第5話

season2 特別


夏が終わり、秋風が気持ちよく過ごしやすい季節になってきた。


真凜先生があたしの担任になってから、あっという間に一ヶ月半が過ぎた。



初めて会った時の真凜先生は、あたしのピンチを救ってくれた事もあって、凛々しくてかっこいい女騎士のような、それでいて優しくて暖かい女神のような女性のイメージだった。


でも実際の真凜先生は、みんなに配るプリントを職員室に忘れてきたり、ちょっと抜けている所もあったり


「仕事が終わった後のビールと枝豆が最高なんだよねー」


とかちょっとオヤジっぽい事言ったりして、天然で面白い。


そして休みの日は、時々趣味のサーフィンに行ってるらしく、海が好きなあたしと共通点があって嬉しかった。


あたしは真凜先生の事を知れば知るほど親近感が湧いてきて、どんどん惹かれていった。



白浜女学院では、九月の終わりは文化祭があって、ハロウィンが近かったので、あたしのクラスは仮装喫茶をやった。


何の仮装にするか迷ってたら、仲良しの希望のぞみと花帆がメイドさんにすると言い出し


「まりんも一緒にメイド服着ようよ」


って言われたけど、他にも何人かメイド服着る子がいたし、被っててつまらないと思い、ちょっとカッコいい感じにしたくて、ミニスカポリスの衣装にした。


黒のミニスカートのワンピースは、胸元と背中に『POLICE』の文字が入っていて、黒のポリスハットを被るとそれなりに様になった。


「まりん、超カッコ良いんだけど」


「良いなぁ、あたしもミニスカポリスにすれば良かった」


希望も花帆もめっちゃ羨ましがってたので、


「じゃあ後で衣装交換してみる?」


と提案すると


「え、まじ」「着てみたい」

と喜んでた。


ミニスカポリスは真凜先生にも好評で、「カッコ可愛いじゃん」って褒めてくれた。


「実は先生も文化祭でミニスカポリスのコスプレしたんだけど、みんなに『ポリスっていうより女王様だね』って言われちゃった」


真凜先生のミニスカポリス!!

想像しただけで、倒れそう。


「それ見てみたいです。」


「見たら惚れちゃうよ」


小悪魔っぽい笑みで、手でピストル作ってポーズを決める真凜先生。セクシー過ぎます。



文化祭には、お母さんと妹のもみじが遊びに来てくれた。


お母さんは、十年前電車でおじいさんに絡まれた時に助けてくれた女子高生の事を覚えていたから、担任の真凜先生がその時の女子高生だという事を伝えた時は  


「ええっ、それ本当なの」


ってめっちゃ驚いていた。


「ねえ、何の話?」


あたしとお母さんが盛り上がっていたので、もみじも知りたがっていたから、二人で教えてあげたら


「その人かっこいいね。ヒーローみたい」


って感動して、どうしても会いたいというので、文化祭に行くのを楽しみにしていた。


真凜先生には事前に伝えていたので、お母さんともみじが来る時間帯に教室に顔出してくれた。


「永倉さん、ご無沙汰しています。」


「真凜先生!本当にあの時の方なんですね。わぁ、信じられない。こんな偶然あるんですね」


お母さんは涙ぐんで感動していた。


「私もまりんさんからイルカのキーホルダーを見せて貰った時は信じられなかったんですよ。まさかもう一度会えるなんて、夢にも思わなかったので」


「そうなんですよ。この子キーホルダーずっと大事にしていて、毎週のように外してお手入れして」


「ちょっ、やめてよお母さん、恥ずかしい」


あたしは真っ赤になった顔を隠すように、両手で頬を押さえた。


「そうだったの。そんなに大事にしてくれてたんだ」


真凜先生が微笑んでくれたけど、あたしは照れ臭くて目を合わせられなかった。


すると横でもみじがボーッと真凜先生の顔を見つめていた。


「あなたがもみじちゃんか、初めまして」


真凜先生に挨拶されて、もみじはハッとして、ペコっとお辞儀すると、あたしの腕を引っ張って少し離れた所に連れて行って、こっそりと耳元で


「くっそ美人なんですけどぉ」


と興奮気味に言った。


「でしょ!最高に素敵な先生だよ」


とあたしは自分の事褒められたような気分になって、得意げに言った。



文化祭が終わると、二学期の中間テスト。


あたしは勉強はそこそこ出来る方だし、読書家でもあるので、国語は学年トップもとった事がある。


でも英語の文法が苦手で、いつも苦戦していた。


だけどこれからはそんな事言っていられない。


だって真凜先生は英語の先生なんだから。


「分からない所があるので、教えて下さい」


あたしは真凜先生の授業の後、何度も職員室に行って質問した。


「もーしょうがないなぁ。今度はどこが分からないの?」


真凜先生は呆れた顔をしながら、いつも親切に教えてくれた。


正直、ウザいと思われてたらどうしようって考えたけど、私がちゃんと理解すると嬉しそうにキラキラした目つきになって


「そうそう、やれば出来るじゃん」


と、ノートに花丸を書いてくれた。


そんな日々が続いたおかげで、今回の英語のテストはクラスでトップ、学年三位だった。


「永倉さん、よく頑張ったね」


真凜先生が皆んなの前で褒めてくれて、あたしは照れ臭かったけど、嬉しくて嬉しくて、学校が楽しくてたまらなかった。

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