第2話 探索者デビュー

 探索者の登録をして2日後、再度このプレハブまでやってきた。


 辞表を出したら、大喜びで受理されたよ。

 クソ! なんか釈然としない。


 仕事の引き継ぎ業務の日以外は有給消化じゃなくても全部自主的に休むことにしてきた。


「すいませーん」

「あ! はい! お待ちしておりました! ジョブオーブ用意してるんで早速取り込んでください」


 このジョブオーブというダンジョン産の謎アイテムを自分に取り込む事で探索者はジョブという特殊な称号を得られる。

 それによりレベルという概念が刻まれ、ダンジョンで戦ってモンスターを倒すことで強くなるレベルアップという現象が起きるようになる。


「取り込みました」

「あ、はい、じゃあステータス見ておきましょうか」

「お願いします」


 大井 造 レベル1

 ジョブ ネクロマンサーLV1 アルケミストLV1 クラフトマンLV1


 強さ 8

 器用 10

 素早さ 6

 知性 11

 耐久力10

 賢さ 9

 HP 100

 MP 90

 パーソナルスキル 粗製濫造


 ジョブスキル スケルトン作成

       素材化

       武具作成


「この数字ってどうなんですか?」

「一般男性の平均は8〜10なんで、まあまあ普通って感じじゃないですか?」


「普通か」

 思ったより衰えて無くてホッとした。


「あの、装備とか何も用意してないんですが大丈夫ですか?」

「あー、その辺も手配しておきますね! 今日は私も一緒だし一層しか行かないので問題ないです」


「分かりました、よろしくお願いします」

「あ、そうそう、公式の配信もしますね」


「配信?」

「ええ、そちらの収益の半分を返済に充てることでより早く支払いを終わらせる事が出来ますよ」


「そうなんですね、ご足労おかけします」

「そんな、かしこまった言い方しなくて大丈夫ですよ! もっと気楽に行きましょう!」


 ー 清田区第四ダンジョン一層 ー


 プレハブに備え付けてあったドアを潜るとここに来てた。

 どう見ても、草原にしか見えないけどダンジョンらしい。

 どういう原理かは全くわからないが、ダンジョンってそういう物と思うしか無い。


「はい、じゃあ配信始めますねぇ」

 女の子がそう言って、ゴーグルのような物を渡してきた。


「そこに見てる人のコメント出ますから、ウザかったら切っても大丈夫ですから」

「あ、はい、ありがとうございます」

 俺は何にお礼言ってるんだか。

 会社員の時のくせってなかなか外れない物だな。


「さてっと、はい! 公式配信始まりましたぁ! ついに清田第四ダンジョンも探索者の方が来られました! しかも専属契約してくれましたー! はくしゅー!」

 今までよりテンションを上げた感じでいきなり配信が始まったらしい。

 あー、あのドローンにカメラ付いてるのか。


〈あー遂に犠牲者が出たか〉

〈よりによって第四かよwww〉


「お! 早速コメントつきましたねー! こら! 初心者に変な事吹き込んじゃダメだぞ!」

 青筋立てた笑顔って本当にあるんだなぁ。


〈第四ゴブリンしか出ねーじゃねーか〉

〈あれ? 廃棄ダンジョンじゃなかったの?www〉


「素人質問で申し訳ないんですが、ゴブリンしか出ないと問題あるんですか?」


〈ゴブリンはドロップがショボいんだよね、金にならねぇ〉


「逆に言えばドロップ以外は問題ないじゃないですかぁ!」

 女の子が必死に反論してる。


〈金にならなきゃ生活出来ねぇんだよ! アソビじゃねぇんだぞ!〉


「魔石でも充分稼げます!」


〈魔石でしか稼げないから問題なんだろwww〉

〈タイパって知らないの?〉


 こりゃ、見てるユーザーの方が正論っぽいな。


「まぁまぁ、もう契約してしまったんで、頑張ってみますよ、他のダンジョンに行けないわけじゃ無いみたいですし」


〈甘いな! 他のダンジョンに行くなら申請手数料取られるぞ〉


「え! そうなんですか!?」

「手数料って言ったって500円よ!」

 微妙に勿体無いって思うラインだ。

「話しててもしょうがないから、早速探索しましょう!」


「あ、はい、よろしくお願いします」


〈ところでジョブは何にしたんだ?〉



「あ、ネクロマンサーです」


〈高いだけのクソジョブじゃねぇか!〉

〈うわぁ、詐欺だ! ジョブ詐欺にあった〉

〈あれだな、売れ残り押し付けられたな〉


「ちょっと! 変な事言わないでよ! ちゃんと考えてコレにしたんだから!」

「ネクロマンサーってクソジョブなんですか?」


〈クリエイト系の戦闘職で有名なのがゴーレムマスターだな、普通はネクロマンサーよりそっち取る〉

〈誰もアンデットと一緒に歩きたくないからボッチ確定だぞ〉

〈初期のクリエイトモンスターが弱いんだよ、人間が10としたらゴーレムは20、スケルトンは5〉

〈他のクリエイトモンスターは素材と作者のステータスの上乗せあるけど、ネクロマンサーだけそこが半分以下〉

〈作成数の制限も他より厳しいしな〉


 うわぁ、ネガティブなコメントが一気にきた。

 今見てる人が五人だから、ほぼ全員から否定されたっぽい。


「あんた達、公式に公開されてるこの人のスキルデータ見た? 見てないでしょ!」


〈見たけど、何か?〉

〈スペックが減ったって元の数値高い方が良いだろ?〉


「アンデットはねぇ、クリエイトモンスターの中で唯一で戦闘で成長するの! 最初は低くてもその分レベルアップすれば普通のモンスターになるでしょ!」

 おー、ちゃんと考えてくれていた!


〈正直に言えよ、売れ残ってるジョブオーブ売ったら評価査定上がるんだろ?〉


「……」

 あ、あれ?


〈思ったけど、スペックの影響が少ない幻獣マスターや精霊マスターでも良くないか?〉

〈幻獣の方はクリエイト系だが、精霊の方は魔法系〉

〈多分、上の精霊マスターってエレメンタルクリエイターっていう超マイナー職の事だと思うぞ〉

〈あれも弱すぎてみんな使わないんじゃなかったか?〉

〈やすい分ネクロマンサーよりまし〉


 なんか、コメントが盛り上がってる。

 前向きになれそうな話題何も無いけど。


〈……〉

〈……〉

〈……〉


 なんだ! 急に発言が読めなくなったぞ!


「ふう、相手してるといつまで経っても探索出来ないので一旦ミュートにしました」

「あ、そうなんですね」


「スケルトン一体作成したらミュート解除するので、それまでは黙って見ててくださいねぇ!」

 閲覧者に向かってそう言うと、草原をズカズカと進むにだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る