わすれもの 📯

上月くるを

わすれもの 📯



 姿見にひねる背中や白木槿

 ヤクルトの置配箱や鳳仙花


 駅近のパークの「あき」や秋に入る

 秋暁のジャングルジムは動かずに


 秋風や就業前のビルの森

 犬連れで交す挨拶秋海棠


 ひと息に上る階段駅の秋

 看板のかずの生業秋の雲


 いつもゐる鴉とすずめ今朝の秋

 新涼や異端のわれも生き延びて


 秋色の街にさがせる忘れもの

 赤カンナ朝な夕なの宙に咲く


 山を背に高層ならぶ草ひばり

 露草の瑠璃をこぼせる裏通り


 木犀や門の表札くづし文字

 海に行く川に逆らふ秋帽子


 この空のつづきの空や秋桜

 秋日照る三州瓦のさざ波に


 母よりも叔母に懐ける猫じやらし

 止まらせる鳥語さかんや梅もどき




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