第15話 強制配信

 一つ階層を降りては、モンスターハウスを潰す、一つ階層を降りてはモンスターハウスを潰す。


 そんな行動をとって百五層。

 小ボスを倒して下に降りた時にそれは訪れた。


「俺たちゃ悪鬼羅刹はよ、全員人化系スキルの集まりなんだよ! この系統はそのスキルに見た目や性格引っ張られるから割と敬遠されててな! そういう奴らの保護も兼ねてるんだわ!」

「へぇ、あれ? なんか緊急で通信入ってます」


 ちょっとした会話を黒鬼としてる時に、甲高い警告音の様な音でドローンの端末が鳴り始めた。


「何かありました?」

「あ、どうもアヤです。 大井さん配信して無いですよね? 配信お願いして良いですか?」


「あー、でも黒鬼さんが配信したく無いって言ってて……」

「白梅さんからの要請なんです」

 こちらが全部言い切る前に被せる様に言ってきた。


 どうしましょ? という表情で黒鬼を見る。

「しゃーねぇ、アイツねちっこいからよ、一回恨まれるとめんどくせぇしな!」


 気のせいかな、手遅れな気がする。

「分かりました! 配信開始します」

「よろしくお願いします」


 という事で配信を開始した。


〈……何で、あんたがそこに居るわけ?〉


「協力するって約束したじゃねぇか! 俺は約束は守ることにしてる!」


〈ふーん、黒が今攻略に詰まってる支笏湖ダンジョンの攻略に使えるかもって思ったんじゃなくて?〉


「いや、まぁ、それもあるっちゃぁ、あるが……」

「あ、そういう打算は気にしないですよ、むしろ何もない方が不気味です」

 フォロー、フォロー、実際レベル上がって助かってるし。


〈それで、今何階層にいるの?〉


「百五階層越えたところですね」


〈あら、随分ゆっくりね〉


「俺だって考えているんだ、初対面だしな! 小ボス倒させながらどこまでなら大丈夫か」見ながら降りてんだよ」


〈意外に慎重派なのね〉


「元来俺は誰か守って戦うのは得意じゃないからな、安全マージンって奴はとっていかないとな!」

 あれは安全マージン取ってたんだ!

 全然気づかなかった!


〈で、今何レベルなの?〉


「二十九レベルですね」


〈スケルトン達は?〉


「何もいじらせてねぇぞ! カンストさせたらなんかあるんだろ?」


〈カンストさせた人が居ないから分からないけど、他のクリエイト系にあるのにネクロマンサーだけ無いって事は無いと思うわ、興味深いからカンストまではそのままにしておいて〉


「それだけか? あともう無いなら俺たちはもう行くぞ」


〈あら、ダメよこっちに一回戻って来て〉


「は? 何言ってるんだ?」


〈私、今清田ダンジョンまで来てるのよ、同行するから一回戻って来て〉


 二人で顔を見合わせた。

「しゃーねぇ、戻るか」

「そうですね」



「よくも抜け駆けしてくれたわね」

「別にお前が最初とか約束してねぇだろ」


「そこは空気読むべきじゃ無い?」

「俺がそんな難しいこと出来ねぇの知ってるだろ」


 美女と野獣ってこういう二人の事いうんだろうな。


 真っ白な長い銀髪に綺麗な顔立ちの絶世の美女が立っていた。

 雪女ってこんな感じなのかな?

 格好も真っ白な和服だし。


「初めまして、大井です」

 こっちに視線が向いたタイミングで挨拶は済ませておく。

 礼儀大事。


「白梅よ、スキルは『絶対零度』」

 イメージ通り過ぎた!


「面白いもので、個人のパーソナルスキルって極めれば極めるほど、その特徴が外見や性格に影響を及ぼすのよ」

 え! 心読まれた!?


「まぁ、俺ら人化系ほどじゃねぇけどな」


「あの、それで一緒にダンジョン行くって事はまた一層からやり直しですか?」

「そんな面倒な事しないわ」

 胸元から、何か金属製のカードらしき物を取り出した。


「よし、これで貴方の突破階層情報をコピーしたわ、さ、いきましょ百五階層まで戻るわよ」

「ひゃー金持ちはやる事が違うねぇ、そんなバカ高いアイテム平然と使うとか」


「私の一分は貴方の一年よ時間の価値が違うの」

 そこんとこヨロシク! とか言いそうな雰囲気醸し出してるな!



 早速戻って攻略を始める事になったんだけど。

 相変わらず俺は小脇に抱えられて、走り抜ける。


 そして、その黒鬼の速さに和服を乱す事なく付いてくる白梅。

 なんか次元違い過ぎてヤバいな。


「この辺からR6のロード系ね」

「そうだな、まだ下いくか?」

「そうね、もう少し下がりましょう」


 俺の意見とかは無いよね、うん、知ってた。


「おい、キング系通り越して、エンペラー系まで来ちまったが、まだ下がるのか?」

 現在二百八十層。


「ええ勿論」


「R9のアウェイク超えて、既にR10のオリジンに入ったけど」

 四百五十層。

「下がるわよ」


「ついに、進化種族のレッドキャップになったぞ」

「そうねそろそろ良いかしらね」

 五百五十層。


 どう考えても俺が居ていい階層じゃないんだけど……。



【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はGAウェブ小説コンテスト参加作品です。


 コンテストでは皆さんの応援によるランキングを基準とした読者選考というのがあります。


 この作品を『おもしろかった!』『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は、フォローや、↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して応援して下さると作者がとても喜びます。

 よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る