EP.13 あなたと約束した日を忘れない。

 4月17日……アルテミス・クエルはアメリカ大陸を目指すもグリーンランドに不時着した、それからエンジンを直すため2日程時間を食らった。


「マルコス……エンジンはどうだ?」

「まぁ、浮上ぐらいは出来るようになるはずだ。出力は65%で速く移動出来ねぇだろうよ。」

 マルコスと共に食堂で飯を食べている、アルテミス・クエルの本来の目的である。ネスト3奪還及び月の制圧……こんなにも遠回りだと目的を忘れそうだ。

「でも、よくこんな巨体を浮上させる事ができるな?宇宙ならまだしも地球という重力下で……。」

「昔見たアニメがある程度実現できる時代だ、科学が追いつけば夢さえ叶えさせるさ。世は推進システムが優秀な訳で……つまりな……って事で……そんで……。」

 そこからはマルコスのメカオタクが開花し話は永遠と続く。

「はいはい、分かったよ。」

「ほんとかよ!」



 ——メイン・ブリッジではノア艦長とマルテラが話をしていた。

「では、浮上は出来ても移動速度に問題が生じると?」

「はい、出力こそ60%以上を確保しましたが速度が遅く到着まで時間がかかるでしょう。」

「うーん……何かいい案は……」

 ノア艦長は難しい顔をして悩む。

「私にいい案があります。先端のビーム砲を取るのはどうでしょう?」

「時間はどれほどかかります?」

「総出でかかれば一日以内には終わります。」

「分かりました。現場の指揮は任せます、なる早で。」

「了解です。」

 マルテラはメインブリッジを出た。

 

「艦長、『なる早』なんて言葉使わないで下さい。」

 リーはノアに注意を促す。

「そっちの方が愛嬌ありませんか?」

「どこでそんな言葉を覚えたんですか?」

「エナさんからです。」

 その言葉を聞くとエナの肩が少し跳ねる。



 『アルテミス・クエル整備兵は直ちにブリーフィングルームへ作戦会議を行います。』

 アルテミス・クエル艦内にアナウンスが流れる。

「だってよ、俺は行ってくる。」

「おう。」

 マルコスが席から立ちブリーフィングルームへ行ってしまった。

「さて、俺もお暇しますか……。」

 食堂から出て自室へ向かう。

『エイジさん。』

「なんだ?」

『夢とは?』

「あー何だろう……。」

 マルコスとの会話だろうか、今までの質問を振り返れば突っかかってるくのも無理はない。

『まず、世間一般には自分の将来を示す分野での夢がありますが。これとはまた違うので?』

「まぁ、遠からずじゃないか?俺たちが子供だった頃の将来の夢だったり人類の夢である空想科学が実現された事を指してるだけであって……。」

 あれ、なんか難しいぞ……夢って何だ?

『なんか小難しいですね。』

「お前が話せって言ったんだよ!」

『私にも夢はあるでしょうか?』

「お前は何がしたいんだ?」

『私のしたい事……。』

「なんか人と感情を共有したいとか何とか……世は人と感情を共有したいだけじゃないか?」

 とはいえ客観的な意見だ。

『その第一歩として私に名前をください。一応パートナーなので。』

「何だ急に。」

『いつも機体の中でガイア・システムと言われるのは嫌です。』

「ますます怪しくなってきたな。」

『前に名前を付けてくれると言いました。まだですか?』

「せっかちだな。」

『数日と待たされる人の気持ちを考えた事はあるんですか!』

「えぇ……。」

 困惑した、ここまで感情をはっきりさせるのは初めてかもしれない。

「わ、分かったよ……良いのを考えるから……」

 その時だった。

『敵戦艦を確認!AD部隊はパイロットスーツに着替え格納庫へ移動せよ!ビーム砲の取り外しをしている整備兵は作業を止めて格納庫へ。』

 エナの声が戦艦全体に響き渡る。


 パイロットスーツへ着替えいつも通り機体に乗るとイシダ戦術長より通信が入る。

『エイジ。敵戦艦はこちらへ向かってきている。ADの数は分からない。だがここは地球だ、宇宙のようにネットの混戦はなく妨害がない限り遠距離での通信は可能だ。連携を意識せよ。』

