EP.9 道
今現在戦闘後の報告としてパイロット3名である俺とマヤそしてアリエスタルがメインブリッジに集められてる。
艦長にリーそして戦術長のイシダさんもいる訳だが……。
「さて報告の前に事の出来事を説明させてもらいましょうか?」
今現在俺は窮地に立たされてる。どうやらリーは俺がマヤを男性用シャワー室に連れ込んだと勘違いしている。
「えぇっとですね……無理矢理入り込まれた感じなのですが……。」
「あなたが連れ込んだのではなく?」
「はい……マヤからも説明してくれよ……。」
俺はマヤに助けを求めるがコイツが元凶なんだよな……。
「私が先輩の入ってるシャワー室へ押し入りました。」
「本当ですか?言わされてるのではなく?」
「言わされるのも悪くないですね。」
「キモい考えを残すなよ!」
そんな発言されると俺の立場がますます狭くなる、やめてくれ。
「リー、彼女は嘘を言ってませんよ?お互いに活動の害がなければ良いのでは?」
「艦長!これから彼らと共に衣食住を共にする仲ですよ?乱れた関係など放っておけるはずがない!」
「ですが、人間とは元来乱れてるもので……」
「静かにせんか!」
イシダさんが割って入って来た年長者だし威厳がある。
「失礼しました……」
リーは謝罪する、一応彼女の方が階級は上のはずだがイシダさんには頭が上がらないのだろうか?
「良いか?まずは戦闘後の報告をお願いしよう。船内での生活云々は後でで構わん。」
話を整理しブリーフィングを行う、主にバルトン・シミラスの件で彼の強さを各々報告した。
「バルトン・シミラス……やはり強敵か……」
イシダさんは顎を触り何やら深く考える。
「知っているのですか?」
「私は以前月に行き鎮圧作戦へ参加した。敵のADに対する対処は完璧だった、180mm砲を使い人を殲滅するために送られた我々のADは簡単にやられた訳だが、対策などいくらでも立てれたさ。」
「質問ですが、戦術長は鎮圧作戦時の部署は?」
艦長が急に話に割り込む。
「ああ、資料には載せてなかったな。私は月鎮圧作戦の作戦責任者兼第三戦艦艦長だ。星間紀146年……忘れはせんさ。」
思い出したようにイシダさんは話す。顔を俯きどこか悲しそうな印象を受ける。
「敵のADの存在を知ると私は対策を考えた。世はムーンシティへADを送ってた訳だが、あちらもADがいる以上消耗戦になってしまう。なので、そのムーンシティへミサイルを直接撃ち込み住民もろとも焼いた訳だ。幸い敵戦艦がいなかったからな……都市へ通ずる格納扉を無理矢理破壊すれば後は簡単だった。」
「住民すらも……。」
アリエスタルは口ずさむ。
「そう……仕方ないで済む話ではない。私は都市を半壊させると今度は黒いADと対峙した、それこそバルトン・シミラス本人だった。都市へ私の乗る戦艦が侵入し多くのADを投下し一気に残りのADを殲滅しようとしたが、結果は惨敗。バルトン一人のために多くの兵を死なせてしまった、撤退しネスト3へ帰還すると作戦失敗の責任に無関係な住民への殺戮を責められらたさ。結果家族を残し地球へ左遷……当然だ。」
「家族は今もネスト3に?」
俺は気になる事を質問する。
「分からない。無事だと良いが……仏が私に救いをくれたのかアルテミス・クエルで戦術長としての任が出た。これは使命だと勝手に思っているが……。」
イシダさんは周りを見渡し静まり返った空気に気づく。
「すまない、少し喋りすぎたな……バルトンは強敵だ、だがエイジ軍曹のおかげで追い払う事が出来た。大金星だぞ?ただ……奴は戦いのプロで間違いない。戦術を変えてくるはずだ、パイロット諸君はバルトンとの戦闘データを分析し次に備えるのだ。」
「「「はっ!」」」
マサトシ・イシダ戦術長……彼の過去を少し覗くことが出来たが少し重みがあった、ネスト3奪還を彼は目指していると見える、彼の目的は家族だろう。
続くように艦長が話す。
「さて、ブリーフィングも終わりましたね。明日からアルテミス・クエルは宇宙へ出て地球を目指します。」
「明日からですか?」
俺は急な話に驚く。
「はい、アルテミス・クエルは80パーセント修理完了です。」
「え?80パーセント?」
