日本語ではない言葉が口から出る。

 ここって別の世界なのかな。

 召喚されたの?


「ドワーフの女性とそんなに変わりはない、普通だよ。ここにいる貴族のゴブリン娘に比べたら100倍はまし」


 豪華な鎧を着けて、背中に大きな剣を背負った物凄いイケメンの男性がそう言ってくれた。

 男性は金髪の金色の目。

 私を見る目つきは優しい。


 この人がどういう人か分からないけど。

 リップサービスでも嬉しい。

 もうすでに、ハッピーエンド気分。

 私の死んでいた心が生き返った気がする。


 えっと、貴族のゴブリン娘って誰?

 疑問に思って、辺りを見回すけど、美人ばかり。

 そんな人はひとりもいない。

 美醜逆転の世界?


「なに、あのオーク娘。勇者様と会話しないでほしい。勇者様が汚れてしまう」

「おぞましい。ああ、嫌ね。あんなに醜くて、生きてる価値があるのかしら」

「勇者様だけを見ることに致しましょう」


 美醜逆転ではないのね。


「美しい。これは神のレベルよ。はぁ、ずっと見ていたい」


 絶世の美女が私のそばに来て言った。

 美しいって私のこと?

 間違いよね。


 彼女は銀髪で銀色の目。

 光沢のある純白の衣を纏って、金色の糸の刺繍が施されている。

 まるで、光で包まれているよう。


「あの、あなたこそ、女神様に見えるんだけど」

「いいえ、あなたの方が美しい。ここには腐ったアンデッドみたいな人間が多過ぎです。あなたを見て大いに癒されました」


 価値観が判らない。

 どういう基準なの。


「自己紹介は部屋に行ってからにしよう。俺は勇者のティガー。ついて来い」

「はい」


 金髪の金色の目をしたイケメンのティガーさんは、勇者なのね。

 大人しくついて行く。

 普通だよと言ってくれて嬉しかった。

 信用しても良いと思う。


 部屋に入ると、ベッドが4つ。

 この部屋に入ったのは私を入れて、5人。

 ティガーさんと、私を美しいと言った絶世の美女と、眼鏡を掛けた賢そうな紺色の髪の女性、それと茶髪に白髪が混じっている気難しそうなお爺さん。


「はぁ、まだ胃がムカムカする。神託が降りたから仕方ないけど、とうぶんこんなのは勘弁だ」


 辟易した感じで、ティガーさんが吐き捨てるように言った。


「ええ、私も汚物を見て汚れた気分ですわ。あなたお名前は? あなたとお友達になりたいんですけど。わたくしは聖女のメローネですわ」


 汚物は私ではないよね

 メローネさんの私を見る目は慈愛に満ちている気がする。


「ソウコだけど。私で良いのなら友達になりましょう」


 メローネさんに手をぎゅっと握られた。


「なんて素晴らしいの。名前も美しいのね」


 握られた手の力が強くて、痛い。


「そっちのふたりは、眼鏡を掛けている女性がダーリエ。爺はヴォルフだ」

「魔道具教授のダーリエ。無能は嫌悪。勤勉無能は最悪」

「賢者ヴォルフだ。さて、貴様はどんな真理を内包しているかね。一滴残らず絞り出してやろう」


 ふたりの私を見る目は探っている感じ。

 でも嫌悪感は持ってない気がする。


「ようこそ、勇者パーティへ。最後のパーツであり、要のメンバー」


 どうやら、私の仕事は勇者パーティの一員みたい。

 嫌っている感じの人はいないから、上手くやっていけそう。

 メローネさんの私に対する好き好きオーラはちょっと怖いけど、嫌われるよりまし。

――――――――――――――――――――――――

あとがき

 恋愛ジャンルは3作目ですかね。

 上達してたら、嬉しいなと思います。

 作品の幅を広げるために書いたのですけど、どうなんでしょう。

 主戦場はファンタジーなので、ヒロインの恋愛関係の色々とかの表現が向上したら、良いなと願ってます。


 全24話予定です。

 心が折れなければ、完結すると思います。

 この作品は『異世界で俺だけがチートプログラマー』のスピンオフです。

 本編にソウコが出るのは、かなり先ですが。

 本編を読む必要は全くありません。

 本編はジャンルも題材も全く違いますから、読者層的にはほとんど被らないと思ってます。


 では本作をお楽しみ下さい。

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