「了解です。」

『敵戦艦の停止を確認!ADを確認しましたこれは……』

 エナが敵を解析しているが言葉を詰まらせている。

『どうしたのだ?』

『それが見た事ないタイプです。バッシュ、マユは他の資料を漁ってみて。AD部隊には映像を送ります。』

 映像を確認すると戦艦格納庫からADが見える。素体こそ月政府のAD-3だが、脚部が戦車のようになっており両肩にミサイルが多く積んである、両腕には機関砲だろうか?どちらにせよ重武装だ。


 

 ——敵戦艦格納庫では……。

「艦長、パイロットの搭乗が終わりました。」

「ああ。」

 艦長と呼ばれた男は機体コクピットに近づく。

「いけません!近づきすぎです!パイロットの精神状態は!」

「構わん。」

 男はコクピットに近づき少年を見る。

「ニール。」

「父さん……。」

 少年はやつれており、腕には点滴が施されており明らかに病気を患っている。

「良いか?お前が倒すべき相手は昨日送った映像の通りだ。そうすれば母さんに会えるぞ?」

「本当に?」

「ああ、だからもう少しの辛抱だ。」

「わ、分かった。頑張るよ!」

 少年はゴーグルを付けうなじにあるコネクター口へ配線を刺す。コクピットを閉めるまでの動作でやる気が伝わる。

「艦長……。」

「幻覚を見せるとは……俺はあいつの父親じゃない。政府の命令とはいえ気が進まん。」

「ですが、この機体の企画が通れば『地球侵略作戦』で量産が可能になります。」

「そんなに上手く行くかな?この機体はバッテリーと軽油で動く。『AD-3』の型番を持ちながらハッタリだ。実際は『AD-2(M)/PT』と呼ぶべきだ。」

 AD-3の前身であるAD-2は軽油を使っておりこのプロトタイプは前の型番であるAD-2の素体を使っていた。

「そもそも月に石油なんて自生しない。明らかに地球に降り立った後を想定して作っている。我らが優勢とはいえアルテミス・クエルというイレギュラーを甘く見過ぎだ。」

『プロトタイプの試験運用を開始します。』

「所詮ニールは実験用ネズミだ……本当にこれが正解なのか?地球も月も……お互いが正しいと言える証拠がどこにもないこの世界で戦い続けるのは実に愚かだ。」

 男は唇を噛み締めメインブリッジへ戻って行った。


 プロトタイプが格納庫から出ると続いて二機が監視の為舞い降りる。

「大きいな……。」

『聞こえるかエイジ。もしかしたらあれAD-2かもしれない。装甲だけAD-3で中身はAD-2だと思う。』

 マルコスから通信が届く流石メカオタクだ。

「確かに脚部の車体から排気が見える。」

 まだこちらから距離はあるが初号機はC装備であり脚部部分にタイヤをつけた地上戦仕様だ。生憎下は積雪だが足を埋め込ませれば意外と走れる、右手に速射砲を持たせ左手に四連装ミサイルを担がせている。後ろ腰に供給式帯電大型ナイフと両腰はワイヤーアンカーがマウントされた。

 重量は中途半端で少し重いくらいだ。

『隊長!敵から何か!』

 アリエスタルが通信をよこす。

「何だ……。」

 カメラが自動でズームすると距離があって見えなかったが背中から大型の大砲が昇ってきて頭にマウントされる。

「散れ!」

 マヤとアリエスタルに伝え。散開すると集まってた地点が吹き飛ぶ。威力は凄まじくその場に留まっていれば致命的だった。

「クソ、外した!当たれよおおお!」

『落ち着け『ナイトE-324』まだ勝機はある。』

「そうだ!騎士である俺がお前らをぶっ飛ばす!」

 監視の兵士がニールとの通信を切る。

「全く、幻覚で己をルナティック・ブラックナイツのメンバーだと思わせるとは……。」

『そう言ってやるなよ。所詮モルモットだ、扱いなんざたかが知れてる。』

 もう一人の監視員もニールを見て話す。

 

