第5話

とはいえ、かなりの人混みで中々購買までたどり着けず、神崎と一緒に人混みを掻き分けて進む







それが私の中ではかなり苦痛であることを、神崎は知らない









同じ学校とはいえ、大学となれば人数が膨大すぎて知らない顔がほとんどだ







ーーー・・・気持ち悪い








僅かに指先が震えてくるのが分かる









この症状が出始めると厄介だ、、、






子どもの頃の事故のトラウマで、"閉所恐怖症"と医師に言われてから、公共の乗り物や人混みがとても苦手になってしまった








少しの時間なら耐えられるけど、ここは人が多すぎたっ








ーーー・・・限界だっ、、







神崎の手を振り払って走り出そうとした時だった







「くっそ、、中々進まねぇなぁ・・・大丈夫?澤田さんっ、、」






ちょうどこちらを振り返った神崎と目が合った






神崎は私の顔を見て、一瞬目を見開いて次に掴んでいる私の腕に視線を落とす







ーーー・・・お願い、止まって






私の願いも虚しく、微かに震える指先






それに気付いたのかどうか分からないけど、、神崎は何も言うことなく私から視線を逸らすと、、







「悠雅〜っ!!やっぱ俺、マック行くわ!!」






っと、先程の悠雅くんと梨乃の方を見てまた大声で叫んだ神崎、、






その声に、周りにいた人たちがサッと離れて出口までの道を空けてくれた






ーー・・・恐るべし、神崎陽斗







「ごめん、澤田さん・・・マックでもいい?ってか俺もう完全にいま、てりやきバーガーしか受け付けねぇ口してるわ。ってことで強制ね」





そう言って私をこの場から連れ出してくれた神崎に、心から感謝した







学食を出る頃にはすっかり震えもなくなり、額に滲み出ていた、嫌な汗も引いてきていた

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