祠壊しブームに一石を投じる作品

一年ほど前、突如として巻き起こった祠壊しブーム。何かしらが祀られている祠を破壊してしまい、祟りに遭うといった作品がカクヨム内でも多く見られた。
しかし本作は祠が壊れる過程や壊れた直後ではなく、壊れてから時が過ぎた頃の話となっている。

大学生の川野辺鈴夏は、地元の由来不明な祠をテーマに卒論を書くことに。だが、インタビューをした地元民の多くもその由来を詳しく知らない。
調査を続ける過程で、かつてその祠が壊れたことによる祟りじみた事件があったと読者に開示される。その事件は川野辺が卒論に祠の調査を選んだ理由と深い関わりがあり……。

モキュメンタリー形式で淡々と事実が語られていく中、物語は思わぬ収束を迎える。是非最後まで読んで驚愕を味わっていただきたい。
もし、地元の人々が祠の由来について詳しく知っていれば。後世に伝えられていれば。悲劇は防げたかもしれないと考えてしまう。
祠が壊れたことと、事件との因果関係はないかもしれない。けれど、祟りは確かにある。そう感じた読後でした。

また、全国に散見する祠について纏められたレジュメも読み応えがあり必見です。