「アリエスタル、お前は戦車以外を撃ち抜け!マヤは接近して揺動しろ!」

『『了解!』』

 戦艦は近づいてこない、AD同士での戦いが主になるだろう。

「戦車の懐に飛び込む。」

 初号機の脚部についたタイヤを滑らせると結構早く走れる。

「ナイトE-324、敵が二機突っ込んでくる。下がれ。」

「何だ!俺に指図するなああああ!」

 ニールは横にいる監視員へ右手の銃口を向ける。

「何をする気だ!」

「俺は騎士なんだ!誰の指図も受けねええええ!」

 するとバリバリと音を出し監視員の機体をズタズタにする威力は凄まじかった。

「くそ!過剰投与か!」

 もう一人の監視員は銃を構えるが少し変わっていた。発射するとワイヤーになっておりニールの機体に食い込むと電気を流す。

「そんな小細工が効くと思ってんのかあああ!」

 ニールの乗る機体は装甲が厚く拘束は意味を為さなかった。

「クソが!おい!今すぐに停止させろ、ナイトE-324!」


 敵戦艦メインブリッジではあたふたしていた。

「艦長!被験体が言うことを聞きません!」

「知ってるよ。」

「強制停止装置を!」

「押さないよ。」

「艦長!」

 艦長と言われる男は銃を取り出し騒ぎ立てる兵士を撃つ。

「黙れ。私はただニールのやりたい事をさせてるだけだ。」

『艦長おおお!早く緊急停止をおおおお!』

 監視員の通信が入るが彼はキャタピラに押しつぶされており体が少しずつぐちゃぐちゃになる。

 その音声を聞きメインブリッジ内は静まり返る。

「良いか?貴様らが言うナイトE-324は私の言う事しか聞かん。あの火力を見ろ戦艦一隻分は破壊できるさ。」

 その話を聞きクルーの顔は青ざめる。

「艦長……あなたは一体何を……。」

「ただ私は彼を本当の息子のように思っているよ。だから、彼が発進する直前にコクピットへ行き点滴の投与を多くしたまでさ。」

「あんな物を野ばらしにしては危険です!」

「物ではないニールだ!あの点滴には自制心を緩くする薬が入っている、本来のニールが見られるのだ。いつも自閉した彼を見るのは辛いのだ!」

「だからと言い他の人間まで巻き込むなよ!」

 クルーの一人が立ち上がり銃口を向けられる。

「撃つのか?お前達も分かるだろ?私達は政府に死ねと言われてここに居るのだ。敵戦艦の威力を見ただろ?操るクルーも凄腕と見える、そんな物に我々のようなクソ雑魚の戦艦が勝てると思うのか?どうなんだ!」

 その話を聞きクルーは皆沈黙する。

「認めたくはないが、ニールをここに置いてる時点で我々は消耗品だ。どうせ死ぬのなら私は彼の勇士を見たいがね。降りたい人間は降りるが良い、だが私の邪魔をすれば殺す!」

