資料02|インタビュー 深久良神社 宮司

日時:2025年7月15日 10:00

場所:███県██市 深久良みくら神社

対象:山口やまぐち佳広よしひろ(宮司)


 ああ、こんにちは。先日お電話いただいていた……はい、川野辺かわのべさんですよね。はい、今日はよろしくお願いします。宮司の山口と申します。わざわざお越しいただいて、どうもありがとうございます。


 で、あのほこらについてですよね。ええ、もちろん知ってますとも。ただ、実はあれはうちが管理しているというわけではないんです。すぐ隣にあるからよく勘違いされるんですが、敷地もうちではなくてね。


 とはいえ、まあ、神社のすぐ傍ですし、実際のところは、私はもちろん、私の前の宮司たちも、なんだかんだで何かと世話をしていたようです。といっても、掃除だとか簡単なお供えだとか、そういう程度のものですけどね。特に名前のある祠でもなくて、単に「祠」って呼んでます。近くに他の祠があるわけでもないから、なんとなくそれでどうにかなってますねえ。


 うーん、なので、実は私も、あれがいつからある祠なのかは把握してないんですよ。お役に立てず申し訳ない。どうもうちの祖父の代よりも前からあったらしいので、100年以上前からあるのは確かだと思うんですが。


 当社は遅くとも延長えんちょう5年、西暦だと927年からある神社です。平安時代の、菅原道真の怨霊がどうのって騒いでいたような時期です。なので、このあたりでは一番古い神社になります。それで、川野辺さんからお電話いただいたあと、古い資料か何かあるかなとは思っていて。ちょうど、そろそろ本格的に整理しないといけないなと思っていたところだったんです。ただ、ちょっとまだちゃんと手をつけられていなくて。もう少しお時間をいただければ、何か出てくるかもしれません。


 ……ただ、そうは言いつつ、ご期待に沿えるかというと実は怪しいところもあって。というのも、うちは明治9年に一度火事がありまして。そのとき資料の一部が焼失してしまったんです。なので、祠についての資料があったとして、そのときの火災を免れて今も残っていることを願うばかりですね……。


 ええ、女性を祀っているらしいというお話も、はい、聞いたことがあります。どなたを、どういう経緯でというところまでは……そうですね、申し訳ない。はっきりしたことは把握していないんです。


 祠の中も開けたことはないんです。やはり自分が責任を持っているわけではないですし、無暗に開けるわけにはいかないですよね。なので中に何があるのかも、私ではわからないんです。


 ああ、話していたら思い出した。確か10年……いや、もっと前だったかな。あの祠が壊れてしまったことがあるんですよ。いや、壊れたといってもそこまで酷くはなくて、多分何かがぶつかって、衝撃で戸が外れかけたって感じだったと思います。


 うん? ああ、そうです。そうですね、そのとき、中の入れ物はチラッとですけど見ましたよ。壺みたいなものでした。でもその中身までは把握していません。なので、結局何が祀られているのかはわからないんですよ。


 そう、それで一時変な噂も流れましたね……。祠を壊したから祟られただの、封じていた怨霊が出てきただの。でも眉唾だと思いますよ。川野辺さんも、このような調査をされているならご存じかもしれませんが……祠は主に、信仰対象のためのスペースなんです。たとえば道祖神とか、氏神とか、厄除けの神様とかですね。たいていの場合はそのような神様を祀るために村人や地域の人、氏神であればその子孫が建てます。そういう、大切にされて信仰されてきたもののほうが多いんです。もちろん祟り神を鎮める祠がないとは言いませんし、地域によっては一帯にいくつも鎮魂の祠を建てるところもあります。ただ、この辺りでそういった話は聞いたことがありませんね。


 そうですねえ……もしかすると、奥田おくださんだったら何かご存じかもしれません。このあたりの自治会長さんで、よくあの祠を掃除してくださっているんですよ。ご高齢の方です。昔からずっとこのあたりにお住まいだそうなので、何かご存じかもしれません。祠が壊れた時も、自治会費から費用を出して修繕されたんですよ。私からお繋ぎしましょうか? 川野辺さんのご連絡先をお伝えして良ければ……はい、もちろんです。じゃあお伝えしてみますね。


 あとは、導念さん……導念寺どうねんじにいらっしゃる方が、もしかすると何かご存じかもしれません。お向かいのお寺さんです。あちらの方も、掃除を手伝ってくださるんですよ。祠って、仏像とかが収められていることもあるので、もしかするとあちらの方に記録があるかもしれません。


 いえいえ、お礼なんて。むしろ、こうやって地元のことに興味を持ってくださる若い方がいらっしゃるのは、本当にうれしいことです。今もこの辺りに住まれてるんですか? ああ、ご実家が。であれば、こちらに戻られたときはいつでも構いませんから、ぜひまたこちらにお立ち寄りください。手伝えることがあればもちろん協力しますし、そうでなくてもこうして地元の方が来てくださるのは嬉しいことですから。

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