第22話:筋肉幕府、京に入る

今川義元は、「筋肉士官学校」の設立、息子・氏真の「筋肉文化人」としての覚醒、そして「鞠武衆」の誕生という、盤石な基盤を築き上げた。彼の目指す「筋肉による天下泰平」は、最早ただの夢物語ではなかった。時が満ちたことを悟った義元は、ついに天下の都、京への上洛を命じた。


清洲城を出立した今川軍の行軍は、これまでの戦国大名のそれとは一線を画していた。その先頭には、隆起した胸板を誇示する今川義元が堂々と馬を進める。その後ろには、竹中半兵衛と黒田官兵衛という二人の天才軍師が、日々の鍛錬で引き締まった体躯を揺らしながら続く。彼らの姿は、まさに「知恵と筋肉の融合」を体現していた。


道中、今川軍が通る村や城では、人々がその異様な光景に目を奪われた。兵士たちは皆、鎧の下に鍛え抜かれた筋肉を宿し、その行軍は、まるで巨大な筋肉の奔流が大地を移動しているかのようだった。しかし、彼らの顔には疲労の色はなく、規律正しい動きは、民に不必要な恐怖を与えなかった。


「殿の仰せの通り、筋肉は人を魅了するものでございますな」


半兵衛が、隣を進む官兵衛に静かに語りかけた。官兵衛もまた、深く頷く。


「まことに。刀槍を振るわずとも、その威容だけで相手を威圧する。これこそが、殿の仰る『筋肉外交』の真髄か」


今川軍は、進軍する各地で「筋肉外交」を繰り広げた。抵抗する城があれば、義元は自ら城門の前に進み出て、その筋肉を惜しみなく披露する。


「おれにつけば、鍛えてやろう! 筋肉は裏切らぬ! この肉体こそが、貴様らの領民を守り、豊かにする証である!」


義元のド迫力の口上と、常識を超えた肉体を目の当たりにした城兵たちは、瞬く間に戦意を喪失した。「化け物だ!」「こんな化け物には勝てぬ!」と、次々と武器を捨てて城門を開いた。彼らの心には、「武力で抗うよりも、この異形の強者に従う方が賢明だ」という、新しい価値観が芽生えていた。


降伏した城では、今川兵が民衆に「地面に手をついて身を押し上げる鍛錬」や「膝を曲げて腰を落とす鍛錬」、そして「豆を煮詰めた栄養の汁」の製法を丁寧に教え始めた。最初は困惑していた民も、実際に体が軽くなるのを実感すると、義元への「畏怖」が「感謝」へと「感情を分裂」させていった。今川軍は、戦わずして、各地に「筋肉の福音」を広げていったのだ。


京への道は、想像以上に順調だった。


三好三人衆や松永久秀といった畿内の有力者たちも、義元の「筋肉の噂」と、実際に兵を動かさない「無血の平定」を目の当たりにし、戦々恐々としていた。義元は、彼らの内紛を巧みに突き、二兵衛の緻密な調略を加えて、ほとんど武力を用いることなく、彼らを追い詰めていった。


そして、ついに。


「殿! 京の都は、目前にございます!」


伝令の声に、義元は静かに頷いた。彼の瞳には、「天下泰平を築く」という確固たる決意が輝いている。


京の都の門が見える。戦国乱世の荒波に揉まれ、疲弊しきっていた日本の中心が、今、「筋肉覇王」今川義元の前に、その姿を現した。


1565年、今川義元は足利義昭を奉じて京に入り、室町幕府を再興した。しかし、その実態は、「筋肉」を掲げる今川幕府に他ならなかった。京の都には、鍛え抜かれた肉体を誇る今川兵士たちの姿が溢れ、その威容は、都の人々に新たな時代の到来を告げていた。義元は、征夷大将軍に就任し、名実ともに「天下人」としての地位を確立した。


京の町は、今川軍の入京によって、それまでの荒廃した姿から一変した。今川兵士たちは、略奪や狼藉を働くことなく、むしろ積極的に町の復興に協力した。彼らは、「筋肉は、平和な世を築くためにある」という義元の教えを忠実に守り、崩れた家屋の修復や、荒れた道の整備に尽力した。


都の人々は、最初は今川軍の異様な筋肉に戸惑いを覚えたが、彼らの規律正しさ、そして復興への真摯な姿勢に、次第に信頼を寄せるようになった。子供たちは、兵士たちの鍛え抜かれた肉体を見て目を輝かせ、兵士たちもまた、子供たちに「地面に手をついて身を押し上げる鍛錬」や「膝を曲げて腰を落とす鍛錬」を教え、笑顔が溢れるようになった。


義元は、京の都を拠点に、本格的な天下泰平の実現に向けて動き出した。彼の「筋肉と知恵」を融合させた統治は、旧来の常識を打ち破り、日本に新たな秩序をもたらすことになる。京の都は、今、「筋肉幕府」の誕生という、歴史的な瞬間に立ち会っていた。

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