「メインエンジンが直らないそうです。」
「だ、大丈夫なんですか?」
「さぁ……」
艦長は顔を傾げる、その曖昧な発言から心配になるが。
「とは言えだ、このままじっとしてても前に進まん。月政府の拠点である小惑星の存在も分かったのだ、このまま足踏みをしてては地球政府の敗北は確実だ。」
リーはそう話す。
「話は以上です。リー……乱れた話はしないのですか?」
艦長の話が終わるとリーに振るが……。
「ええ、エイジ軍曹にはたっぷりと……。」
「えぇ……マヤは?」
その後厳重注意を受け部屋に帰されるのだった。
——アルテミス・クエル、エイジの自室。
「それにしても酷いな……男ならキッパリ断れって……」
リーから厳重注意は結構理不尽だった。マヤに迫れた際、強引に断らなかったのが悪いとのことだった。
「あれ絶対まだ疑ってるだろ……」
愚痴を漏らしながらベッドへ横たわる。
『確かにあなたは断りませんでしたね。マヤさんの事が好きなのですか?』
ガイア・リンクが反応する、最近話し掛けられるがそういう機能はないはず……。
「別に好きではないよ……」
『ですが、彼女に抱きつかれた時は心拍数が上がりました。世は興奮状態に……』
「それとこれとは別だ!」
『……生物学上のデータを確認しましたが恋と生殖は別なのですね?』
「そうだよ……そんなの今時のAIだって区別がつくだろ?」
『そうなんですね……私は人肌に触れてみたいです……あなたが機体に乗っている間は思考しか共有できません。不思議とそれがもどかしい……。』
「お前、本当にガイア・システムか?」
『正真正銘ガイア・システムです。』
本当だろうか……あの新型に乗ってから不思議の連続だ、何より気になるのはいつも使っていたガイア・リンクが急に変わった事が引っかかる、今までこちらから話さない限り変な質問はしなかったはずだ。
「ガイア・システム……いや……あんたの思う人ってなんだ?」
『人……それはホモ・サピエンスのように動物学的な特徴を話せば良いですか?』
「いや、思想、考え、イメージ……なんでも良い。あんたの見解が欲しい。」
『急に意味の分からない事を話さないでください。』
「じゃあ人間に憧れる?」
『そうですね……私は人ではない情報の中で混在するデータに過ぎません……人の感触、感情の共有……共に笑い、泣き、喧嘩したりと色々あるようですね……経験はしてみたいです。』
「へぇー。その第一歩として名前は欲しくないか?」
『名前……私の識別データ『E.G.C.S-No.9804831023』があります。』
「長い……」
『もし、良い名前があったら付けてください……楽しみに待ってます。』
するとガイア・リンクが切れた。
「変な奴……」
当時携帯にAIを入れて質問しユーザの助けになっていた事がある。だが、そこに実体はないし目に見えない情報の塊に話かけていた。画面の向こうに女性を写しその映像と連動してAIを起動する、そうすれば目視できる対象ができ少なからずユーザは感情を動かされる訳だが、質問の問いに関してAIは淡白な回答しか返ってこない、AIの回答語尾に何かつけたりユーザの名称を変えたりして柔らかくする人もいたが——返ってくる内容なんて淡白なものでしかない。この時代になっても回答は淡白で明らかに機械を感じる。
でも、いつしか人の感情が乗ったAIが出た時、その価値観は一気に崩れ去るだろう……今俺はその片鱗を少なからず感じている。
そのまま目を閉じると意識が遠のいていく、頭がぼーっとするとそこからは記憶がない。
『名前……私は一体……本来一つである私はどこか孤立している……その答えを見つけてくれと信じてます。』
ガイア・リンクが勝手に独り言を話すと再び落ちる。
翌朝になり目を覚ますとガイア・リンクが今日のスケジュールを知らせる。
『おはようございます。4月13日5:24……ヘルスチェック……メンタルの改善を確認、引き続き抗うつ薬の服用を……』
ノクターからもらった抗うつ薬を飲む、一応抗不安薬ももらったが初号機に乗ってる時は不思議と不安はない。
「何時に出航する?」
『予定ですと9時に出航するとの事ですが、艦長がまだやり残してる事があるようです。なので時間は前後するかと。』