 各クルーは戦艦から去るものやそのまま残る者とそれぞれであり、各々が自分の行く道を見据えた。


「どうなってる?」

 俺は目の前で起きた出来事に理解が追いつかなった。

『エイジさん、今は回避行動を!』

 アリエスタルが冷静で助かる。

「ああ!」

 仲間を撃った後今度は轢き殺した。何が目的なんだ。

 すると今度は俺の乗る機体へターゲットを移す。

「新型があああ!」

「速い!」

 全速全身でエイジの乗る機体へ接近する、そのまま轢き殺すつもりだったのだろう。

『先輩!こっちに引き付けます!』

「頼む!」

 二号機の右手腕部の速射砲で攻撃すると戦車はマヤの機体に狙いを定める。

「うるさいんだよおおお!」

 両腕のゴツい機関砲をマヤに発射するが二号機の機動力を生かし避ける。

「機関砲の威力も高すぎる……」

 機関砲の弾が地面に当たると厚い積雪を吹き飛ばし下の地面までも抉れる。

 戦車は機関砲を撃っている間は静止している反動に耐える為だろう。

「今しかない。」

 標的はマヤに移っている、足に装着されたタイヤを滑らせ接近し四連装ミサイルを直に叩き込む。

 エイジの機体は戦車へ近づく、相手はこちらに気付いてない。

「クソが!当たれ!」

 戦車の中では熱源反応のアラートが鳴る。

「右か!」

 戦車の標的が再びエイジに移る。

 車体はマヤを向いており体だけをエイジに向ける。

 両手の機関砲が向けられる前にミサイルを撃ち込むと。

「うあああああああああ!!」

 ニールはミサイルの存在に気づき右足のペダルを全力で踏むと車体を前進させ4発中1発が当たる。

 いくら装甲が厚かろうと当たれば大ダメージだ。

『まだ敵は健在です!援護します。』

 アリエスタルは貫通砲を構え黒煙の中に狙いを定める。機体はボンヤリとしているがまだ動きそうだ。

「くたばってたまるか!」

 ニールは血だらけになるが諦めてはいなかった。両肩のミサイルを狙いを付けずに発射する。

「みんな動け!」

 黒煙からミサイルが四方に発射されると三機は散る。

 エイジ、マヤは何とか回避するがアリエスタルはさっきまで狙いを定めていた事もあり足に被弾する。

『動けない……』

「まずは一機だ!」

 ニールは空になったミサイルコンテナをパージし機動性を確保する、黒煙を抜けそのままアリエスタルの機体まで前進する。

 左手はエイジの放ったミサイルにより欠損しており右手の機関砲と上部の大型の大砲しか機能していない。

「アリエスタル!」

 このままでは仲間が失ってしまう、緊張と同時に心地の悪い汗が全身にまとわりつく。

『流石に死にませんよ!』

 アリエスタルの貫通砲は健在だった足だけ負傷しておりコクピットには被弾していない。

 貫通砲を左キャタピラに定めて撃つと反動で機体も後ろへ倒れる、コクピットを開けそそくさとアリエスタルは脱出した。

 キャタピラを撃たれた機体は停止し前進した速度と相まって左へ大きく回転する。

「いたあああ!」

 ニールは頭を打ち悶える。

『頂くよ。』

 マヤは好機を逃さず両腰にある対AD用の刀を抜く。

 二号機は車体の上にまで登りコクピットに刀を突き刺すとこまで接近していた。

「調子に乗るな!」

 右のキャタピラを前進し二号機を振り払う。

 マヤは刀を敵の頭部に刺し固定し振り払いを阻止する。

「カメラが見えないいいイイイ!」

 ニールは急な出来事に乱心する、彼は徐々に気がおかしくなってきている。

 右手の機関砲を乱射し見えない敵に威嚇するが効果なんてない。

 背後にはエイジが周りバッテリー部分に大型ナイフを刺そうと考えたがマヤがいるため爆発させるのは危険だ。腰に刺し動きを止める、電気を流しパイロットだけを気絶させようとした。

 敵機体は今までの異常行動とは裏腹に機能の一切を停止した。


 ——再び敵戦艦のメインブリッジ内ではニールの最後を艦長が見つめていた。

「我々も行くぞ。」

「ど……どこへ……。」

「敵戦艦にだ!この船を直接ぶつける!」

 男は操舵士の頭に銃を突きつけ指示する。

「あなたが操縦すればいいでしょう?」

「口答えする気か?」

「この異常者め……。」

 降りたい者は降りろと言ったものの技術的に出来ないものはクルーに任せる他ない。


『エイジさん!敵戦艦が動き出しました!』

 ガイア・システムが異常を知らせる。

「どこへ向かってる!」

『分析した結果アルテミス・クエルと思われます!』

「攻撃する気か……。」

 現在ADの火器機能では戦艦には対抗できない。アルテミス・クエルに関しては移動は愚か副砲と主砲をお見舞いした所で墜落を利用し破壊されるだろう。

『エイジさーん!!』

 すると脱出したアリエスタルが近づいてくる。

 コクピットを開け要件を聞く。

「エイジさん!敵の機体まだ使えるでしょ?射撃は任せてください!」

「メインカメラがやられてるぞ!」

「エイジさんのカメラを中継させてください、こう見えて自信はあります。」

 ここはアリエスタルを信じよう、時間も限られているやれる事は全て試さなければ。

 

 コクピットを無理やり剥がすと中には血だらけの子供がいた……まだ十代前半ではないだろうか?ルナティック・ブラックナイツ特有のうなじ部分にコネクターが繋がれている。

「まだ息はしてますね……。」

 アリエスタルは少年の様子を確かめた後マヤに遠くまで離すように伝える。

『聞こえるかアリエスタル!その機体はオーバーヒートしている、回復を待っている間こっちのカメラで着弾ポイントを作る。』

「分かりました!」

 敵コクピットの座席に座った後操作を確認し回復まで精神を統一させる。

「よーし……外さないぞ……」

 独り言を呟き確実なものを得ようと己に言い聞かせる。

『聞こえるかアリエスタル、イシダだ。エイジから話は聞いている、こっちからも敵戦艦の接近を確認した。狙いは一つ後方のジェット部分だ、その付近にはエンジンルームも搭載されている二発も当たれば敵は撃沈する。』

