第21話 新しい学期、新しい二人

 夏休みが終わり、新しい2学期が始まった。


 僕の心は、以前とは比べ物にならないほど軽やかだった。

 隣には、僕の恋人になった千栞ちおりがいる。彼女の存在が、僕の毎日を鮮やかに彩ってくれる。


 登校初日、教室に入った僕は、クラスメイトたちのざわめきに気づいた。彼らの視線は、一人の女子生徒に集中している。


 そこにいたのは、伊達メガネを外した千栞だった。


 夏休み中に一度見ていたはずなのに、改めてその姿を目にすると、僕でさえ息を呑むほどの美しさだった。

 艶やかな黒髪はそのままに、透き通るような白い肌、そして吸い込まれるような大きな瞳が、何の遮りもなく露わになっている。制服を身につけているのに、まるでモデルのようなオーラを放っている。


「え、あれって橘さん……?」

「うそだろ、別人じゃん!」

「めちゃくちゃ可愛いんだけど!」


 クラスメイトたちの驚きと感嘆の声が、あちこちから聞こえてくる。


 千栞は、そんな視線にも臆することなく、以前よりもずっと明るい笑顔で、クラスメイトの挨拶に答えていた。

 彼女の周りには、自然と人が集まり、まるで太陽のようにクラスの中心に溶け込んでいく。僕の知る、あの大人しくて、いつも隅で本を読んでいた千栞の姿は、もうそこにはなかった。


「優斗くん、おはよう!」


 千栞が、僕の席まで歩み寄ってきて、にこりと微笑んだ。


「おはよう、千栞。……やっぱり、メガネない方が可愛いな」


 僕が素直な感想を言うと、千栞は少し照れたように頬を染めた。


「えへへ、ありがとう。優斗くんのおかげだよ」


 僕自身も、千栞の勧めで髪を切り、以前よりもずっと清潔感のあるスタイルになっていた。瑞希に言われるがままに美容院へ行った時とは違い、今回は千栞が「優斗くん、この髪型、絶対似合うと思う!」と選んでくれたのだ。


 元々整っている容姿が、新しい髪型と、そして何よりも自信を手に入れたことで、さらに際立つようになったと、瑞希も褒めてくれた。


 僕と千栞は、もう誰の目も気にすることなく、休み時間も放課後も、自然と隣にいることが当たり前になっていた。

 廊下を歩く時も、図書室で勉強する時も、僕たちはいつも一緒だ。


 クラスメイトからの視線は、もはや好奇や嘲笑ではなく、尊敬と、そして少しの羨望が混じったものへと変わっていた。

 僕たちの間には、確かな信頼と愛情が育まれており、それは周囲にも伝わっているようだった。

 新しい学期、僕たちは新しい自分として、そして恋人同士として、輝かしい高校生活を歩み始めた。

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