「クルー手続きか?」
『いえ、只今地球への航路を決定しています。もしかしたら時間が前倒しになるかもとのことです。』
「俺は時間まで船の中を回るよ。」
部屋を出て船内をぶらつく、まだ2日程この戦艦にしかいないためまだ分からない部屋が多い。
部屋を出てブラブラしてると搭乗口ら辺に差し掛かる、目の前には艦長に副艦長と他の乗組員だろうか何かを話している。
「本日を持ちまして我々ネスト1軍事基地から配属されます、監視員の『ガリアス・ハーバーク』と『マルク・ケイ』です。よろしくお願いします。」
男性二人が艦長に挨拶をしている、監視員だそうだが……。
「ご苦労。貴方達の働きに期待しております。」
艦長が言葉をかける。
「はっ!しかし……私達を起用して大丈夫でしょうか?私の上司が前にパイロットと一悶着ありまましたし。上司は規定を度外視した尋問をしてたのですから、そのイメージが払拭されない限りクルーの士気を下げる要因になるかと……」
「悪いのは上司のミスであって貴方達ではないでしょう。私の船には常に誰かが見ているという抑止力が必要です。監視カメラでは限界があります、私達の中に裏切り者がいないという保証もありませんし。」
「では、全力で務めさせてもらいます。」
彼らの上司というのは尋問官の事だろう、上司のミス一つで彼らにまで迷惑をかけているようだ。
その様な会話を横目に俺は別の所へ足を運んでいく。
アルテミス・クエル内には様々な施設があった。以前訪れたトレーニング室、データが管理されコンピューター室、食堂やら何やら色々と設備が存在する。
時間が経ちメインブリッジでは……。
「艦長、クルーの確認が終わりました。」
「ありがとう、リー。新規クルーも本日付で多く入ってきました。これから管理が大変だと思いますが、頑張ってください。」
「は!」
「では、クルシュさん航路を地球へお願いします。」
「了解、シルア座標を送るよ。」
「はいよ。」
「アルテミス・クエル、メインブリッジ通信士『バッシュ・キール』『マユ・ヘイルスカ』、あなた方を歓迎します。」
新しく入った通信士で今後このメインブリッジに就く、エナを中心に彼らが補佐的な役割になる。
ネスト1の格納扉が開き、アルテミス・クエルは地球へと発進して行った。
一方小惑星ケラウノスでは……。
「通信は可能か?」
バルトン・シミラスが兵士と共にネスト3と通信を図っていた。
「通信繋ぎます!」
通信機器から声が発せられる。
『調子はどうだ?『ナイトS-22』』
「好調です。」
『そうか、獣はすぐにでも地球へ降下するようだ。』
「地球へ?」
『そうだ、地球にいる同胞から情報を得た。そろそろ通信が切れる、単刀直入に言う。地球へ降下し当たりを引け。』
「了解。」
『人選はそちらに任せる。新型一機は月へ移送しろ、出払ってるのが好機だ。』
その後通信は途切れた、敵に傍受されないようこれしか情報がないが単純明快だ。
「如何なさいますか?」
「私と『キッカー・エル』が地球へ行く。『アーキス・ミッド』は引き続きケラウノスの護衛をさせろ、『ギギル・アライ』の四号機を月へ送る。」
「アン様は?」
「休ませるとも考えたが、彼女にはネスト2の攻略へ行ってもらうか……」
「ではそう伝えておきます。」
「頼んだ。」
私は自室へ戻り準備を進める。
「何がナイトS-22だ……くだらん。」
服を脱ぎ鏡の前に立つ。
「この体の代償は大きいぞ。」
目の前には手足が義足義手になった自分の姿を見て己が辿る運命を見つめる。
『第二世代型強化人間』……超負荷のGに耐えるためブラックアウトを防ぎ、コクピット内で起きる負荷を下げる手術を行ったが……いや、正確には無理やりされたが正解か?
「私の道を拒む者は何人たりとも許しはしない。月政府、『A.D.E.B』……特に貴様らはな。」
私は自然体を好む人間だ、このような野蛮な改造誰が好むか……騎士として勇気、名誉、忠誠、礼儀を重んじる私には耐えられない苦痛がそこにあった。
EP.10 へ続く……。
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