「分かりました。」

『着弾ポイントを作った、データを送る。バッテリーの復旧もそろそろだ。』

 その通信を後に機体は機動を再開した、バチバチと破損部分から電流が流れており今にも壊れそうだ。

『カメラを中継する。』

 初号機のカメラがアリエスタルのゴーグル内に映る。

 現在ニールの乗ってた機体の背後を初号機が支え射撃の反動を抑える役割もしている。脚部のタイヤを外し積雪に足を深くめり込ませる。

 戦艦はそろそろ上空へ現れるこちらには気づいているはずだが。


「艦長、敵AD一機確認。いかがなさいます?」

「構わん放っておけ。どうせ何も出来んさ。」

 敵はニールの乗っていた機体に人がいるなど思いもしなかった。

 

 絶好のポイントまで敵戦艦が上空に現れる。

「撃ちます!」

 アリエスタルはトリガーを引き戦艦後部へ大型大砲を着弾させる。

 大きな爆発を起こし威力は類を見ない程に強力だった。


「後部に被害甚大!推力低下!」

「まさか……ニールの機体に……」

 存在に気づいた時には既に遅かった、後は逃れられぬ運命に身を任せるだけ。


「くそ……装填速度が遅い……このままじゃ……」

 大型大砲は一度撃つと冷却を行いその後に弾の装填を行う、弾も大きく口径は実に500mmもある。時間がかかって当然でありトラブルも起きやすいだろう。

 装填中にも敵戦艦は頭上を過ぎていく。

「転回します!」

 右のキャタピラを前進させ左へ向く、ジェット部分に狙いをすましトリガーに手をかける。

「よし……いくぞ……」

 ゴーグル内に装填完了の表示が出ると一気に気を引き締める。ここで外せばアルテミス・クエルは破壊される。

『座標を固定……頼むぞ……』

 エイジも集中しアリエスタルの欲しい映像を送る。

 トリガーを押し発射する。

 弾は見事にジェット部分に当たり戦艦は徐々に落ちていく。


「後方推進部分に損傷!戦艦はこれより墜落します!」

「何もなす事なく終わるか……馬鹿馬鹿しい。」

 戦艦は墜落こそしたが爆発は起こさず大きな音と共に緊急着陸をした。


「なんとかなったか……」

 エイジはコクピットの中で様子を見ていた、アルテミス・クエルも無事であり安堵した。

『ありがとうございます、エイジさん。』

「いや、アリエスタルのおかげだよ。俺じゃああそこまで上手くやれない。」

『じゃあコンビプレイってことで。』

「ああ。」

 その会話が終わるとガイア・システムから通信が入る。

『エイジさん。』

「どうした?」

『あれを。』

 すると上空ではオーロラが流れる、この安堵した状態で目にするとより染みる。

「お前はこれを綺麗と感じるか?」

『はい、神秘的で美しいとも感じ取れます。これが感動なのでしょうか?』

「間違ってないよ。」

『もっと見てみたいですね。この地球だったらまだ見ぬ現象に立ち会えそうです。』

「名前さ、考えたんだけど……。」

『オーロラですか?』

「いや、アウロラ。暁の女神らしいがどうだ?」

『夜明け……』

「そう、俺たちは戦わないといけない……夜明けが欲しいんだよ。だから導いてくれないか?」

『あなたが望むなら喜んで。』

 疲れで少し目を閉じると再びまぶたの裏に何かが映る。


 場所は分からない、辺りは真っ暗で所々に黄色い粒が見える。よく中身を確認すると人だろうか口に呼吸器のような物がされておりお腹には人工的な臍帯が施されている。

『この子は?』

『いや、まだ気づいてない。とはいえ時間の問題だ、発育も良い。丁度収まるだろう。』

『では、計画実行時に学習データだけ残しますか?』

『その必要はない。生きて帰れはせんさ。』

 二人の白衣の男がいる。なんの会話だ?そして俺は何を見せられている?


 目を開けるとコクピット内が広がる。

「今のは?」

『エイジさん。』

「なんだ?」

『あなたは私を見捨てますか?』

「お前が見捨てないなら俺も見捨てない。」

『では信じます。』

 さっきから意味が分からない、今の幻覚……コイツも見てるんだよな?

「ローラ……帰ろうか。」

『ローラ?』

「ただの愛称だよ。」


 EP.14へ続く……。

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