第13話 怖いお兄さんが仲間になりたそうにこっちを睨んでいる
ふう、気持ち切り替えて今日こそ頑張ろう!
「おは……失礼しました出直してきます」
なんだなんだなんだ! なんだあの恐怖の塊みたいな化け物は!
真っ黒な炎をモチーフにしたような鎧を着た二mを超える巨人がいた。
あと、顔が怖い! 牙生えて無かったか? いや、流石に見間違いか。
ファンタジーもののラスボスじゃねぇか!
少し時間潰すか、最悪日を改めよう。
「おい! こら! オッサン! 何処行こうとしてるんだよ!」
しまった見つかった! 警察に通報しても探民事不介入という探索者専用の約束事が出来て取り合ってくれない。
「いやぁ、忘れ物してしまって……取りに帰ろうかなぁ……なんて」
ベタだ! 我ながらベタだ! 上手い言い訳が思いつかない!
「何いってんだ、オッサンいつも日帰りじゃねぇか、用意するもんなんてねぇだろ! 俺だって暇じゃねぇんださっさと行くぞ」
あれ? この物言いってもしかして?
「もしかして、黒鬼さんですか?」
「おいおい、俺の顔知らねぇのか? どんだけ周りの事知らないんだよ」
「いやぁ、ダンジョン潜るのに必要じゃない情報は集めないですよ」
「必要な情報も集めてねぇじゃねぇか」
「いや、まぁ、はい……ところで黒鬼さんって人だと思ってたんですが、人外なんですね」
「あ? テメェ、見た目か? 俺の見た目の事言ってんのか! 気にしてるんだぞゴラァ!」
ワシッと頭を掴まれプレハブの中に引きづり込まれる。
「あ、おはようございます」
アヤさん、憐れむような目で見るのやめて。
「おう! こいつの乳母車は俺のポーチに入れるから、寄越してくれ」
「はい! どうぞ!」
アヤさんめっちゃ返事いいね。
俺の乳母車が黒鬼の似合わない小さいポーチにスルッと入った。
あれが噂に聞くマジックポーチか、凄い高額なんだよなぁ。
「俺も暇じゃないんだよ、さっさと行くぞ」
そう言うと俺を小脇に抱えて、ダンジョンを疾走し出した。
「どわぁぁ!」
「舌噛むから口閉じてろ! ったく! 一階から攻略しないとならないの面倒くせぇ」
とんでもないスピードでダンジョン内を駆け抜けていく。
「おっとボスか、フン!」
ショルダータックル一発だった。
「ゼェゼェゼェ、ウップ」
「なんで抱えられてただけのオッサンがバテてるんだよ!」
そりゃそうだけど、あんた抱えかたが雑すぎるんだよ!
怖くて言えないけど。
「あん? なんか文句ありそうな目してるな」
「色々言いたい事ありますけど、大人なんでここは我慢します」
「大人っていうかオッサンな! っと、このくらいは距離無いと同じパーティと認識されちまうか」
「ん?」
「ダンジョン内でパーティかそうじゃないかはモンスターとの距離で決まるのはしってるよな?」
「知りません」
「マジか!」
「パーティとか、組むつもり無かったんで、その辺は一切調べてないです」
「ホントなんて言うか、情報集めないよな! とにかくこれくらい離れてば一緒に戦ってるって判定されない筈だから、あのボス倒してきな」
「倒してきなって、ここ三十五層ですよね?」
「オッサンの耳にタコで倒せるって」
「耳にタコって……」
うまいこと言うな!
「あ、じゃあ乳母車出してもらって良いですか?」
「お! そうだな、一応あれも必要か」
そう言いながら、乳母車を渡してもらう。
「一応って言うか、このバリスタにこの子乗せて」
ボスに向かって打つ!
「ここからじゃ届いてもダメージ出ないだろう」
「ええ、でもあの子の移動には使えますよ」
案の定バリスタの矢は外れたが、ボスが悶え始めた。
「おおーなるほどなぁ……ってオッサン! ここで倒しちまったら経験値にならねぇだろ! 走れ! 近づけ!」
「え? え?」
「いいから早く!」
「は、はい!」
そういって走ろうとしたが、ボスが倒れてしまった。
「あーあ、経験値がパァだよ」
「リポップまで待ちますか?」
「ん? いや、めんどくせぇから先進むぞ、時間が勿体ねぇ」
そう言うとまた小脇に抱えられた。
どかどかと走っていると、モンスターハウスが視界に入ってきた。
「お、モンスターハウスじゃねぇか、ちょうどいいオッサンまだゾンビ作って無かったよな」
「あ、はい」
「ちょっと待ってろ」
そういってモンスターハウスに入って、ものの数分。
「終わったぞ、コイツらでゾンビと装備つくってしまえ」
「うわぁ、何で戦うとこうなるんですか?」
そこにはぐしゃぐしゃで原型を留めてないゴブリンだったものが無数に転がっていた。
三十層からはR3のモンスターのはずだが、明らかに一方的に粉砕されていた。
「ばっか、鬼は金棒持つもんだろ」
ああ、なるほどでかいバットでフルスイングみたいな戦闘なのね。
「ソンビってタンク系なんでしたっけ」
「そうだな」
「じゃあ、防具作って着させるかぁ」
イメージとしては、アメリカフットボールのプロテクター。
それに肩にデカい棘つけて、ショルダータックルで攻撃する感じ。
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